召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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ワンザブロー帝国編

第22話 ヒャッハーとは世紀末な

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「ヘルプ機能。ワンザブロー帝国の帝都はどっち」

『方向と距離を表示します』

「わーっ! なんだか空に文字が浮かびました!」

 ヘルプ機能は、俺とルミイだけが認識できる。
 彼女の目にも空に浮かんだ方角やら、あと何キロやらという文字が見えるんだろう。

 というか、近いな。

「もしかして、ワンザブロー帝国って狭い?」

『七大帝国はそれぞれ領土の大きさに差があります。ワンザブロー帝国は魔力の星エーテリアの真下を選択しましたが、そこが最も資源がなく、そして荒野に覆われた土地でした。現在、エーテリアの魔力量が急速に低下しており、ワンザブロー帝国唯一の利点も失われようとしています』

「アチャー」

 欲をかいたら、とんでもないしっぺ返しが来た感じだろう。
 領土も狭いらしく、十キロ四方しか無いそうだ。

 簡単に他国が帝都まで攻めて行けるじゃないか。
 ああ、でも攻めて行かない理由があるのかもしれないな。

 ルミイの運転で、魔導カーを走らせる最中。
 俺はサイドカーに乗っているだけなので、こうしてナビゲートや下調べをやっておくのである。

「ヘルプ機能。ワンザブロー帝国に対する他帝国からの評価」

『最大の魔力を持ち、ヘカトンケイルの大軍をいつでも生産できる強大な軍事国家です』

「ええー?」

 俺が知る限りのワンザブロー帝国とは、かなりかけ離れたイメージだなあ。
 もしかしてこの帝国、めちゃくちゃ落ちぶれてるんじゃないのか。

「マナビさんせっせと調べ物してるんですか! 不真面目かと思ったら真面目ですよねえ。たくさん頑張ってるんですから、ここくらいのんびりしててもいいのに」

「俺、手持ち無沙汰だとダメなんだよ。なんかこう、常にスマホみたいなのをいじっていたい」

「真面目ー」

 真面目ではない。
 なんか現代人の病気みたいなものだ。

 そのついでに、ヘルプ機能を使って世界の姿を調べているわけだ。
 何せヘルプは、アカシックレコードと繋がっているからな。
 適切なワードを放り込むと、その知識が出てくる。

 問題はあまり知識を得すぎても、俺が覚えていられないことだ。
 メモ帳とかないしなあ。

「ヘルプ……」

「マナビさん!」

「アッ、ハイ」

 急に強めの語調で呼ばれたぞ。

「いっつもヘルプ機能とばっかり喋るのは面白くないですよ! もっとわたしにたくさん話しかけて下さい!!」

「おっ! そうだな! 話しかけてよろしい?」

「どうぞどうぞ」

 ルミイがふふーんという顔をした。
 なんという可愛さか。

「あのさ。こうやってたくさん知識を得るんだけど、全部はとても覚えてられないんだよ。要点を覚えてくれるものって無いかな」

「わたしはよく、三歩歩いたら記憶を失うってママから言われてましたけど」

「鳥じゃん」

「鳥じゃないですー!!」

「うわー、運転しながら俺をポカポカするのはやめてくれー」

 グラグラ揺れる魔導カー。
 危ない危ない。

 例え荒野と言えど、あちこちに何かの残骸は転がってたりするのだ。
 コンクリートみたいなのとか、エンジンの欠片とか……。
 バランスを崩して転倒なんて洒落にならない。

 ところで……ここ、もともとは道だったのでは?
 周囲を見回してみる。

 今まで気にも留めていなかったが、もしかして今走っている荒野、魔導カーが走り回れる道だったのではないだろうか。
 コンクリみたいな道路は砕け散っているし、あちこちに風化した柱みたいなものが点在している。

 ハイウェイだったか。
 それが魔力の減少で構造を維持できず、落下して砕け散ったのだ。

 うーん、文明の衰退を感じる。
 無常だなあ。
 俺もすっかり、ルミイに話しかけたのを忘れ、別のことで頭がいっぱいになった。

 そこへ……。

「ヒャッハー!」

 荒野に響き渡る無法な掛け声!

「あっ! マナビさん、何か来ます! あっちも魔導カーです!」

「おう。凄くヒャッハーな叫び声が聞こえた。一台?」

「はい、今のところ一台ですね」

 振り返ると、背後から俺たちが乗っているみたいな魔導カーが猛追して来ていた。
 あちこちにトゲがつき、前方には有刺鉄線みたいなのをぐるぐる巻にしたバリケードがくくりつけられている。

 そして乗り込んでいるのは、棘付きの巨大な魔法の杖を振り回すモヒカンの巨漢が二人だ。

「止まれェーっ!! 俺たちはァーっ! ワンザブロー帝国独立愚連隊の者だァー!!」

「あひー! 変なの来ましたー!!」

 ルミイが悲鳴を上げる。
 主に、相手の奇妙さに対してびっくりしてしまったようだ。

 そうか、衰退する世界だとこうやって、暴力で私腹を肥やそうという者も増えるのだなあ。
 モヒカンが俺たちに並走してきた。

「ああん? 上玉が乗ってるなァ! だが! エルフかあ! エルフなんてのは、魔法文明の発展に追いつけなかった原始的な種族だぜェ!! 俺たちがエッチな用途で飼ってやるぅ! ありがたく思えェ!」

「よし、チュートリアルモード終了」

 俺、キレた!
 俺がやる気になるということは、既にチュートリアルは終わってるんだぜ。

「マナビさん、いつの間に!?」

「今さっき一人で終わらせたぞ! ほりゃあ! 超エイムで放たれる爆裂火球! ゲイルハンマーで方向を正確にコントロール! 風向きよーし! バカどもの機動よーし! 放て! 命中!」

「ウグワーッ!?」

 爆裂火球はピンポイントでトゲトゲ魔導カーのエンジンを直撃し、大爆発を引き起こした。
 炎の中に巻き込まれ、爆発四散するモヒカンたち。

 さらばである。

「うひゃー、汚い花火ですー」

 バーバリアンとエルフにもその語彙があるのな。
 ルミイがちょっと嬉しそうだ。

「あと一発しか爆裂火球残ってないじゃないですか。もしかしてわたしのために使ってくれたんですか?」

「そうだぞ。俺の溢れ出る下心がルミイを守るためにこの力を発揮させたんだ」

「うわー、なんで微妙に嬉しくない言い方するんですかあー」

「うおー、魔導カーの上でポカポカするのは危ない、危ない」
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