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第4章 夢の実現へ
誕生日のサプライズ②
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【SIDE アリーチェ】
「マックス、わたし王都の外れの屋敷へ行って来るわ。じゃ」
「きょ、今日ですか? 僕は今日忙しいんです。明日、王太子と一緒に出掛けるんじゃないんですか? ……明日じゃ駄目ですか」
「だって、フレデリック様が視察で居ないんだもの、サプライズは、居ない時が準備しやすいじゃない」
「って、1人で行く気じゃないでしょうね、駄目ですよ」
「安心して。今日はトミー事務官と一緒に、学校の準備をしてくるの。1人じゃないわ。行ってきま~す」
そう言って、マックスの前から速足で立ち去ってきた。
これ以上マックスと話せば、あの子にはバレてしまうもの、「待ってください姉上」なんて言われる前に逃げて来てやった。
いつも細かい事に煩いマックスに、してやったわ。
こうなれば、わたしの勝ちよ。
今日は、トミー事務官に頼んで、馬車の用意をしてもらったし、準備万端なのよ。
ふふふっ、明日はマックスの誕生日だから、サプライズだもん。
今回ばかりは一緒に来られると困るから。
わたしだって、やれば出来るわ。
「おまたせ~……。あれ、ミカエル殿下、どうしたんですか?」
「トミー事務官が、僕の借りている屋敷の隣へ行くって話で、同乗しようと思ったんだ。迷惑だったかな?」
「い、いえ、迷惑とか、そうではないですが……。ミカエル殿下のお帰りは、わたしの時間と合うかな、なんて考えてました。えーと、そう、別に馬車を用意した方がいいと思いますよ」
「気にしないで。忘れ物を取りに行くだけだし。それに聞いたよ、学校の準備をするんだって、それなら僕も手伝うから」
どうしていいか分からず、ちらっとトミー事務官に視線を向けた。
だけど、相変わらずハンカチで頭の汗を拭いていて、ミカエル殿下の申し出を断れなっかたのだと察してしまう。これじゃあ、何にも言えないか。
でも、困ったなぁ……。
帰りにワーグナーの屋敷へ寄りたかったのに。まあ、最後になんとかするか。
「分かりました。一緒に行っちゃいましょう」
****
「ねえ、見て凄いでしょう。机も届いたし、このホールなら50人は入るわよ」
「アリーチェ様、走ったら危ないですよ。古い屋敷の床板は、小さな段差がありますから気をつけてください」
「大丈夫、それくらいで転んだりしないわ。2人で机を並べれば直ぐに終わるわね。あ~、どうやって生徒を集めようかしら」
「それなら、マックス様に依頼するのが良いですよ。国中に情報を流すのが得意なお方ですから。私からマックス様にお願いしておきますね」
信じられない。
どうしてわたし達姉弟は、全然似てないんだろう。
全く同じ環境で過ごして来たのに、わたしは、どうやったら声をかけられるのか? そんな事も分かってないし、出来ないのに、……何でだろう。
そう思って、少しどんよりとしていると、ミカエル殿下が入って来た。そして、わたしの目も前まで来てから話し始めた。
「アリーチェ妃は、ここに居たんだね。アリーチェ妃の誕生日って明日でしょう。実は誕生日のプレゼントを用意してたんだ。少し部屋にも飾りつけをしてきたから、僕の借りてる屋敷に来てよ」
そう言って、わたしの右手をとった。
……困る。
わたしの為に準備したって、どういう事? そんな事されても、嬉しくない。
それに、この誘いに応じてはいけないと、……胸騒ぎがする。
断れば、ミカエル殿下の好意を無下にすることになる。
これをどうやって遠慮するべきか、分からない。
助けてもらいたくて、トミー事務官を見て、問いかけた。
「いや、わたし、ここの準備があるから。ねっ、トミー事務官」
いつも、まるで父のように気にかけてくれるトミー事務官なら、きっと引き留めてくれる。だから大丈夫よ、落ち着いて。
「是非、行って来てください。ここの準備は私1人で出来ますから」
どうして……。そんな事言うの……。気づいてよ……。
「ほら、事務官もああ言ってるし、行こう」
頭の中で、これまでのミカエル殿下の言動や行動から、はじき出す結果はどうやっても「危険」としか出てこない。
それに、わたしの五感でさえ、「やめろ」と警告してる。
そうだ、貰う義理の無いプレゼントをくれるという誘いは、乗ってはいけないと、ファウラーが教えてくれた。
「いっ、いえ、わたし、プレゼントを貰うような事はしてないし、わざわざ屋敷に行かなくても」
「僕の公務をアリーチェ妃がやってくれたって聞いたよ。実は、母の事があってから、眠れないし落ち込んでたんだ。中々、公務も手につかなくて、参ってた。アリーチェ妃の窓から見た景色も、母との想い出の場所だった……。この前、僕の願いを聞いてくれたんだから、今日は僕にお祝いをさせてよ。明日の誕生日当日は、兄が用意してるんでしょう」
ミカエル殿下の、この話は本当なのか……。
「分かりました。トミー事務官、わたしミカエル殿下と一緒に行ってくるから、準備をお願いね」
今日は部屋に仕掛ける何かを見つけるのとは違う。
だから、ついて行く必要はないのに……、断り切れなかった。
ミカエル殿下と2人きりなんて怖い……。
だけど、参ってるなんて言われたら、見過ごせないじゃない。
「マックス、わたし王都の外れの屋敷へ行って来るわ。じゃ」
「きょ、今日ですか? 僕は今日忙しいんです。明日、王太子と一緒に出掛けるんじゃないんですか? ……明日じゃ駄目ですか」
「だって、フレデリック様が視察で居ないんだもの、サプライズは、居ない時が準備しやすいじゃない」
「って、1人で行く気じゃないでしょうね、駄目ですよ」
「安心して。今日はトミー事務官と一緒に、学校の準備をしてくるの。1人じゃないわ。行ってきま~す」
そう言って、マックスの前から速足で立ち去ってきた。
これ以上マックスと話せば、あの子にはバレてしまうもの、「待ってください姉上」なんて言われる前に逃げて来てやった。
いつも細かい事に煩いマックスに、してやったわ。
こうなれば、わたしの勝ちよ。
今日は、トミー事務官に頼んで、馬車の用意をしてもらったし、準備万端なのよ。
ふふふっ、明日はマックスの誕生日だから、サプライズだもん。
今回ばかりは一緒に来られると困るから。
わたしだって、やれば出来るわ。
「おまたせ~……。あれ、ミカエル殿下、どうしたんですか?」
「トミー事務官が、僕の借りている屋敷の隣へ行くって話で、同乗しようと思ったんだ。迷惑だったかな?」
「い、いえ、迷惑とか、そうではないですが……。ミカエル殿下のお帰りは、わたしの時間と合うかな、なんて考えてました。えーと、そう、別に馬車を用意した方がいいと思いますよ」
「気にしないで。忘れ物を取りに行くだけだし。それに聞いたよ、学校の準備をするんだって、それなら僕も手伝うから」
どうしていいか分からず、ちらっとトミー事務官に視線を向けた。
だけど、相変わらずハンカチで頭の汗を拭いていて、ミカエル殿下の申し出を断れなっかたのだと察してしまう。これじゃあ、何にも言えないか。
でも、困ったなぁ……。
帰りにワーグナーの屋敷へ寄りたかったのに。まあ、最後になんとかするか。
「分かりました。一緒に行っちゃいましょう」
****
「ねえ、見て凄いでしょう。机も届いたし、このホールなら50人は入るわよ」
「アリーチェ様、走ったら危ないですよ。古い屋敷の床板は、小さな段差がありますから気をつけてください」
「大丈夫、それくらいで転んだりしないわ。2人で机を並べれば直ぐに終わるわね。あ~、どうやって生徒を集めようかしら」
「それなら、マックス様に依頼するのが良いですよ。国中に情報を流すのが得意なお方ですから。私からマックス様にお願いしておきますね」
信じられない。
どうしてわたし達姉弟は、全然似てないんだろう。
全く同じ環境で過ごして来たのに、わたしは、どうやったら声をかけられるのか? そんな事も分かってないし、出来ないのに、……何でだろう。
そう思って、少しどんよりとしていると、ミカエル殿下が入って来た。そして、わたしの目も前まで来てから話し始めた。
「アリーチェ妃は、ここに居たんだね。アリーチェ妃の誕生日って明日でしょう。実は誕生日のプレゼントを用意してたんだ。少し部屋にも飾りつけをしてきたから、僕の借りてる屋敷に来てよ」
そう言って、わたしの右手をとった。
……困る。
わたしの為に準備したって、どういう事? そんな事されても、嬉しくない。
それに、この誘いに応じてはいけないと、……胸騒ぎがする。
断れば、ミカエル殿下の好意を無下にすることになる。
これをどうやって遠慮するべきか、分からない。
助けてもらいたくて、トミー事務官を見て、問いかけた。
「いや、わたし、ここの準備があるから。ねっ、トミー事務官」
いつも、まるで父のように気にかけてくれるトミー事務官なら、きっと引き留めてくれる。だから大丈夫よ、落ち着いて。
「是非、行って来てください。ここの準備は私1人で出来ますから」
どうして……。そんな事言うの……。気づいてよ……。
「ほら、事務官もああ言ってるし、行こう」
頭の中で、これまでのミカエル殿下の言動や行動から、はじき出す結果はどうやっても「危険」としか出てこない。
それに、わたしの五感でさえ、「やめろ」と警告してる。
そうだ、貰う義理の無いプレゼントをくれるという誘いは、乗ってはいけないと、ファウラーが教えてくれた。
「いっ、いえ、わたし、プレゼントを貰うような事はしてないし、わざわざ屋敷に行かなくても」
「僕の公務をアリーチェ妃がやってくれたって聞いたよ。実は、母の事があってから、眠れないし落ち込んでたんだ。中々、公務も手につかなくて、参ってた。アリーチェ妃の窓から見た景色も、母との想い出の場所だった……。この前、僕の願いを聞いてくれたんだから、今日は僕にお祝いをさせてよ。明日の誕生日当日は、兄が用意してるんでしょう」
ミカエル殿下の、この話は本当なのか……。
「分かりました。トミー事務官、わたしミカエル殿下と一緒に行ってくるから、準備をお願いね」
今日は部屋に仕掛ける何かを見つけるのとは違う。
だから、ついて行く必要はないのに……、断り切れなかった。
ミカエル殿下と2人きりなんて怖い……。
だけど、参ってるなんて言われたら、見過ごせないじゃない。
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