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第4章 夢の実現へ
掌の中①
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【SIDE アリーチェ】
朝の目覚め。
わたしの頭を撫でる、掌から伝わる愛情と、重なる唇の熱を感じる。
幸せな1日の始まりに、にんまりしてしまう。
だけど、わたしが目を開くのには、相当に時間がかかってるんだと思う。
ぼんやりと覚醒しかけている意識の中で、フレデリック様の唇が、頬や額のいたるところを、くすぐっていた感覚が残っている。
うっすらと私が目を開ければ、嬉しそうなフレデリック様は、待ってたと言わんばかりに、深いキスをする。
目覚めたばかりのわたしとは対照的に、フレデリック様の体は、大分火照って、色のある声を出す。
「目覚めのキスだけじゃ、アリーチェが全然足りないんだ。今日1日アリーチェと離れて頑張る為に、可愛い声が聴きたいけど、いい?」
「そんな事言われたら、うんって言うしかないでしょう」
本当は、フレデリック様が、そう言ってくれないとガッカリする癖に、照れくさいわたしは、少し遠回しに返事をする。
痛くて泣いたのは、なんだったのか? 今では、快感が欲しくて、フレデリック様の背中に腕を回す。
よく分からなくて恥ずかしかった声は、今も我慢できる訳がないけど、そんな事はすっかり気にしていない。
フレデリック様は、いつもわたしを真っ直ぐ見て、大袈裟な程に気持ちを伝えてくれる。
「アリーチェが喜ぶなら、私に出来る事なら何でもする。アリーチェが幸せなら、それ以上に私は幸せだから」
フレデリック様が少しの躊躇いも無く、わたしに愛情を注いでくれるから、朝からあっと言う間にご機嫌になる。
わたしって、なんて単純な性格なんだろうと、思う時もあるけど、わたしの気持ちをこんなに動かすのは、フレデリック様だけだから。
「わたしも、フレデリック様の為なら何でも…………」
「アリーチェは、駄目。私の為には何もしなくていい。だって、私に甘えてるのが、一番可愛いから」
わたしが自然体で身を任せられるフレデリック様の事を、知れば知るほど好きになっていく。
熱を感じて、ぐったりしているわたし。
そんなわたしを、フレデリック様が、抱きしめてくれるこの時間が、実は1番好きな時間だったりしている。
少しでも長く触れ合っていたくて、わたしは甘えて、いっぱいお話ししている。
「フレデリック様って、こうしている時が1番、嬉しそうな顔をしてますよね」
「ああ、この時間だけは、アリーチェの体も心も、頭の中まで独占出来るだろう。アリーチェが、他の男の事を少しも考えていないのは、私と繋がってる時と、こうして私の腕の中にいる時だけだから。私は、妻を1人占めしたくて堪らない、気の小さい男なんだ」
「ふふ、わたしは、浮気なんてしませんよ。だってフレデリック様の腕の中が1番幸せだもん」
「う、浮気っ! そんなの駄目だ。無理、無理、耐えられない」
「ふふっ、そんな事になったら、わたし直ぐに城から追い出されそうですね」
「いや、追い出す訳ない。アリーチェが、傍に居ない方が耐えられない」
フレデリック様は、何を想像したのか、目が潤んでしまった。真面目なフレデリック様に、冗談を言うのは、もう辞めた方がいいかも知れない。
「フレデリック様ってば、心配し過ぎですよ。ふふっ」
「そう言えば、どうして私の事を、いつまでも様を付けて呼ぶんだ? 付けなくていいと、言ってるのに」
「だって、あの王妃と同じ呼び方は、嫌だから」
「アリーチェ……。それなら、他の者がいない2人きりの時は、アリーチェしか呼んだことの無い、リックと呼べばいい」
「本当っ! いいの?」
「ああ、妻だけ特別に許可する」
「キャッ、もう、カーテンの事は気にしてないって言ったのに優しいんだから、リック」
「いつまで2人を見ていればいいんですか? フレデリック王太子様は、いい加減アリーチェ様を離してくれませんか! このまま、淫らな事が、もう一度始まるんじゃないかと、目のやり場に困ります。そのせいで、若いカレンは嫌がって、アリーチェ様の担当から外れたんですよ。――もう、いい加減起きてください。とっくに朝の準備は出来ていますよ!」
朝食の準備が出来た事を、クロエは伝えに来ていたけど、わたしは全然気が付いていなかった。恥ずかし過ぎて、耳がカァーッと熱くなる。
「違うわクロエ。淫らな事じゃなくて、後継者を作ると言う、立派な仕事だわ。だって、そう習ったもの」
「真面目な顔して何を言ってるんですか? ふざけてないで、いいから早く起きてください」
朝から浮かれている気持ちと、クロエに何をしてたのか、見透かされたことを誤魔化した。
そして、クロエからタオルを被せられ、その横を走って洗面所へ向かう。
****
「ちょっといいか、今日のアリーチェの担当は、クロエだけか?」
「そうですけど」
朝の目覚め。
わたしの頭を撫でる、掌から伝わる愛情と、重なる唇の熱を感じる。
幸せな1日の始まりに、にんまりしてしまう。
だけど、わたしが目を開くのには、相当に時間がかかってるんだと思う。
ぼんやりと覚醒しかけている意識の中で、フレデリック様の唇が、頬や額のいたるところを、くすぐっていた感覚が残っている。
うっすらと私が目を開ければ、嬉しそうなフレデリック様は、待ってたと言わんばかりに、深いキスをする。
目覚めたばかりのわたしとは対照的に、フレデリック様の体は、大分火照って、色のある声を出す。
「目覚めのキスだけじゃ、アリーチェが全然足りないんだ。今日1日アリーチェと離れて頑張る為に、可愛い声が聴きたいけど、いい?」
「そんな事言われたら、うんって言うしかないでしょう」
本当は、フレデリック様が、そう言ってくれないとガッカリする癖に、照れくさいわたしは、少し遠回しに返事をする。
痛くて泣いたのは、なんだったのか? 今では、快感が欲しくて、フレデリック様の背中に腕を回す。
よく分からなくて恥ずかしかった声は、今も我慢できる訳がないけど、そんな事はすっかり気にしていない。
フレデリック様は、いつもわたしを真っ直ぐ見て、大袈裟な程に気持ちを伝えてくれる。
「アリーチェが喜ぶなら、私に出来る事なら何でもする。アリーチェが幸せなら、それ以上に私は幸せだから」
フレデリック様が少しの躊躇いも無く、わたしに愛情を注いでくれるから、朝からあっと言う間にご機嫌になる。
わたしって、なんて単純な性格なんだろうと、思う時もあるけど、わたしの気持ちをこんなに動かすのは、フレデリック様だけだから。
「わたしも、フレデリック様の為なら何でも…………」
「アリーチェは、駄目。私の為には何もしなくていい。だって、私に甘えてるのが、一番可愛いから」
わたしが自然体で身を任せられるフレデリック様の事を、知れば知るほど好きになっていく。
熱を感じて、ぐったりしているわたし。
そんなわたしを、フレデリック様が、抱きしめてくれるこの時間が、実は1番好きな時間だったりしている。
少しでも長く触れ合っていたくて、わたしは甘えて、いっぱいお話ししている。
「フレデリック様って、こうしている時が1番、嬉しそうな顔をしてますよね」
「ああ、この時間だけは、アリーチェの体も心も、頭の中まで独占出来るだろう。アリーチェが、他の男の事を少しも考えていないのは、私と繋がってる時と、こうして私の腕の中にいる時だけだから。私は、妻を1人占めしたくて堪らない、気の小さい男なんだ」
「ふふ、わたしは、浮気なんてしませんよ。だってフレデリック様の腕の中が1番幸せだもん」
「う、浮気っ! そんなの駄目だ。無理、無理、耐えられない」
「ふふっ、そんな事になったら、わたし直ぐに城から追い出されそうですね」
「いや、追い出す訳ない。アリーチェが、傍に居ない方が耐えられない」
フレデリック様は、何を想像したのか、目が潤んでしまった。真面目なフレデリック様に、冗談を言うのは、もう辞めた方がいいかも知れない。
「フレデリック様ってば、心配し過ぎですよ。ふふっ」
「そう言えば、どうして私の事を、いつまでも様を付けて呼ぶんだ? 付けなくていいと、言ってるのに」
「だって、あの王妃と同じ呼び方は、嫌だから」
「アリーチェ……。それなら、他の者がいない2人きりの時は、アリーチェしか呼んだことの無い、リックと呼べばいい」
「本当っ! いいの?」
「ああ、妻だけ特別に許可する」
「キャッ、もう、カーテンの事は気にしてないって言ったのに優しいんだから、リック」
「いつまで2人を見ていればいいんですか? フレデリック王太子様は、いい加減アリーチェ様を離してくれませんか! このまま、淫らな事が、もう一度始まるんじゃないかと、目のやり場に困ります。そのせいで、若いカレンは嫌がって、アリーチェ様の担当から外れたんですよ。――もう、いい加減起きてください。とっくに朝の準備は出来ていますよ!」
朝食の準備が出来た事を、クロエは伝えに来ていたけど、わたしは全然気が付いていなかった。恥ずかし過ぎて、耳がカァーッと熱くなる。
「違うわクロエ。淫らな事じゃなくて、後継者を作ると言う、立派な仕事だわ。だって、そう習ったもの」
「真面目な顔して何を言ってるんですか? ふざけてないで、いいから早く起きてください」
朝から浮かれている気持ちと、クロエに何をしてたのか、見透かされたことを誤魔化した。
そして、クロエからタオルを被せられ、その横を走って洗面所へ向かう。
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「ちょっといいか、今日のアリーチェの担当は、クロエだけか?」
「そうですけど」
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