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終末の王編
第186話 尻感知からの尻移動(決着)
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「マナビさんが一対一になりましたから、これは勝ちましたね」
「今夜のご飯の話をするのだ? それとも魔導王倒した記念の夜は誰が一緒に過ごすか決めるのだ?」
「当機能まだまだ忙しいので、そういう重要な決定は後にしてもらっていいですか!?」
「あんたたち、もう勝ったつもりなのかい……!?」
奥さんたちがワイワイ言っている。
最後に疑念を口にしたナルカに、ルミイがウインクしたようだ。
「だって、マナビさんは負けませんもの」
その通りである。
過去の魔導王は俺を完全に抹殺すべく、周囲の世界を変質させる。
というか、これは転移みたいなものだな。
気付くと、俺は宇宙空間にいた。
眼の前の魔導王がほくそ笑む。
「エーテルを呼吸はできても、手がかりも足がかりもない場所で、貴様は動けまい。僕はゆっくりと、お前をなぶり殺しにできるというわけだ」
「ほう、果たしてそうかな?」
俺は体を動かしてみた。
宇宙って感じとはちょっと違う。
体が何かに包まれている感触だ。
エーテルと言ったか。
それが俺の周囲全てに展開している。
「ふむ、これは……。魔導王、尻穴……いや墓穴を掘ったな」
「何を言っている? まあいい。すぐに死ぬやつの戯言なんか意味がない。お前を殺して、お前の女たちも皆殺しにして、そして大陸をまるごと圧縮して次なる魔力の星に変えてやる。まあ、もう魔力を受け取れる奴なんかいなくなるんだけどな!」
ニヤニヤ笑う魔導王が、両手で別々に印を結ぶ。
つまり、呪文を詠唱してるみたいなものだ。
魔導王が詠唱するということは、まあでかい魔法が来るのでは?
そのように想像したら、まさにその通りだった。
右手から生み出されるバカみたいなサイズの火の玉。
帝都をまるごと飲み込むサイズだ。
左手から生み出される、視認できるほどの冷気の塊。
やっぱり帝都をまるごと飲み込むサイズ。
これを俺一人にぶつけるわけか。
いやあ、本気だねえ。
「死ね! デスロード・インフェルノ! ワールドブラスト・コキュートス!」
放たれた魔法が俺に迫る。
宇宙空間に浮かんだ俺に、回避の術無し。このまま魔法に飲み込まれて一巻の終わり──というのが、魔導王が目論んだエンディングであっただろう。
だが。
この宇宙には真空ではなく、エーテルが満ちていた。
そして俺は、尻に触れるエーテルの感触が分かる。
この身は既にチートモードが宿っているっぽい。
だから、俺は世界を書き換えた。
俺の持つ力が十全に発揮できる形へと、だ。
腕組みし、仁王立ちの姿勢の俺。
そんな俺が、突然動き出した。
エーテルの海を、超高速で移動する。
尻で。
「なっ、何ぃーっ!?」
インフェルノを回避しながら、魔導王へ迫る。
帝都ほどもある炎魔法は、俺を追いかけてゆっくりと戻ってきた。
そこへ、氷結魔法が迫る。
俺は真横へスピンしながら、インフェルノとコキュートスの軌道を重ねてやった。
二つの極大破壊魔法がぶつかりあい、なんか凄い余波を撒き散らしながら消滅していく。
「なんで炎と氷の魔法を同時に作ったし」
ツッコミつつ、魔導王まで接近する俺なのだ。
あれを二つ合わせて凄い威力とかにするのがお約束だろ。
相殺しちゃうあたり分かってないな。
「うわああああああ! 来るな来るな来るな! 死の雲よ! 雷撃の槍よ! 酸の雨よ! 異世界の魔神よ!」
魔導王は連続して大魔法を使い、俺の侵攻を阻もうとする。
だが、死の雲を回避し、雷撃の槍をかすめながら疾走し、酸の雨の隙間を縫って駆け抜け、異世界の魔神の股間を通過ざまに一撃くれてやり。
何もかもが俺を止めるには足りない。
あっという間に俺は奴の懐まで入り込み……。
「馬鹿め、誘い込まれたな。原子分解、ディスインテグレート!」
俺に向けて、魔導王の手が差し出された。
『ディスインテグレート。触れたもの全てを原子まで分解する、単体攻撃最高峰と呼ばれる魔法です。回避手段はありません』
ヘルプ機能が無情に告げる。
「チュートリアル」
俺はディスインテグレートが完成する前に、チュートリアル空間へ飛んでいた。
「じゃあ、作るか! 原子分解魔法を攻略する方法」
あらゆる魔法を生み出し、使いこなすことが魔導王の権能である。
それなら、俺はあらゆる事を攻略できるようになるのが権能だ。
よし、チートモードの力で、それっぽい屁理屈が誕生した。
戻ってくる俺。
魔導王のディスインテグレートに合わせて、ネクタイブレードを展開した。
何を無駄なことを、と笑う魔導王。
そいつの笑みが消えない間に、ネクタイブレードは特定の周波に合わせて揺れつつ……ディスインテグレートをスルッと抜けた。
そして……。
状況が全く理解できてない、勝利を確信したままの魔導王を、真っ向から両断したのである。
「おっと」
俺は振り返り、立ち上がる。
真っ二つになったというのに、高速で再生を始める魔導王。
そいつの切り口に、もう一回ネクタイブレードを押し当てるのである。
「や、やめろ」
やっと我に返ったらしい。
魔導王が怯えた目を俺に向けて呟く。
真っ二つになっても喋れるんだな。
「どうしてだ……。どうして、ディスインテグレートを無効化できた」
「原子分解する時に、あの魔法は特定の周波数で活動するんだ。だから同じ周波で動かしたら、なーんだ同じ魔法かあ、と誤認するのですり抜けられるってわけよ」
「そんな馬鹿な……!!」
「で、お前さんは恐らく、殺されても何度でも復活する魔法を自分に掛けてるだろうなと思ったので、これからその魔法を打ち消す。これも魔力を周波数みたいに読み替えてだな。今度は相反する動きでネクタイブレードを差し込むと……」
「やめろ! やめろやめろやめろ! いやだ! 僕は死にたくない! 僕は特別なんだ! 僕はこの世界を自由にする力を得て召喚されたんだ! なのに、どうしてお前に! お前みたいな、なんだかよく分からないやつに……!!」
「フフフ……よく分からないってのは怖いだろう。じゃ、おさらばだな魔導王。そいっ」
俺は無造作に、ネクタイブレードを振るった。
再生しかけていた魔導王は、今度こそ左右に泣き別れである。
恐怖に満ちた目をしたまま、魔導王の体はエーテルの流れに呑まれ、左右に離れていった。
死んだなー。
……さて、後はどうやって俺が戻るかだが。
ま、ヘルプ機能もチートモードもある。
のんびり帰還するとしようじゃないか。
(終末の王編 おわり この後は後日談です)
「今夜のご飯の話をするのだ? それとも魔導王倒した記念の夜は誰が一緒に過ごすか決めるのだ?」
「当機能まだまだ忙しいので、そういう重要な決定は後にしてもらっていいですか!?」
「あんたたち、もう勝ったつもりなのかい……!?」
奥さんたちがワイワイ言っている。
最後に疑念を口にしたナルカに、ルミイがウインクしたようだ。
「だって、マナビさんは負けませんもの」
その通りである。
過去の魔導王は俺を完全に抹殺すべく、周囲の世界を変質させる。
というか、これは転移みたいなものだな。
気付くと、俺は宇宙空間にいた。
眼の前の魔導王がほくそ笑む。
「エーテルを呼吸はできても、手がかりも足がかりもない場所で、貴様は動けまい。僕はゆっくりと、お前をなぶり殺しにできるというわけだ」
「ほう、果たしてそうかな?」
俺は体を動かしてみた。
宇宙って感じとはちょっと違う。
体が何かに包まれている感触だ。
エーテルと言ったか。
それが俺の周囲全てに展開している。
「ふむ、これは……。魔導王、尻穴……いや墓穴を掘ったな」
「何を言っている? まあいい。すぐに死ぬやつの戯言なんか意味がない。お前を殺して、お前の女たちも皆殺しにして、そして大陸をまるごと圧縮して次なる魔力の星に変えてやる。まあ、もう魔力を受け取れる奴なんかいなくなるんだけどな!」
ニヤニヤ笑う魔導王が、両手で別々に印を結ぶ。
つまり、呪文を詠唱してるみたいなものだ。
魔導王が詠唱するということは、まあでかい魔法が来るのでは?
そのように想像したら、まさにその通りだった。
右手から生み出されるバカみたいなサイズの火の玉。
帝都をまるごと飲み込むサイズだ。
左手から生み出される、視認できるほどの冷気の塊。
やっぱり帝都をまるごと飲み込むサイズ。
これを俺一人にぶつけるわけか。
いやあ、本気だねえ。
「死ね! デスロード・インフェルノ! ワールドブラスト・コキュートス!」
放たれた魔法が俺に迫る。
宇宙空間に浮かんだ俺に、回避の術無し。このまま魔法に飲み込まれて一巻の終わり──というのが、魔導王が目論んだエンディングであっただろう。
だが。
この宇宙には真空ではなく、エーテルが満ちていた。
そして俺は、尻に触れるエーテルの感触が分かる。
この身は既にチートモードが宿っているっぽい。
だから、俺は世界を書き換えた。
俺の持つ力が十全に発揮できる形へと、だ。
腕組みし、仁王立ちの姿勢の俺。
そんな俺が、突然動き出した。
エーテルの海を、超高速で移動する。
尻で。
「なっ、何ぃーっ!?」
インフェルノを回避しながら、魔導王へ迫る。
帝都ほどもある炎魔法は、俺を追いかけてゆっくりと戻ってきた。
そこへ、氷結魔法が迫る。
俺は真横へスピンしながら、インフェルノとコキュートスの軌道を重ねてやった。
二つの極大破壊魔法がぶつかりあい、なんか凄い余波を撒き散らしながら消滅していく。
「なんで炎と氷の魔法を同時に作ったし」
ツッコミつつ、魔導王まで接近する俺なのだ。
あれを二つ合わせて凄い威力とかにするのがお約束だろ。
相殺しちゃうあたり分かってないな。
「うわああああああ! 来るな来るな来るな! 死の雲よ! 雷撃の槍よ! 酸の雨よ! 異世界の魔神よ!」
魔導王は連続して大魔法を使い、俺の侵攻を阻もうとする。
だが、死の雲を回避し、雷撃の槍をかすめながら疾走し、酸の雨の隙間を縫って駆け抜け、異世界の魔神の股間を通過ざまに一撃くれてやり。
何もかもが俺を止めるには足りない。
あっという間に俺は奴の懐まで入り込み……。
「馬鹿め、誘い込まれたな。原子分解、ディスインテグレート!」
俺に向けて、魔導王の手が差し出された。
『ディスインテグレート。触れたもの全てを原子まで分解する、単体攻撃最高峰と呼ばれる魔法です。回避手段はありません』
ヘルプ機能が無情に告げる。
「チュートリアル」
俺はディスインテグレートが完成する前に、チュートリアル空間へ飛んでいた。
「じゃあ、作るか! 原子分解魔法を攻略する方法」
あらゆる魔法を生み出し、使いこなすことが魔導王の権能である。
それなら、俺はあらゆる事を攻略できるようになるのが権能だ。
よし、チートモードの力で、それっぽい屁理屈が誕生した。
戻ってくる俺。
魔導王のディスインテグレートに合わせて、ネクタイブレードを展開した。
何を無駄なことを、と笑う魔導王。
そいつの笑みが消えない間に、ネクタイブレードは特定の周波に合わせて揺れつつ……ディスインテグレートをスルッと抜けた。
そして……。
状況が全く理解できてない、勝利を確信したままの魔導王を、真っ向から両断したのである。
「おっと」
俺は振り返り、立ち上がる。
真っ二つになったというのに、高速で再生を始める魔導王。
そいつの切り口に、もう一回ネクタイブレードを押し当てるのである。
「や、やめろ」
やっと我に返ったらしい。
魔導王が怯えた目を俺に向けて呟く。
真っ二つになっても喋れるんだな。
「どうしてだ……。どうして、ディスインテグレートを無効化できた」
「原子分解する時に、あの魔法は特定の周波数で活動するんだ。だから同じ周波で動かしたら、なーんだ同じ魔法かあ、と誤認するのですり抜けられるってわけよ」
「そんな馬鹿な……!!」
「で、お前さんは恐らく、殺されても何度でも復活する魔法を自分に掛けてるだろうなと思ったので、これからその魔法を打ち消す。これも魔力を周波数みたいに読み替えてだな。今度は相反する動きでネクタイブレードを差し込むと……」
「やめろ! やめろやめろやめろ! いやだ! 僕は死にたくない! 僕は特別なんだ! 僕はこの世界を自由にする力を得て召喚されたんだ! なのに、どうしてお前に! お前みたいな、なんだかよく分からないやつに……!!」
「フフフ……よく分からないってのは怖いだろう。じゃ、おさらばだな魔導王。そいっ」
俺は無造作に、ネクタイブレードを振るった。
再生しかけていた魔導王は、今度こそ左右に泣き別れである。
恐怖に満ちた目をしたまま、魔導王の体はエーテルの流れに呑まれ、左右に離れていった。
死んだなー。
……さて、後はどうやって俺が戻るかだが。
ま、ヘルプ機能もチートモードもある。
のんびり帰還するとしようじゃないか。
(終末の王編 おわり この後は後日談です)
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