「スキル:くさい息で敵ごと全滅するところだった!」と追放された俺は理解ある女騎士と出会って真の力に覚醒する~ラーニング能力で楽々冒険ライフ~

あけちともあき

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第二章

第31話 抗争の原因は、人ならざるモノ?

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 エリカの実家で、完全にエリカの婿として認識された俺。
 子供たちにゴブリンパンチを教えたりしつつ(当然誰もできない)、まったりと過ごした。

「おいドルマ! なんで訂正しないんだ!」

「これは何を言っても無駄なやつだ。俺にはなんか分かる。だから、ほどほどで流しておいてまた旅立てばいいんじゃないか」

「あっ、そうかー!」

 エリカが納得した。
 すると、エリカのませた姪っ子たちが集まってきて、「エリカおばさん、いつけっこんするの!」「あかちゃんうまれる?」とか聞いてくるのであった。

 エリカが耳を真っ赤にして、「ちがうぞー!」と吠えている。
 平和な光景である。

 そんな俺の頭の中は、エリカの祖父に言われたことがグルグルしていた……のだが、今は特に何も考えていない。
 こういう平和な時に悩むのは時間がもったいないからな。
 頭の中身を空っぽにすることを、堪能するぞ。

 だが、まったりは長くは続かなかった。

「隣村の連中だ! 武器を持ってやって来やがった!」

 エリカ家の周りにもたくさん農家はあり、ランチャー地方はこういう家々が集まって広大な村を構成している。
 そんな村人の一人が叫びながら走ってきた。

 彼も武器を持っている。
 槍だ。

「おいエリカ、槍を持ってる。文明的な武器だ」

「ああ。実は家にいたころは槍は珍しくなかったんだ。冒険者になってから全然触れる機会がなくなって、あれは凄い武器だったんだなと思ったんだ」

「なるほどなあ。俺が農家の息子だった頃は、槍すらなかったからなあ」

 エリカの父が走り出てきて、村人と何かお喋りしている。

「くそっ、奴らめ、せっかくエリカが婿を連れて帰ってきてくれた時に、なんて空気の読めない奴らだ!」

「しかも今までで最大規模の襲撃ですよ村長!」

 村長?
 エリカ、村長の娘だったか。

「よし、若い衆を集めろ! 食い止めるぞ!」

 エリカの父が真剣な表情をしながら戻ってきた。
 なかなか凛々しいではないか。
 どれ、エリカの実家を救うためだ。俺も一肌脱ごう。

「ちょっとよろしいか」

「おお、婿殿! 済まんな、せっかく来てもらったばかりだというのに、我が村はこのように、隣村と争っているのだ」

「そりゃあまたどうしてだ? 土地が足りないとか?」

「そんなことはない! ランチャー地方は農地に向いた広大な土地のある場所だ。土地が足りなくて困るなどということはないんだ。だが、奴らはどこからか領主だという男を上に据え、全ての農地を渡せと襲ってくるようになった」

「そりゃ物騒だ。どうだろう。エリカの家族を救うのは俺もやぶさかではないので、手を貸そう。案内してくれ」

「本当か!? だ、だが、婿殿に万一の事があれば……。せめてエリカが子を産んでいれば」

「むきー!」

 聞き捨てならぬと会話に割り込むエリカ。

「ドルマは強いんだから大丈夫だ! 私が保証する! あとは、私も行くぞ!」

「エリカも!? や、やめるんだ! 争いは男の仕事だ!」

「私は冒険者だし、騎士だぞ!」

「まだ騎士だなんて言ってるのか!」

 わあわあ騒ぎ出した。
 状況はそれどころではないのでは?

「まあまあ、俺とエリカで襲撃者を蹴散らしてくるので安心してくれ」

「し、しかし……」

「俺とエリカで、ゴブリンの砦を一つ落としたり、リエンタール公国を救ったりしたんだ。いけるいける」

「ほ、本当か!?」

 流れでエリカの父を説得し、俺とエリカは装備を携えて、隣村の連中が襲ってきた場所とやらに急いだ。
 具体的移動方法は。

「ジャンプ!」

 俺、エリカを抱きかかえて飛ぶ!

「むっ、婿殿が飛んだー!?」

 これでお分かりいただけただろうか。

 俺たちは空の上から、隣村の連中を見下ろす。
 村人たちが武器を持って詰めかけてきている。

 おや?
 こちらの村に比べて人数が多いな。
 それに同じ外見の村人がたくさんいる。

 エリカの側は、既に大きな柵を作っており、これで向こうの村の連中を迎え撃っているところだ。
 分が悪い。

 敵は数が多いし、柵と言っても全面にあるわけではない。
 農地は広大なのだ。
 回り込む隙はいくらでもある。

「あいつ、回り込もうとしている!」

「よし、ミサイル!」

 空中から、小石を一つ飛ばした。
 それは猛烈な勢いで飛翔すると、回り込もうとしていた隣村のヤツの目の前に炸裂し、爆発を起こした。

「ウグワーッ!?」

 爆風でゴロゴロ転がっていく隣村の男。

「よーし、着地前に、小石を全部ミサイルだ。当たってくれるなよ。当たると普通の農民だと死ぬからな」

 小袋をざらざらとぶちまけて、中の小石全てをミサイル化する。
 小指の先程のサイズでも、大人一人をふっ飛ばすくらいの威力になるのだ。

 それが次々と、隣村の襲撃者たちに突進していった。

「な、なんこれウグワーッ!!」

「空から何かウグワーッ!!」

「小石が爆発ウグワーッ!!」

「まずい! 土のカイナギオ様にご報告をウグワーッ!!」

 今、なんか変なこと言ってるヤツいなかった?
 そしてふっ飛ばされた村人の一部が、土色の骨みたいなのに変化している。
 そいつらはもぞもぞ起き上がると、慌てて近くの村人の姿に変身した。

「モンスターが混じってる! よし、私がやっつけるぞ!」

 地上が近かったので、エリカは俺の手からぴょーんと飛び出した。
 着地ざま、村人に化けた土色の骨をグレイブソードで殴る。

 頭を半分断ち切られたモンスターは、正体を表すと「ウグワーッ!? な、なんたる野蛮!」と叫びながら事切れた。

 周囲の村人たちが、これを見てドン引きする。
 空中から爆発するもので襲われ、仲間の一人がいきなり脳天をかち割られてモンスター化したのだ。
 引かない方がどうかしている。

「ってことで、襲ってくるヤツが全部モンスターだエリカ! 脳天かち割ってやれー!」

「おう、分かった!!」

 攻撃を仕掛けてくる隣村の人。
 それを、一切の躊躇なくグレイブソードで叩き切るエリカ。
 槍は真横に蹴り飛ばして、無理やり肉薄するスタイルだ。

 うーん、バーサーカー。
 地上に降り立った俺は、周囲に「ワールウインド!」と風を吹かせて、身動きできないようにする。

「どれどれ、それじゃあ、土のカイナギオとやらの話を聞かせてもらおうか」

 どいつから尋問を始めるかな、と戦場を見渡す俺なのだった。
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