封印された魔王を解放してしまいましたが、私が何とかしますので放っといてください〜奇跡の力を持つ1人の女性は、2人の王子から愛を捧げられる〜
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
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「これまで俺が魔力を分けて生活してきた人間ども。……俺が丹精込めて作り上げてきたものを……あの子への贈り物を奪うなんて……、許さない!! 誰が奪いやがった? そんな種族は滅んでしまえば良い。この俺に売った喧嘩は何十倍にして返してやる!」
魔王が怒り狂った声を上げた――――!
****
今から500年前、ノマーン王国は、多くの魔物が生息していた。その全ての魔物達を魔王が統括していた。
怒り狂った魔王の命令を受けて、王国内の至る所で、人の暮らしに襲いかかる魔物達。
魔物の大群を抑え込むには、王都の騎士団だけでは、もはや間に合っていなかった。
自分たちの住む町や村は、幼い子どもでも攻撃魔法や防御魔法を使えれば、参戦するほどの極限状態になりつつあった。
襲撃してくる魔物へ、ファイヤーボールやサンダー、アイスランスなど、出せる技を駆使して、魔物達を撃退していた。
人間達が、この地に漂う魔力を魔法に変えるには、相当の体力が必要となる。
戦いが起きれば、体力のない子どもたちから、戦線を離脱して身を隠した。
魔物達は己の核にダメージを受けない限り、受けた傷はゆっくり時間をかけて蘇生される。
人間たちは、襲い来る魔物達を撃退するのみで仕留めることはできなかった。
****
精霊や魔力による不思議な力を使えたその時代であっても、規格外ともいえる膨大な力を駆使していたミレーは、人々から聖女様と呼ばれていた。
強大な力の魔王を制圧するために、聖女様は動くしかなかった。
「自分がやるしかない……か……」
聖女様自身が望んだわけではなかったが、そうするしかなかった。
聖女様にしか制圧できないと判断した国王から、魔王制圧の要請を受けてしまった。
「でも、魔王には何かあるように感じる……」
人間より遥かに長い寿命を持つ魔王。その魔王が、魔物を指揮してノマーン王国の人々を襲うようになったのは、ここ数年だった。
聖女様にとっても、魔王の突然の変化の理由がわからなかった。
魔力の探知に敏感な聖女様は、幼いころから、魔王の魔力を身近に感じていた。
その魔力に悪意や害意を感じたことは無かったから。
魔王を制圧する以外の方法を思案していた。
****
ノマーン王国では、家族の命や生きるための家畜や財産を失い、生きる希望を失った人の叫びや奇声も、日常の風景となりつつあった。
人々の生活はもう限界だった。
願わくば避けたいところだが、聖女様は国中の人々から、魔王の制圧を懇願され、魔王に立ち向かうことになった。
聖女様の白く美しい髪はまるでパールのような輝きがあり、青い瞳に、美しく整った顔立ち。
華奢な体のどこに膨大な力が秘められているのか? 炎を噴いて町を破壊する上位の魔物である竜を、一撃で倒せるものは、聖女様の他にはいなかった。
的確な観察力で、その魔物にとっての弱点を一瞬で見抜き、耐性の弱い系統魔法を、効果的な形で正確に撃ち込むことができた。
余計な攻撃がないので、無駄な体力を抑えて戦闘ができる聖女様は、たった一人で、隊長が率いる王都の騎士団をはるかに上回っていた。
****
魔王の元へ1人で向かった聖女様。
魔王との対戦には決着がつかず、5回も夜明けを一緒に過ごしていた。
魔王は聖女との戦いを遊びのように楽しんでいた。決定的な攻撃はせずに、攻撃を躱すだけ。時々笑みをも浮かべてた。
「おまえは、しつこいなぁ。もう諦めろ!」
「……うっ、んっ」
「人間が、魔族の王に、敵うはずあるまい」
「……あなたこそ……魔物に人を襲わせるのは……もう……辞めて」
「人間が愚かだから悪いのだ」
「なぜ……そこまで……人を……恨むの?」
「……お前には、関係ない」
「関係あ……るっ……」
余裕の魔王とは反対に、聖女様の体力は限界であった。
「あなたが、人を襲わせるから……もう、こうするしかなくなった……」
「何者かが俺の大切なものを奪ったのだ! 見つけ出すまで絶対に許さない!」
「……何を……奪ったの? ……わたしも…一緒に探すか……ら……もう」
「っ! うるさいっ! お前の手など借りるわけがなかろう! 馬鹿にしてるのか?」
「っそっっ、なんじゃな……」
何度目か分からない同じ掛け合い。
聖女様は、魔王が魔物達に人間達を襲わせる理由を問い続けて、魔王に説得を試み続けていた。
双方の力をぶつけ合い、互いの力を拮抗させて、両手を掴みあっていた。
聖女様の体力は、限界を超えていたが、ここで引くわけにはいかない。
ここで引いたら、また、これからも魔王は魔物を操り人々を襲うだろうから。
赤紫の空に朝日がまぶしく輝く。この瞬間、聖女様の頬を伝う一筋の涙を見たもの。
それは、おそらく魔王一人だけ。
涙する……その気持ちを知るものは誰もいなかった。
「……一緒に、私……時間を過ご…… 、無理だけど……ごめ……」
小さすぎる、この声も誰の耳にも届きはしなかった。
魔王には聞こえたのか……、それはわからないが、表情は少しも変わることはない。
「……ストーン……これで、ずっと、い……」
聖女様の最後の言葉が、静かに空気に溶けていく。
その瞬間、掴み合っていた、双方の手から石化が始まる。
じわじわと、魔王の腕から肩、頭の先、最後には、足の先まで、完全に石となって固まって――――、魔王が封じ込められた。
ただ、それよりも先に、体の小さい聖女様のほうが、完全に石となっていた―――――。
****
聖女と呼ばれていても、私は所詮は人間なのよ。だから、魔王になど、敵うはずはないでしょうね。
戦う前からそんなことは承知のことなのに。
唯一、魔王を抑えられる方法……それは、魔王と共に石になることしか思いつかない。
国中の人々の命や生活を護るためには、始めからこれしかないと思っていたけど、決断するのには、時間がかかってしまった。
これだけ近くにいたことで、この国に漂う魔力の根源はやはり魔王なのだと確信している。
魔王が封印されたら……、人間達が使っている生活魔法も使えなくなるでしょうね。この国の生活は、大半を魔法に頼っているのに。
あー世界が変わってしまう。
魔王を説得できなければ、人間に残された生き方は2つ。
これからも魔物に襲われて暮らすか、魔法を失って不便な暮らしをするか。
王族が、魔王の討伐を願ったのだから、私は最後の魔法を使う決断をした。
****
そして、聖女様が成しえたことは、すぐに王国全土に影響した。
統制するものがいなくなったことで、魔物達の攻撃は直ぐに収まった。
魔王の指示がなければ、魔物達は元々暮らしていた森の奥に生活を移していた。
それと同時に、ノマーン王国を覆っていた魔力も無くなった。
これまで、人間達が自由に使っていた魔法を使えなくなった。
魔法が無い生活など、誰も想像していなかったのだから、酷い混乱だった。
生活の大半を魔法に依存していた人々。始めは火を起こすだけで大騒ぎとなった。
魔王の封印によって、新しい生活や文明が始まった。
石化した人間は、石化を解く魔法をかける者がいれば、助けることもできる。
だが、その魔法を使えるものは、もうこの世界にはいなかった。
魔王封印から500年もの歳月を経て、膨大な力を持つ伯爵令嬢が、封印された魔王を復活させてしまう。
人間達が魔王の力に抗う歴史が始まる。
。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *
本作を読んでいただき、ありがとうございます。
次話から、恋愛冒険ファンタジーの舞台へと、大きく変わります。
感想、ブックマーク をいただけると、
今後の創作の励みになりますので、是非、応援お願いします。
魔王が怒り狂った声を上げた――――!
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今から500年前、ノマーン王国は、多くの魔物が生息していた。その全ての魔物達を魔王が統括していた。
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魔物の大群を抑え込むには、王都の騎士団だけでは、もはや間に合っていなかった。
自分たちの住む町や村は、幼い子どもでも攻撃魔法や防御魔法を使えれば、参戦するほどの極限状態になりつつあった。
襲撃してくる魔物へ、ファイヤーボールやサンダー、アイスランスなど、出せる技を駆使して、魔物達を撃退していた。
人間達が、この地に漂う魔力を魔法に変えるには、相当の体力が必要となる。
戦いが起きれば、体力のない子どもたちから、戦線を離脱して身を隠した。
魔物達は己の核にダメージを受けない限り、受けた傷はゆっくり時間をかけて蘇生される。
人間たちは、襲い来る魔物達を撃退するのみで仕留めることはできなかった。
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精霊や魔力による不思議な力を使えたその時代であっても、規格外ともいえる膨大な力を駆使していたミレーは、人々から聖女様と呼ばれていた。
強大な力の魔王を制圧するために、聖女様は動くしかなかった。
「自分がやるしかない……か……」
聖女様自身が望んだわけではなかったが、そうするしかなかった。
聖女様にしか制圧できないと判断した国王から、魔王制圧の要請を受けてしまった。
「でも、魔王には何かあるように感じる……」
人間より遥かに長い寿命を持つ魔王。その魔王が、魔物を指揮してノマーン王国の人々を襲うようになったのは、ここ数年だった。
聖女様にとっても、魔王の突然の変化の理由がわからなかった。
魔力の探知に敏感な聖女様は、幼いころから、魔王の魔力を身近に感じていた。
その魔力に悪意や害意を感じたことは無かったから。
魔王を制圧する以外の方法を思案していた。
****
ノマーン王国では、家族の命や生きるための家畜や財産を失い、生きる希望を失った人の叫びや奇声も、日常の風景となりつつあった。
人々の生活はもう限界だった。
願わくば避けたいところだが、聖女様は国中の人々から、魔王の制圧を懇願され、魔王に立ち向かうことになった。
聖女様の白く美しい髪はまるでパールのような輝きがあり、青い瞳に、美しく整った顔立ち。
華奢な体のどこに膨大な力が秘められているのか? 炎を噴いて町を破壊する上位の魔物である竜を、一撃で倒せるものは、聖女様の他にはいなかった。
的確な観察力で、その魔物にとっての弱点を一瞬で見抜き、耐性の弱い系統魔法を、効果的な形で正確に撃ち込むことができた。
余計な攻撃がないので、無駄な体力を抑えて戦闘ができる聖女様は、たった一人で、隊長が率いる王都の騎士団をはるかに上回っていた。
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魔王の元へ1人で向かった聖女様。
魔王との対戦には決着がつかず、5回も夜明けを一緒に過ごしていた。
魔王は聖女との戦いを遊びのように楽しんでいた。決定的な攻撃はせずに、攻撃を躱すだけ。時々笑みをも浮かべてた。
「おまえは、しつこいなぁ。もう諦めろ!」
「……うっ、んっ」
「人間が、魔族の王に、敵うはずあるまい」
「……あなたこそ……魔物に人を襲わせるのは……もう……辞めて」
「人間が愚かだから悪いのだ」
「なぜ……そこまで……人を……恨むの?」
「……お前には、関係ない」
「関係あ……るっ……」
余裕の魔王とは反対に、聖女様の体力は限界であった。
「あなたが、人を襲わせるから……もう、こうするしかなくなった……」
「何者かが俺の大切なものを奪ったのだ! 見つけ出すまで絶対に許さない!」
「……何を……奪ったの? ……わたしも…一緒に探すか……ら……もう」
「っ! うるさいっ! お前の手など借りるわけがなかろう! 馬鹿にしてるのか?」
「っそっっ、なんじゃな……」
何度目か分からない同じ掛け合い。
聖女様は、魔王が魔物達に人間達を襲わせる理由を問い続けて、魔王に説得を試み続けていた。
双方の力をぶつけ合い、互いの力を拮抗させて、両手を掴みあっていた。
聖女様の体力は、限界を超えていたが、ここで引くわけにはいかない。
ここで引いたら、また、これからも魔王は魔物を操り人々を襲うだろうから。
赤紫の空に朝日がまぶしく輝く。この瞬間、聖女様の頬を伝う一筋の涙を見たもの。
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魔王には聞こえたのか……、それはわからないが、表情は少しも変わることはない。
「……ストーン……これで、ずっと、い……」
聖女様の最後の言葉が、静かに空気に溶けていく。
その瞬間、掴み合っていた、双方の手から石化が始まる。
じわじわと、魔王の腕から肩、頭の先、最後には、足の先まで、完全に石となって固まって――――、魔王が封じ込められた。
ただ、それよりも先に、体の小さい聖女様のほうが、完全に石となっていた―――――。
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聖女と呼ばれていても、私は所詮は人間なのよ。だから、魔王になど、敵うはずはないでしょうね。
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魔王が封印されたら……、人間達が使っている生活魔法も使えなくなるでしょうね。この国の生活は、大半を魔法に頼っているのに。
あー世界が変わってしまう。
魔王を説得できなければ、人間に残された生き方は2つ。
これからも魔物に襲われて暮らすか、魔法を失って不便な暮らしをするか。
王族が、魔王の討伐を願ったのだから、私は最後の魔法を使う決断をした。
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そして、聖女様が成しえたことは、すぐに王国全土に影響した。
統制するものがいなくなったことで、魔物達の攻撃は直ぐに収まった。
魔王の指示がなければ、魔物達は元々暮らしていた森の奥に生活を移していた。
それと同時に、ノマーン王国を覆っていた魔力も無くなった。
これまで、人間達が自由に使っていた魔法を使えなくなった。
魔法が無い生活など、誰も想像していなかったのだから、酷い混乱だった。
生活の大半を魔法に依存していた人々。始めは火を起こすだけで大騒ぎとなった。
魔王の封印によって、新しい生活や文明が始まった。
石化した人間は、石化を解く魔法をかける者がいれば、助けることもできる。
だが、その魔法を使えるものは、もうこの世界にはいなかった。
魔王封印から500年もの歳月を経て、膨大な力を持つ伯爵令嬢が、封印された魔王を復活させてしまう。
人間達が魔王の力に抗う歴史が始まる。
。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *
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