召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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シクスゼクス帝国編

第81話 遠い大陸の同胞と邪神解放作戦

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『俺様の性癖はノーマルなんだ。バッファローからここまで異世界召喚されて、海だヤッホウ! 超絶パワーを手に入れてヒーローみたいだぜ! とやってたら実はスーパーヴィランの力でな。しかも理想の女子を作ろうと手にした力を使ったら、カエル人間みたいなのが生まれた』

「アメリカ人だったのか」

『そうだぞ。お前は中国……いやその性癖的な深み、日本人だな? 俺様が召喚されたのは1985年だが、お前が召喚されたのいつ頃?』

「2022年」

『未来人じゃん。そっちはどうなってるのよ』

「アメコミがすげえ予算掛けられて映画になって日本上陸してる。あと日本のマンガとアニメがそっち上陸してめっちゃ売れてる」

『マジで。想像もできないフューチャーワールドじゃん』

「あ、あのう」

 俺とオクタゴンが地球の思い出話をしていたら、意識を取り戻したディゴ老人が申し訳無さそうに声を掛けてきた。

「そろそろ動いていただけると……。いや、その、オクタゴン様が解放されることで、我らアビサル・ワンズの希望が戻ってまいりますので」

『そうだった。な? こいつら言うこと聞いて健気で可愛いだろ。だが、見た目が好みじゃないんだ』

「そんなー」

 長老がしょんぼりした。

『可愛い女子が生まれてくるかと思って頑張ったが、ダメだった。それ以降、俺はここに憧れの西海岸のちょっとくたびれた街並みを再現してだな。ハンバーガーとタコスとピザとコーラとポテトを喰う日々を数百年やってる。ちなみに俺の西海岸解像度が低いから、ダイナーは全部バーガーショップだぞ』

「気持ちは分かった。だから嫁さんが欲しいって言ってたのか……。よし、あんたの望みに俺は大いに共感する。俺はこっちでリア充になれたクチだからな。異世界で出会えた同胞にもこの喜びを分けてやりたい。なんかフリーの女の不死者とか邪神見つけて紹介しとくわ」

『リアリィ!? 心の友よ! ああ畜生。この鎖と結界と、世界と隔てる無限の空間歪曲さえなければすぐにシェイクハンド……いや、ハグするものを』

「その三つが異世界召喚者か。どれか一つ倒せばいけそう?」

『いけるだろうな。一番厄介なのは、この空間歪曲だ。マジで無限だから、俺がゴロゴロ転がってもそっちに到達できない。声しか伝わらない』

「ほうほう。じゃあそいつを倒そう」

 そう言う事になった。
 俺はオクタゴンに別れを告げ、転がってるカオルンをお姫様抱っこして戻った。

 女子にお姫様抱っこをする!
 男の夢の一つである。

 バランスが取りづらくて難しいな。
 途中でカオルンを落っことした。

「むぎゃー!」

 お尻を打ったカオルンが悲鳴をあげて目覚める。

「い、痛いのだー!? 何があったのだー!?」

「カオルンはオクタゴンの放つサムシングにやられてぶっ倒れたのだ。俺がオクタゴンと交渉して仲良くなっておいた」

「な、なんだってーなのだー!! カ、カ、カオルンはオクタゴンに負けたのだ……!? ショックなのだあ」

「勝負になってすらいないな」

「ガーン!! なのだー!! く、くやしいのだー!!」

 カオルンがダバーっと目と同じ幅の涙を流した。
 おいおい泣いているので、俺はカオルンをサッと抱きかかえた。
 無抵抗な今こそ、合法的にハグして運んでいくチャンス!!

「おお、乙女の涙にも揺らがぬとは、さすが鋼の精神ですマナビ様」

 ディゴ老人が俺を尊敬した風な物言いをする。

「なんでマナビ様なの。それから、俺はいかにして合法的に女体に触れるかだけを始終考えている。あとは敵を煽って倒すことだけ考えている」

「シンプル思考! マナビ様は、オクタゴン様と友誼を結ばれた存在です。つまり、並び立つ神の一柱だと我々アビサル・ワンズは理解しました。御覧ください」

 俺が進む先で、アビサル・ワンズたちがひれ伏し、道を作っている。
 すっかり崇拝されてしまった。

「あ、戻ってきましたよ! お~いマナビさーん! 生きてますかー! 生きてますねー! カオルンが抱っこされてる!? 死んじゃいました!?」

「生きてる生きてる! カオルンはもうちょっと肉をつけた方がよろしい」

 俺はカオルンを地面に下ろした。
 ルミイとアカネルとも合流だ。

「カオルンは邪神に全く刃が立たなくてショックで泣いているのだ」

「初めての挫折ですね」

「わたしなんか日々挫折ですけど全然気にしてませんよー」

 それはルミイのハートが強いのと性質がお気楽過ぎるのだ。

「マスター、向こうでもヘルプ機能を使っておられましたが、当機能がいないことで使えないと少しでも思いませんでしたか」

「あれは俺に付随する能力なので使えると思って使ったぞ。多分、アカネルのその体のほうが付属品みたいな感じだろ」

「お察しの通りです。深い洞察力と、最強の異世界召喚者とまみえて平然と戻って来る胆力、やはり世界はマスターを選んでいます」

「ゲームとかマンガで昔よくあったそういうパターンね。失ってた全能感が刺激されちゃうぜ」

 そして俺たち、今度は別のバーガーショップに移動して作戦会議をする。
 ディゴ老人と、他のアビサルワンズも一緒だ。

 このアビサルワンズは見た目で区別ができないが、妙齢の女性である。
 保護色になれるそうで、オクタゴンを封印する異世界召喚者たちを偵察して回っているらしい。

「ニグラです。異世界召喚者たちの説明をします」

「ほうほう」

 俺はコーラを飲みながら、彼女のプレゼンを聞く。
 すぐ横で、ルミイが揚げた生地のタコスを「野菜がたくさん乗っててヘルシーですねー!」とバリバリ食い、カオルンはその三割くらいの大きさのタコスをやけ食いしている。
 アカネルはコーラとサラダだ。ヘルシーなのか?

「結界使いは、軍隊を率いてキャンプを張っています。そこで結界を維持しています。多数の魔族との戦闘になるでしょう」

「ふむふむ」

「鎖使いは、自らの鎖を用いてイースマス南部に城塞を築いています。攻略が困難です」

「ほうほう」

「距離使いは、不敵に街中を歩きまわっています。イースマスの店舗を利用して食事などしているようです。攻撃を仕掛けた者が多いのですが、皆、無限の距離の中に放り込まれて衰弱死させられました。手出しができません」

「自分を最強だと自負してる感じのヤツだな。守りも万端っぽい」

 俺は頷き、タコスを食った。
 おお、ガッツリ系だ。
 野菜とひき肉と特製ソースが、揚げられた厚い生地によく合う。

「どうされるのですか、マナビ様」

 ニグラがカエルみたいな目をパチパチ瞬膜で開け閉じした。

「距離使いが一番楽そうだ。そいつにする。飯を食ったら速攻で襲って倒そう。向こうが慢心してれば一瞬で倒せるし、用心してたらちょっと手間がかかって倒せる。どちらにせよ、晩飯には間に合う」

 俺は立ち上がった。
 邪神解放作戦の始まりである。
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