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第3章 貴女をずっと欲していた

アリーチェを手にするのは⑪

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【SIDE フレデリック第1王子】

「ファウラーの件、直ぐに動きますか?」
 マックスが貴族議会の招集をかけるために、動こうとしている。
 それをされては、アリーチェの所在を詮索されるだろう。
 ファウラーの為に逸る気持ちはあるが、それ以上にアリーチェだ。

「いや、そっちはアリーチェを取り戻してからだ」
「全く往生際が悪い。姉上は戻りたくないとはっきり言っています。諦めてください。僕は、姉上は1人で眠れないから、きちんと見て欲しいとお願いしていたのに、殿下が聞きいれないから、……姉は、いつもソファーで寝ていたと言っていました」

「はぁ? 侍女が寝る前の支度をしていただろう。どうしてそうなる」
「眠くなる直前まで何かをする人なんです。寝台ではないどこかで、ずっと何かをしてたんでしょう。僕は、姉上のことは何でも分かりますから」
「何をしてたと言うんだ……」
「分かりませんか? 来るはずのない夫を1人で待ち続けていたんでしょう。馬鹿が付くほど純粋なんで」

 ――っ!
 マックスの話を聞けば、益々アリーチェが私の元へ戻ってくる気がしなくなり、何も言い返せなかった。

「姉上は、そんな素振りは見せないけど、落ち込むとご飯を食べなくなるんです。殿下との結婚が決まらないときは、屋敷中総出で姉を見守っていたのに。この城は夫でさえ妻を見てくれないんですから。そんな殿下に姉上は返しません。我が家に何かを送ってきても、姉上には絶対に渡しませんから」
「私だって、諦めるつもりはない」

「姉上は僕がいないと駄目なんです。屋敷に戻ってからは、僕たちは、一緒の布団で眠り、今朝はキスを強請られました。僕のお願いは何でも従う姉が、僕を拒むことは出来ませんから」

「マックス、お前、まさかアリーチェに何かしたのか!」
「ふっ、僕の話が嘘かどうか、姉上に聞けばいい。ですが、まあ無理でしょう。王族条例124条が適応されれば、フレデリック殿下と逃げだした妃のアリーチェ・ウッド・ワーグナーは、この国の法律で、2度と関わることが許されませんから」

「マックス。お前がファウラーを助けたかった理由は、大体察しがついている。アリーチェは、お前と一緒にいて、幸せなのか? 私には、そうは思えないが」
「余計なお世話です。先ほどの姉上から渡された証拠は、僕が証言しますので、ご安心ください」

 マックスがアリーチェを手放したくないと言う気持ちは、私と同じなのだろう、痛い程分かる。だが…………。

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