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フィフスエレ帝国跡編
第137話 遭遇・黒竜・コンボな提案
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空から真っ黒い弾丸みたいなのが降ってきた。
一つ一つが、人間を一人がすっぽり収まるほどのサイズである。
俺は凄くいやな予感がしたので、
「あの黒いのに当たるな! 逃げろ逃げろ!」
と叫んだ。
人間がわーっと散る。
残ったのはアンデッドだ。
黒い弾丸はアンデッドと周囲の木々に降り注いだ。
おお、一瞬で木々が萎れ、ぼろぼろと崩れていく。
アンデッドは無事だ。
なんだこりゃあ。
「ヘルプ機能頼む、アカネル」
「はい。これは……黒竜ルインマスターの攻撃ですね」
「黒竜! ルインマスター! なんだそのかっこいいのは。いや、フィフスエレが呼び出したっていうドラゴンがこいつなんだろうな」
「はい、その通りです。ルインマスターは荒廃を司るドラゴンです。先程の荒廃のブレスにより、生命あるものを朽ちさせ滅ぼします」
「肉体的にも強かったり?」
「はい、魔獣の類に入るドラゴンは、空を飛んでブレスを吐き、剛腕で城壁を打ち崩す程度ですが、これは次元が違います。星渡りの竜です。あらゆるドラゴンの頂点に立つ災厄そのものです」
「アチャー」
フィフスエレは魔法が使えなくなり、そこにバーバリアンが攻め込んできたものだから、何らかの方法でこいつを召喚したんだろう。
で、言う事を聞かせようとはしたんだろうが、相手が管理できる次元の存在ではなかったと。
これは絶対にルインマスターに滅ぼされている。
太陽が陰った。
上空に巨大な黒い影がいる。
翼が四枚、長い首と尻尾。
真っ黒な影。
『見つけた。見つけたぞお』
実に嬉しそうな声がした。
俺たちの脳内に直接だ。
「来たか!」
「もう爪が再生している。化け物め」
ルミイ兄の双子が戦慄している。
「むっ! 追いかけてきたか! 厄介だな」
バルクはハートが強いらしく、腕組みして豪然とルインマスターを見上げるのだ。
黒竜は俺たちを睥睨し、翼をゆっくりと閉じていった。
巨体が大地に降り立つ。
それと同時に、空に暗雲が発生し、太陽を覆い隠した。
『惑星に張り付く極小生物如きが、我の爪を剥がすとは。実に腹立たしい。だが、極小生物のくせにやるではないか。実に面白い』
でかさ的には、全長50mくらい。
翼は畳まれているが、広げると翼長100mくらいあるだろう。
でかい。ひたすらでかい。
「よし、いきなりチュートリアルだ。必殺技を最初に使うと負けフラグだが、これはあくまでルインマスターの手の内を調べるためにやるぞ」
「マスターが言い訳を……! それほどの相手なのですね、これは」
「こいつ、隠しボスだろ。普通にやってたら絶対戦わない系の相手だぞ」
ということでチュートリアルにやって来た。
目標は、可能ならルインマスターの撃破。
だが、チュートリアルのチートモードが導き出した結果は無情なものである。
攻略は可能。
ただし、俺以外は全滅する。
何パターンやってもこれだった。
まず、ルインマスターのブレスは散弾状、放射状、レーザー状と撃ち分けることが可能。
これは軌道を見切った。
もう俺には通用しない。
だがチュートリアルしてない奴らは確実に当たる。
当たれば即死する。
バルクと双子が、よくこいつを退けられたもんだ。
次に物理攻撃。
これ、ブレス以上のトンデモ。
攻撃を仕掛けた瞬間、殴り掛かるという過程をふっとばして、殴り終えたという結果を導き出してくる攻撃だ。
手加減してるんだろうが、一撃で大地を深くえぐり取り、周囲の木々が根こそぎぶっ飛ばされる。
これがほぼノーモーションで出る。
格ゲー的には1フレームで出る。
コンボの達人を連れてこないと対抗は難しいぞ。
……ここで俺の脳内に電光が走る──!!
コンボの達人連れてきてこいつにぶつけよう!!
以上、チュートリアル終わり!
「結論! 俺しか勝てないし俺が勝ってもみんな全滅!! 分が悪いなんてものじゃないので退散だ!」
俺が堂々と宣言したので、周囲は驚いたようだ。
ルインマスターも興味深げに、俺を見る。
『我に勝てると? その自信、確かに大地に根を張った強いものだ。なるほど、納得しよう。で、我とやるかね? やらぬと言ってもここで捻り潰すが』
ルインマスターが翼を広げた。
あの翼からは、レーザー状のブレスが四方八方に飛ぶんだよな。
これで、フィフスエレの帝都は滅ぼされた。
朽ち果て、人間たちが絶望に泣き叫ぶ様を、ルインマスターは実に楽しそうに眺めていた……というのをヘルプを通じて見たぞ。
こいつにとって、この世界に召喚されて暴れるのはただの娯楽に過ぎないのだ。
「ルインマスター、俺はあんたといい勝負ができる男を知っている──」
なので、ここは娯楽対決だ。
こいつ、娯楽に飢えてる。
ならば娯楽を提示することで交渉できる。
『ほう、我といい勝負を? お前ではないのか』
「俺だとこう、華がない感じで終わる。俺の戦い方は攻略だからな。それに俺があんたに勝っても、周りが死ぬ。俺が戦うモチベーションが無い」
『ほほう、ほう、それが定命の者の考えであろうなあ。我は単体で完成しているが故、退屈以外に敵はいない。退屈は辛いぞ……』
しみじみと呟くルインマスター。
「その退屈を晴らす奴を連れてきてやろう。あんたの攻撃全部を受けきり、真正面から攻め込んでくる奴だ。戦ったら超面白いぞ」
『ほほう!』
ルインマスターの語気が軽くなる。
これは、俺の提案に興味を持ったな。
『連れてくるがいい。見逃してやろう。ただし、我に嘘をつくな。逃げようとしたら、世界のどこにいても見つけ出して滅ぼしに行くぞ』
「永遠の命があるっぽいのに疑り深いやつだな。いいか。ヘルプ機能でそいつを表示するから見てろ」
俺のヘルプ機能、他の人間にも見せられるようにバージョンアップしたのだ。
この間、チートモードが開放されて以来だな。
目の前に展開された映像に、ルインマスターが目を丸くした。
『お前、それはアカシックレコードではないか。我ら星渡りはある程度これを無視できるとは言え、宇宙の根幹に接触できるなら、お前が我に勝てると豪語するのも納得はできる。どうだ、ここで我とやらんか』
「やらん。ほい、こいつ。コンボの達人」
ヘルプの画像添付機能を使い、コンボの達人を表示した。
周囲のバーバリアンやルサルカ信者たちは、恐怖に震えながら俺たちのやり取りを見ていたのだが、コンボの達人の姿を見てきょとんとした。
強そうに見えないもんな……!
だが、ルインマスターはすぐに、コンボの達人の強さを感じ取ったらしい。
『ほう! 最上級の概念使いか! 面白い! 早く連れてくるがいい! 我はこの森だけを滅ぼすに留め、お前の再来を待つ……』
黒竜はそれを告げた後、空へと飛び上がった。
暗雲とともに、その姿は消えてしまう。
「あひー」
いなくなったあと、ルミイが悲鳴をあげた。
遅いよ!
「あれはカオルンも相当苦しいのだ……! パワーアップしたのに、上には上がいるのだー! もっと無敵な期間を味わわせてほしかったのだ!」
カオルン悔しそう。
「死の線が見えなかったよ、あれ。無理だねえ……。それに、技巧神イサルデよりも遥かに格上だよ、あいつ」
ナルカの分析は正確だ。
「だろう。あれ、世界のバグキャラだよ。あんなの呼び出したら滅ぼされるに決まってるじゃん。フィフスエレは終わっていたのだ」
こうして、やらねばならぬことが増えたりするのであった。
一つ一つが、人間を一人がすっぽり収まるほどのサイズである。
俺は凄くいやな予感がしたので、
「あの黒いのに当たるな! 逃げろ逃げろ!」
と叫んだ。
人間がわーっと散る。
残ったのはアンデッドだ。
黒い弾丸はアンデッドと周囲の木々に降り注いだ。
おお、一瞬で木々が萎れ、ぼろぼろと崩れていく。
アンデッドは無事だ。
なんだこりゃあ。
「ヘルプ機能頼む、アカネル」
「はい。これは……黒竜ルインマスターの攻撃ですね」
「黒竜! ルインマスター! なんだそのかっこいいのは。いや、フィフスエレが呼び出したっていうドラゴンがこいつなんだろうな」
「はい、その通りです。ルインマスターは荒廃を司るドラゴンです。先程の荒廃のブレスにより、生命あるものを朽ちさせ滅ぼします」
「肉体的にも強かったり?」
「はい、魔獣の類に入るドラゴンは、空を飛んでブレスを吐き、剛腕で城壁を打ち崩す程度ですが、これは次元が違います。星渡りの竜です。あらゆるドラゴンの頂点に立つ災厄そのものです」
「アチャー」
フィフスエレは魔法が使えなくなり、そこにバーバリアンが攻め込んできたものだから、何らかの方法でこいつを召喚したんだろう。
で、言う事を聞かせようとはしたんだろうが、相手が管理できる次元の存在ではなかったと。
これは絶対にルインマスターに滅ぼされている。
太陽が陰った。
上空に巨大な黒い影がいる。
翼が四枚、長い首と尻尾。
真っ黒な影。
『見つけた。見つけたぞお』
実に嬉しそうな声がした。
俺たちの脳内に直接だ。
「来たか!」
「もう爪が再生している。化け物め」
ルミイ兄の双子が戦慄している。
「むっ! 追いかけてきたか! 厄介だな」
バルクはハートが強いらしく、腕組みして豪然とルインマスターを見上げるのだ。
黒竜は俺たちを睥睨し、翼をゆっくりと閉じていった。
巨体が大地に降り立つ。
それと同時に、空に暗雲が発生し、太陽を覆い隠した。
『惑星に張り付く極小生物如きが、我の爪を剥がすとは。実に腹立たしい。だが、極小生物のくせにやるではないか。実に面白い』
でかさ的には、全長50mくらい。
翼は畳まれているが、広げると翼長100mくらいあるだろう。
でかい。ひたすらでかい。
「よし、いきなりチュートリアルだ。必殺技を最初に使うと負けフラグだが、これはあくまでルインマスターの手の内を調べるためにやるぞ」
「マスターが言い訳を……! それほどの相手なのですね、これは」
「こいつ、隠しボスだろ。普通にやってたら絶対戦わない系の相手だぞ」
ということでチュートリアルにやって来た。
目標は、可能ならルインマスターの撃破。
だが、チュートリアルのチートモードが導き出した結果は無情なものである。
攻略は可能。
ただし、俺以外は全滅する。
何パターンやってもこれだった。
まず、ルインマスターのブレスは散弾状、放射状、レーザー状と撃ち分けることが可能。
これは軌道を見切った。
もう俺には通用しない。
だがチュートリアルしてない奴らは確実に当たる。
当たれば即死する。
バルクと双子が、よくこいつを退けられたもんだ。
次に物理攻撃。
これ、ブレス以上のトンデモ。
攻撃を仕掛けた瞬間、殴り掛かるという過程をふっとばして、殴り終えたという結果を導き出してくる攻撃だ。
手加減してるんだろうが、一撃で大地を深くえぐり取り、周囲の木々が根こそぎぶっ飛ばされる。
これがほぼノーモーションで出る。
格ゲー的には1フレームで出る。
コンボの達人を連れてこないと対抗は難しいぞ。
……ここで俺の脳内に電光が走る──!!
コンボの達人連れてきてこいつにぶつけよう!!
以上、チュートリアル終わり!
「結論! 俺しか勝てないし俺が勝ってもみんな全滅!! 分が悪いなんてものじゃないので退散だ!」
俺が堂々と宣言したので、周囲は驚いたようだ。
ルインマスターも興味深げに、俺を見る。
『我に勝てると? その自信、確かに大地に根を張った強いものだ。なるほど、納得しよう。で、我とやるかね? やらぬと言ってもここで捻り潰すが』
ルインマスターが翼を広げた。
あの翼からは、レーザー状のブレスが四方八方に飛ぶんだよな。
これで、フィフスエレの帝都は滅ぼされた。
朽ち果て、人間たちが絶望に泣き叫ぶ様を、ルインマスターは実に楽しそうに眺めていた……というのをヘルプを通じて見たぞ。
こいつにとって、この世界に召喚されて暴れるのはただの娯楽に過ぎないのだ。
「ルインマスター、俺はあんたといい勝負ができる男を知っている──」
なので、ここは娯楽対決だ。
こいつ、娯楽に飢えてる。
ならば娯楽を提示することで交渉できる。
『ほう、我といい勝負を? お前ではないのか』
「俺だとこう、華がない感じで終わる。俺の戦い方は攻略だからな。それに俺があんたに勝っても、周りが死ぬ。俺が戦うモチベーションが無い」
『ほほう、ほう、それが定命の者の考えであろうなあ。我は単体で完成しているが故、退屈以外に敵はいない。退屈は辛いぞ……』
しみじみと呟くルインマスター。
「その退屈を晴らす奴を連れてきてやろう。あんたの攻撃全部を受けきり、真正面から攻め込んでくる奴だ。戦ったら超面白いぞ」
『ほほう!』
ルインマスターの語気が軽くなる。
これは、俺の提案に興味を持ったな。
『連れてくるがいい。見逃してやろう。ただし、我に嘘をつくな。逃げようとしたら、世界のどこにいても見つけ出して滅ぼしに行くぞ』
「永遠の命があるっぽいのに疑り深いやつだな。いいか。ヘルプ機能でそいつを表示するから見てろ」
俺のヘルプ機能、他の人間にも見せられるようにバージョンアップしたのだ。
この間、チートモードが開放されて以来だな。
目の前に展開された映像に、ルインマスターが目を丸くした。
『お前、それはアカシックレコードではないか。我ら星渡りはある程度これを無視できるとは言え、宇宙の根幹に接触できるなら、お前が我に勝てると豪語するのも納得はできる。どうだ、ここで我とやらんか』
「やらん。ほい、こいつ。コンボの達人」
ヘルプの画像添付機能を使い、コンボの達人を表示した。
周囲のバーバリアンやルサルカ信者たちは、恐怖に震えながら俺たちのやり取りを見ていたのだが、コンボの達人の姿を見てきょとんとした。
強そうに見えないもんな……!
だが、ルインマスターはすぐに、コンボの達人の強さを感じ取ったらしい。
『ほう! 最上級の概念使いか! 面白い! 早く連れてくるがいい! 我はこの森だけを滅ぼすに留め、お前の再来を待つ……』
黒竜はそれを告げた後、空へと飛び上がった。
暗雲とともに、その姿は消えてしまう。
「あひー」
いなくなったあと、ルミイが悲鳴をあげた。
遅いよ!
「あれはカオルンも相当苦しいのだ……! パワーアップしたのに、上には上がいるのだー! もっと無敵な期間を味わわせてほしかったのだ!」
カオルン悔しそう。
「死の線が見えなかったよ、あれ。無理だねえ……。それに、技巧神イサルデよりも遥かに格上だよ、あいつ」
ナルカの分析は正確だ。
「だろう。あれ、世界のバグキャラだよ。あんなの呼び出したら滅ぼされるに決まってるじゃん。フィフスエレは終わっていたのだ」
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