召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

文字の大きさ
109 / 196
セブンセンス法国編

第109話 神力・壁・出るとこ出てる

しおりを挟む
「これはつまり、ナルカさんはマスターとの相性がとてもいいということでしょうね。当機能を含め、マスターとともにここを訪れられたのは三人しかいません。つまりナルカさんが四人目で、当機能はこれ以上の増殖を望みませんので最後の一人です」

「い……一体何を言ってるんだい!? というか、風景がまるで子供の落書きみたいな線になっちまって、あたいの頭がおかしくなったのかい……!?」

「つまりだな、ナルカ。一緒に行動すれば分かる。ついてこい」

 俺は歩き出した。
 ナルカも、おっかなびっくりついてくる。

 なりは大きいのだが、実はルミイと近い年齢らしいナルカ。
 ハイティーンくらいの年齢である。
 表向きは強がっているが、内心は不安でいっぱいだろう。

 そこにチュートリアル空間である!
 まあ混乱するよな。

「ここは俺の能力である、チュートリアルができる空間だ。これで事前に起こることを予習して、対策を立てられる」

「能力……!? あんた、異世界召喚者なんだね……! セブンセンスでは、あんまり異世界召喚者を使わないんだよ。神を信じないやつばかり召喚されてね……」

 現代の地球から呼ばれれば、そういうのは多かろうな。
 俺もちょっと遅れて初詣行ったり、墓参りしたり、クリスマスにフライドチキンを貪り喰らう程度の信心だ。

「まあ、異世界召喚者というのはそんなに怖い存在でもないので、気にしなくていい」

「世界を揺るがすような力を持った人ばかりだと思いますが、当機能は何も言いません」

 セブンセンス法国の根幹を揺るがしたのは、ただ一人のチャーム能力者だもんな。
 確かにヤバいやつしかいないわ。

「ま、どうでもいい話だ。出てきたら倒せばいいのだ。セブンセンスには少ないそうだし、気にすることもないだろ。今は塀を乗り越えて侵入するのが優先だな」

 塀をコンコン叩く。
 おっ、ボワンっとなんか反発してきた。

「これが厄介なのさ。それぞれの担当地区で変わるけど、神力が流し込まれてるんだよ。不信心者は触れると弾かれて、異なる神を信じているとご覧の通り」

 ナルカが塀に触ろうとしたら、バチバチと静電気の凄いのが起こった。

「お陰で、ルサルカ教団は塀の中に入ることもできないのさ。アンデッドが無駄に潰されちまう」

「アンデッドは有限な資源だもんな」

 俺が知ってる創作物では、アンデッドは無限に生み出される雑兵みたいなイメージがあるんだが。
 所変われば常識も変わるものである。

「じゃあこれは、直接触れずにクリアしていくことにしよう。この塀そのものが侵入を阻むバリアとしての機能があるみたいだが……塀の上は?」

 石を投げた。
 それは、見えない光にバチッと弾かれてこっちに戻ってくる。

「街全体をバリアが覆ってる」

『俺様が砕こうか?』

 オクタゴンが顔を出した。
 ナルカがビクッとする。

「いや、オクタゴンがやると、もうそれは宗教戦争なのよ。規模がデカくなりすぎる。ここは穏便にやろう。ヘルプ機能。神の魔力の流れを見せてくれ」

「了解しました。ヘルプ機能が画像を展開します」

 アカネルがアカシックレコードに、俺の要請を仲介してくれる。
 目の前に、映像が出た。

「うわああ、空中に動く絵が!!」

 ナルカがめちゃくちゃ驚く。
 一つ一つのことに驚いてくれるなあ。リアクションが初々しくてとても新鮮だ。

「マスター。魔力の流れは左から右へ。そして上へ向かって頂点で下に戻ってきます。範囲はこう……。街の規模を考えると、おおよそ17%の塀と空をこの魔力が覆っている事になります」

「ありがとう。じゃ、つまり向こうの神様は六柱いるってことね。それぞれ分け合って守ってる。神の魔力同士がぶつかったら何かまずいことが起きるんだろう」

 俺の推測を聞いて、ナルカが頷いた。

「そうだよ。例え親しい神々でも、神力は別物なんだ。ましてや、他の魔法帝国の連中を締め出すための攻撃的な神力だよ。ぶつかり合ったら、そこで爆発が起こっちまう」

「おお、それは素晴らしい情報だな! これは攻略できただろ」

「もう!?」

 驚くナルカ。
 俺は彼女とアカネルを率いて、魔力の流れが切り替わるところへ向かう。
 つまり、他の神が担当している塀の位置だ。

 一見すると同じ塀。
 だが、よく見ると……。
 塀と塀の間に僅かに色が違うつなぎ目がある。

「ここが隙間だ。ここから乗り越えていける」

 俺は塀に足をかけると、すいすいっと登った。
 うーん、度重なるチュートリアルで身体能力が磨き上げられていっている。
 アスリートみたいに体が動くぞ。

「マ、マスター! 当機能には無理です!!」

「あ、ごめんごめん。アカネルは一般人並なんだった。小さくなってくれ」

 俺は戻って、小型化したアカネルを胸元に入れた。
 デフォルメちびアカネルが、顔だけちょこんと出す形になる。

「うわあーっ、ひ、人が小さくなったよ! 魔法かい!?」

「魔法のような、そうでないような。詳しく説明するほどナルカは混乱するだろう」

 俺は説明をそれだけに留めて、再び塀の隙間へ。
 ここ、体を横にすれば入れる程度の隙間が空いているな。
 ルミイだったら危なかった。

 あれ?
 ナルカも胸と尻がでかいから危ないぞ。

「ちょっと待ってろナルカ。神の魔力の流れをこうやって歪めてだな」

 塀の構造材を壊して、左右の塀に積み上げるのだ。
 つなぎになっていた塀は、どういうことか神の魔力の断絶効果があるようなのだった。

 積み上げてみたら、魔力がそこにそって流れを変える。
 ナルカも通れるくらいの隙間が空いた。

「これならいけるか? ナルカ、通ってみてくれ」

「あ、ああ! ……いけた! 何もないよ!? あたい、念のためにルサルカ様の神力の鎧を纏ったっていうのに!」

「つまりここが、神の魔力が途切れる隙間ってことだ。しかも物理的に広げられる。じゃあ現実に戻ろうか」

 チュートリアルモードが終わる。
 すると、また細やかな解像度で描かれる現実の世界だ。

 ナルカはきょとんとしていた。
 混乱するだろうが、いちいち考えていたら生き残れないぞ。

「ここはそういうものだと理解して動こうじゃない。落ち着いたら説明するから」

「あ、ああ! 分かったよ!」

「マスター、物わかりがいい人には優しいですよね」

「会話が通じるからな」

 かくして、俺たちはチュートリアル通りに神の魔力の隙間をくぐり、悠々と街へ侵入を果たしたのである。
 もちろん、断絶効果のある塀はもとに戻しておいたよ。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

竹取物語異聞〜30歳まで独身でいたら赤ん坊になって竹の中にいたけど、絶対に帰りません〜

二階堂吉乃
ファンタジー
21XX年。出生率が0.5を切った日本では、異次元の少子化対策として「独身禁止法」が施行された。月出輝夜(30)は、違反者の再教育VRビデオを視聴中、意識を失う。目覚めると竹の中で赤子になっていた。見つけたのは赤髪赤目の鬼で、その妻は金髪碧眼のエルフだった。少し変わった夫婦に愛情深く育てられ、輝夜は健やかに成長する。15歳の時にケガレと呼ばれる化け物に襲われたところを、ライオン頭の男に救われたが、彼は“呪われた王子”と呼ばれていた。獅子頭のアスラン王子に惹かれていく輝夜。しかし平穏な日々は続かず、輝夜を迎えに魔王が来る。『竹取物語』+『美女と野獣』のSFファンタジー昔話です。全27話。

剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!

月芝
ファンタジー
国の端っこのきわきわにある辺境の里にて。 不自由なりにも快適にすみっこ暮らしをしていたチヨコ。 いずれは都会に出て……なんてことはまるで考えておらず、 実家の畑と趣味の園芸の二刀流で、第一次産業の星を目指す所存。 父母妹、クセの強い里の仲間たち、その他いろいろ。 ちょっぴり変わった環境に囲まれて、すくすく育ち迎えた十一歳。 森で行き倒れの老人を助けたら、なぜだか剣の母に任命されちゃった!! って、剣の母って何? 世に邪悪があふれ災いがはびこるとき、地上へと神がつかわす天剣(アマノツルギ)。 それを産み出す母体に選ばれてしまった少女。 役に立ちそうで微妙なチカラを授かるも、使命を果たさないと恐ろしい呪いが……。 うかうかしていたら、あっという間に灰色の青春が過ぎて、 孤高の人生の果てに、寂しい老後が待っている。 なんてこったい! チヨコの明日はどっちだ!

【完結】腹ペコ貴族のスキルは「種」でした

シマセイ
ファンタジー
スキルが全てを決める世界。 下級貴族の少年アレンが授かったのは、植物の種しか生み出せない、役立たずの『種』スキルだった。 『種クズ』と周りから嘲笑されても、超がつくほど呑気で食いしん坊なアレンはどこ吹く風。 今日もスキルで出した木の実をおやつに、マイペースな学院生活を送る。 これは、誰もがクズスキルと笑うその力に、世界の常識を覆すほどの秘密が隠されているとは露ほども知らない、一人の少年が繰り広げる面白おかしい学院ファンタジー!

ざまぁされた馬鹿勇者様に転生してしまいましたが、国外追放後、ある事情を抱える女性たちの救世主となっていました。

越路遼介
ファンタジー
65歳で消防士を定年退職した高野健司、彼は『ざまぁ』系のネット小説を好み、特に『不細工で太っている補助魔法士の華麗な成り上がり』と云う作品を愛読していた。主人公アランの痛快な逆転劇、哀れ『ざまぁ』された元勇者のグレンは絶望のあまり…。そして、85歳で天寿を全うした健司は…死後知らない世界へと。やがて自身が、あのグレンとなっていることに気付いた。国外追放を受けている彼は名を変えて、違う大陸を目指して旅立ち、最初に寄った国の冒険者ギルドにて女性職員から「貴方に、ある事情を抱えている女性たちの救世主になってもらいたいのです」という依頼を受けるのであった。そして、そのある事情こそ、消防士である高野健司が唯一現場で泣いた事案そのものだったのである。

長女は家族を養いたい! ~凍死から始まるお仕事冒険記~

灰色サレナ
ファンタジー
とある片田舎で貧困の末に殺された3きょうだい。 その3人が目覚めた先は日本語が通じてしまうのに魔物はいるわ魔法はあるわのファンタジー世界……そこで出会った首が取れるおねーさん事、アンドロイドのエキドナ・アルカーノと共に大陸で一番大きい鍛冶国家ウェイランドへ向かう。 魔物が生息する世界で生き抜こうと弥生は真司と文香を護るためギルドへと就職、エキドナもまた家族を探すという目的のために弥生と生活を共にしていた。 首尾よく仕事と家、仲間を得た弥生は別世界での生活に慣れていく、そんな中ウェイランド王城での見学イベントで不思議な男性に狙われてしまう。 訳も分からぬまま再び死ぬかと思われた時、新たな来訪者『神楽洞爺』に命を救われた。 そしてひょんなことからこの世界に実の両親が生存していることを知り、弥生は妹と弟を守りつつ、生活向上に全力で遊んでみたり、合流するために路銀稼ぎや体力づくり、なし崩し的に侵略者の撃退に奮闘する。 座敷童や女郎蜘蛛、古代の優しき竜。 全ての家族と仲間が集まる時、物語の始まりである弥生が選んだ道がこの世界の始まりでもあった。 ほのぼののんびり、時たまハードな弥生の家族探しの物語

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

処理中です...