召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

文字の大きさ
189 / 196
終章・始まりの王編

第189話 途中で神様で和平の依頼

しおりを挟む
 カオルンとアカネルと、楽しく励んでいたところである。
 外では宴の声がずっと聞こえており、あちこちで歌声も響いている。

 平和である。
 平和な中だからこそ、昼間っから励めるのだ。
 素晴らしい。

 今後は大いに励み、子孫を繁栄させていこう……。
 そう誓う俺なのだった。

「あれっ、マナビ! アカネルが変なのだ!」

 休憩がてらジュースなどを飲んでいたカオルンが、アカネルの変化に気付いた。
 そう言えば……。
 なんか全然反応が無くなったような。

 ぽーっとしたアカネルが虚空を見つめている。
 その唇が動いた。

『一時的に当機能はヘルプ機能によって管理されます。異世界パルメディアの神格からのアプローチを確認しました。マスターへの取次を希望しています』

「へえ、神様が直接ヘルプ機能にアクセスしてくるのか。まあ、一回ずつ終わってたしちょうどいいんじゃないか。繋いでくれ」

『了解しました。神格を表示します』

 アカネルの頭上に、映像が出現した。
 そこに映っているのは、頭から角を生やした長髪の美形である。
 肌の色は青く、瞳は金色だ。

『対応を感謝する。我は魔族を束ねる魔界神バリオスだ。星の救い手たるコトマエ・マナビとの会談をしたい』

「魔族の神様か! そりゃあまた、いきなりだな。どうしたんだ」

『うむ。積もる話もある。そちらは他の神の守りが無い。我が行っても問題無かろう』

 魔界神バリオスはそう言うと、よっこらしょ、とヘルプ機能画面の枠に手をかけた。

「えっ、そういうのありなの?」

『魔界神は境界を司る神だ。故に境界線を自在に超えることができる。この世界の伝承で、魔族が突如、いるはずのない場所に現れて襲ってきたというものがある。あれは我の仕業だ』

「ほうほう」

 集団転送能力とでも言うのか。
 人間サイズのバリオスは、ホテルへ降り立った。

 そして、ポカーンとするカオルンと、素っ裸で大の字になっているアカネルを交互に見た。

『邪魔してしまったか』

「あ、気にしないでいい。カオルン、アカネル、服着て服。ヘルプ機能、もうアカネルに権限返して。用事終わっただろ」

 すぐに、アカネルは意識を取り戻した。
 そしてバリオスを見て、「ウワーッ」とか言いながら慌ててシーツで体を隠す。

 恥じらい!
 萌えますなあ。

 俺は腰にタオルを巻いた状態である。
 このままバリオスとの会談に臨もうとしたら、

『チラチラ見えて気が散るから何か穿いてくれ。境界線で区切っておくことが大切だぞ』

「さすがは境界線を司る神だな」

 ということで、パンツとズボンとシャツを身につけることになるのだった。

「それで、バリオスは俺に何の用事が?」

『話が早い。助かる。頼みたいのは、魔族の助命についてだ』

「おお」

 やっぱり。

『魔導王が倒され、世界は人間のものになった。そうである以上、次に狙われるのはシクスゼクスの地にいる魔族であろう』

「だろうなー」

『それは困る。魔族だって生きているのだ。我は魔導王によって追放された魔族を守り、導き、人と魔族の子を王に据えた国を作り上げた。今はバフォメスが必死に頑張っている。そんなギリギリのバランスで生き残っている魔族を助けて欲しい』

「そんな危ないところだったのか。何かある度に突っかかってくるから、余裕があるのかと思ってた」

『そなたが当たり前みたいな顔してシクスゼクスの国境を何度も超えるからだ』

「言われてみれば確かに……」

 自国にスナック感覚で侵入されて気分のいい国は無いよな。

「だが、それというのもイースマスがシクスゼクスの中にあるからだぞ。あそこを取り込んだの大失敗だろ。管理できないだろ」

『うむ。オクタゴンとは何度も交渉が決裂している。穏便に移住してほしいのだが、魔族の方が後から来たのだから譲るいわれは無いと言われてな』

「そうだよなあ。じゃあどうだ。イースマスと外部を繋ぐルートをだな、シクスゼクス側から外部へオープンにするんだ。それで魔族側から融和の姿勢を見せるというだな」

『ふむふむ。人族がそれに乗じて襲って来そうな気もするが……』

「争いは止まらないだろ。だが、オープンなルートができることで、シクスゼクスはあまりイライラしないで済む。人族との戦いは戦いで、また別だ」

 そっちに俺は関与するつもりはない。
 今回の魔導王戦のように、全面戦争にさえならなければいいのだ。

「頭数ならどっちも似たようなもんだ。だが、こっちは魔導王に勝った勢いと、バーバリアンに信仰に魔導機械がある。分が悪かろう」

『悪い。今、シクスゼクスを全軍で攻められれば、魔族はこの大陸を放棄して逃げ出すしかなくなるだろう。あるいは世界の各地に潜伏し、ゲリラ的な活動を行うかだ』

「うんうん。それは魔族からすると生活の破綻を意味するし、人間からするといつどこから魔族が来るか分からないから、安心できなくなるんだよな。よろしくない」

 俺とバリオスで、話を詰めていく。
 これを横で聞いていたカオルンが、ほえーと声をあげた。

「マナビが頭のいい話をしてるのだー。いっつも、戦うこととエッチなことしか考えてないと思ってたのだ」

「マスター、もともと策略を練るのがお好きなんですよ。それに、大きな戦いは終わったでしょう。だからこれからは、戦後のことを考えていかないといけないんです」

「なるほどなのだー。なんだか複雑そうで、カオルンはよく分からないのだ」

 そうであろうそうであろう。
 戦いと戦いの合間は平和になる。
 だが、平和な時こそ、どうやってそれを維持するか、そしてどうマシな状況に持っていくかが重要なのである。

「よし、じゃあ、魔族のトップと人族のトップを会談させよう」

 世界を次のステージへ進めるために、俺は提案をするのだった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!

月芝
ファンタジー
国の端っこのきわきわにある辺境の里にて。 不自由なりにも快適にすみっこ暮らしをしていたチヨコ。 いずれは都会に出て……なんてことはまるで考えておらず、 実家の畑と趣味の園芸の二刀流で、第一次産業の星を目指す所存。 父母妹、クセの強い里の仲間たち、その他いろいろ。 ちょっぴり変わった環境に囲まれて、すくすく育ち迎えた十一歳。 森で行き倒れの老人を助けたら、なぜだか剣の母に任命されちゃった!! って、剣の母って何? 世に邪悪があふれ災いがはびこるとき、地上へと神がつかわす天剣(アマノツルギ)。 それを産み出す母体に選ばれてしまった少女。 役に立ちそうで微妙なチカラを授かるも、使命を果たさないと恐ろしい呪いが……。 うかうかしていたら、あっという間に灰色の青春が過ぎて、 孤高の人生の果てに、寂しい老後が待っている。 なんてこったい! チヨコの明日はどっちだ!

【完結】腹ペコ貴族のスキルは「種」でした

シマセイ
ファンタジー
スキルが全てを決める世界。 下級貴族の少年アレンが授かったのは、植物の種しか生み出せない、役立たずの『種』スキルだった。 『種クズ』と周りから嘲笑されても、超がつくほど呑気で食いしん坊なアレンはどこ吹く風。 今日もスキルで出した木の実をおやつに、マイペースな学院生活を送る。 これは、誰もがクズスキルと笑うその力に、世界の常識を覆すほどの秘密が隠されているとは露ほども知らない、一人の少年が繰り広げる面白おかしい学院ファンタジー!

ざまぁされた馬鹿勇者様に転生してしまいましたが、国外追放後、ある事情を抱える女性たちの救世主となっていました。

越路遼介
ファンタジー
65歳で消防士を定年退職した高野健司、彼は『ざまぁ』系のネット小説を好み、特に『不細工で太っている補助魔法士の華麗な成り上がり』と云う作品を愛読していた。主人公アランの痛快な逆転劇、哀れ『ざまぁ』された元勇者のグレンは絶望のあまり…。そして、85歳で天寿を全うした健司は…死後知らない世界へと。やがて自身が、あのグレンとなっていることに気付いた。国外追放を受けている彼は名を変えて、違う大陸を目指して旅立ち、最初に寄った国の冒険者ギルドにて女性職員から「貴方に、ある事情を抱えている女性たちの救世主になってもらいたいのです」という依頼を受けるのであった。そして、そのある事情こそ、消防士である高野健司が唯一現場で泣いた事案そのものだったのである。

長女は家族を養いたい! ~凍死から始まるお仕事冒険記~

灰色サレナ
ファンタジー
とある片田舎で貧困の末に殺された3きょうだい。 その3人が目覚めた先は日本語が通じてしまうのに魔物はいるわ魔法はあるわのファンタジー世界……そこで出会った首が取れるおねーさん事、アンドロイドのエキドナ・アルカーノと共に大陸で一番大きい鍛冶国家ウェイランドへ向かう。 魔物が生息する世界で生き抜こうと弥生は真司と文香を護るためギルドへと就職、エキドナもまた家族を探すという目的のために弥生と生活を共にしていた。 首尾よく仕事と家、仲間を得た弥生は別世界での生活に慣れていく、そんな中ウェイランド王城での見学イベントで不思議な男性に狙われてしまう。 訳も分からぬまま再び死ぬかと思われた時、新たな来訪者『神楽洞爺』に命を救われた。 そしてひょんなことからこの世界に実の両親が生存していることを知り、弥生は妹と弟を守りつつ、生活向上に全力で遊んでみたり、合流するために路銀稼ぎや体力づくり、なし崩し的に侵略者の撃退に奮闘する。 座敷童や女郎蜘蛛、古代の優しき竜。 全ての家族と仲間が集まる時、物語の始まりである弥生が選んだ道がこの世界の始まりでもあった。 ほのぼののんびり、時たまハードな弥生の家族探しの物語

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

継母の嫌がらせで冷酷な辺境伯の元に嫁がされましたが、噂と違って優しい彼から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアーティアは、継母に冷酷無慈悲と噂されるフレイグ・メーカム辺境伯の元に嫁ぐように言い渡された。 継母は、アーティアが苦しい生活を送ると思い、そんな辺境伯の元に嫁がせることに決めたようだ。 しかし、そんな彼女の意図とは裏腹にアーティアは楽しい毎日を送っていた。辺境伯のフレイグは、噂のような人物ではなかったのである。 彼は、多少無口で不愛想な所はあるが優しい人物だった。そんな彼とアーティアは不思議と気が合い、やがてお互いに惹かれるようになっていく。 2022/03/04 改題しました。(旧題:不器用な辺境伯の不器用な愛し方 ~継母の嫌がらせで冷酷無慈悲な辺境伯の元に嫁がされましたが、溺愛されています~)

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

処理中です...