召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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終末の王編

第177話 襲撃の魔導王からの尻無双

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 達人とフリズドライがワイワイと盛り上がっている。
 二度目の手合わせを始めているようだ。
 これは生死を掛けたものではなく、エキシビジョンマッチ的なもので、達人の顔にも笑顔が……って、こいつ、強敵と戦う時に笑顔だったりするんだよな。いつも通りだ。

 少女の姿になったフリズドライが、なんだか嬉しそうだ。
 元になった若い神としての記憶も人格も消えているようだが、そうすると、自分を解放した相手がコンボの達人ということになるか。

「なーんかカオルンに似てる気がするのだ」

「おう、まんまだぞ」

「驚きました。カオルンみたいなことがまた起こるんですね。マスターでなければ無理だと思ってたんですけど、一体どういう奇跡が……」

 アカネルがそこまで言って、俺をジーッと見た。

「マスター、やりましたね?」

「ああ。チートモードでフリズドライに弱点を作った。だがそいつは、真っ向から正攻法で、一対一でフリズドライを倒さないと発動しないみたいな弱点でな。なんだこりゃ、ダメダメじゃないかと思ったが、それができる男がここにいたからな」

 達人は間違いなく、自らの力でフリズドライを解放したわけだ。
 魔精霊は本来の能力のほとんどを失っている。
 あの甲冑とか、氷の肌とかがもう無いからな。

 だが、これからは中身の人として、達人の薫陶を受けて成長していくのではないか。

 ひとまず、この状況はめでたしめでたしだ。
 俺はホッとため息をつきつつ、俺ならこのタイミングで来るなーと思った。

「チュートリアル」

「マスター!?」

「マナビ!?」

 横にいた二人ごと、チュートリアル空間に飛び込む。
 すると、俺の胸板から腕が生えていた。

「ほらな」

 アカネルもカオルンも、驚愕で固まっている。
 俺の体が貫かれているからだ。
 いやあ、チュートリアルにするのが一秒遅かったら死んでたわ。

 俺を貫いている腕がスーッと消える。
 俺の胸にも穴は空いていない。

 ここで、俺は素早く前転した。
 そうすると、俺がさっきまで立っていた場所に、ローブを翻した男が出現する。

 魔導王だ。
 こいつ、何もかも片付いてめでたしめでたしになった瞬間を狙って出現し、音も気配も魔力も感じさせずに不意打ちしてきやがったのだ。

「こいつっ!!」

 カオルンが銀の刃を展開して魔導王に斬りかかる。
 これを、チュートリアル魔導王は魔力の鎧を腕に纏い、最小限の動きで受け切る。
 そして後退、転移する。

 現れたのは、カオルンの背後だ。

「な、なんなのだ!?」

 今度はカオルンの胸に魔導王の腕が生えるところである。
 俺はスーッと飛び込んで、チュートリアル魔導王の腕をネクタイパンチで弾いた。

「思ってたよりも相当ヤバいやつだな、魔導王。めちゃくちゃ規模の大きい魔法を使ってくるかと思ったら、近接距離で微妙にいやらしい魔法を連発しながら、即死攻撃を死角から連打してくるわ」

「ど、どうするのだマナビ! こいつ、カオルンの攻撃が当たらないのだ! それに……」

 飛び上がったチュートリアル魔導王は、アホみたいな速度で移動し、カオルンを翻弄してくる。

「カオルンよりも速いのだー!?」

「そりゃあ、魔導王には移動なら移動、攻撃なら攻撃で、魔法でやれる全ての力があるからな。慣性とか空気抵抗とか殺しての超移動だろう。認識も魔法でやってる。まあヤバいやつだよ」

 薄々思っていたが、こいつが本気で来たら、正攻法で太刀打ちするのは不可能だろう。
 可能なのは俺とオクタゴンと達人だけだ。

 ここは退去願って、改めて三人集めてボコるか。
 なので、俺はちょっと本気を出すことにした。

 何回かのチュートリアルを見て、このシーンで魔導王がどう動くかは把握した。
 元の時間軸に戻る。
 俺はすぐさま前転した。

 魔導王が出現し、俺がいた場所を腕で貫く。
 だが、既に俺は地面に転がっているのだ。

「僕の不意打ちを避けた……? おかしいな、完全に気配を殺していたのだけれど。まあいい。ならば君の大切な人たちをこうして」

 俺が転がったまま、ぴょーんと尻の力で撥ねた。

「!?」

 全くこれは予想していなかったらしく、魔導王が驚愕で固まった。
 そして、慌てて俺の頭上へ瞬間移動する。

「不気味な動きを! やめろ、気持ち悪い!」

 至近距離用の衝撃波みたいなのを放ってきた。
 だが、これが撃たれた時には俺は着地しているので、そのまま尻移動で横に避けた。

「うわっ、気持ち悪い! なんだその動き!? 魔力も、異世界召喚者の能力も感じない……!? 神の力でもなければ、一体なんなんだ、それは!?」

 おっ、魔導王の顔に戸惑いと、僅かに恐怖が浮かんだぞ。

「魔導王を恐怖させる、マスターの尻移動……! あれ、本当になんなんでしょうね」

「カオルンにもさっぱりなのだ……。真似したけど無理だったのだー」

 魔導王の連続攻撃を、今度は真面目に起き上がり、ネクタイブレードで弾く。
 弾きながら俺が横たわると、魔導王が明らかに緊張した。

 そう、寝転んだ俺は強い。

 魔導王のエネルギー弾みたいなのをジグザグに回避しながら、俺は尻移動で接近するのだ。
 そしてここだ! というところで、俺は寝たまま左側に向かって跳躍した。

 そこに、回避しようとした魔導王が転移してくる。
 ハハハ、そこはチュートリアルで読んでたんだ。

「ウグワーッ!?」

 俺の体当たりを食らって、魔導王がこけた。
 そして、慌ててまた転移する。

 今度は出てこなくなった。

「逃げたか」

「誰しも、最も恐ろしいものは理解できないものですからね。魔導王は、マスターの意味不明さに恐怖したのでしょう。もしかすると、この世界に来て初めて味わう恐怖だったかもしれません」

「そんなに」

 アカネルが魔導王の内心を代弁するのである。

「カオルンも精進しないといけないのだなー」

 カオルンが難しい顔をしている中、コンボの達人が弟子のフリズドライを連れ、ニコニコしながら駆け寄ってくるのだ。

「おいおい、なんだなんだ! 楽しそうなことやってたじゃないか! 俺も混ぜてくれ! えっ、もう終わったのか……!?」

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