封印された魔王を解放してしまいましたが、私が何とかしますので放っといてください〜奇跡の力を持つ1人の女性は、2人の王子から愛を捧げられる〜
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
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序章 日の目をみない「奇跡の力」と憂鬱
カールディン王子とリディの出会い
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私は、領地から馬車で4日もかけて、王都にある邸へ、家族3人で向かっている。
王都の雰囲気は賑やかすぎて、田舎の領地に慣れている私には少し苦手。
土の匂いや花の匂い、鳥の声や川の流れる音を感じていた馬車の中は、町に入ってからは、香辛料や肉の焼ける刺激的な匂いに変わって、人の声が馬車の中にまで響いている。もう既に、帰りたくてしょうがない。
「あー、早く領地のお家に帰りたいなぁ」
「ははは、まだ、邸にも着いていないじゃないか。帰るのは殿下の誕生日をお祝いしてからだぞ」
父も顔では同感と、笑っているくせに!
「早く済ませて、帰りましょうね。でもっ、ハンズ達に会えるのは嬉しいわぁ。みんな元気かしらぁ」
「ハンズも、リディには甘いから、王都の珍しいお菓子をたくさん用意しているはずだ」
「今日は何かなー。領地に帰ったら、なかなか食べれないから、1年分位食べ溜めておかないと!」
「……。止めておきなさい」
当主のお父様は、権力には興味も無いのに、領地経営の手腕は王国の5本の指に入るほどと言われている。
気候には恵まれていないけど、その気候に合った作物を選んで、農民たちと土壌の研究もしている。
畑や家畜にとって重要な、水の確保は、全ての地域に水路の整備が行き届いていて、肥料への還元もできる下水路の整備もされているから、周辺の領地と比べても、圧倒的に豊かな生活水準を保っていると、よく遊びに行く加工場の人たちが教えてくれる。農家のおじさんや町の人たちが色んな事を教えてくれるから、自然と色んな知識がついて、とっても助かっている。
だけど、貴族のマナーというものは、聞く機会はないから、……さっぱりだけど。
まぁ、周りの真似をして過ごしていれば、なんとかなるはず。
両親は、私の見た目の事を気にしているけど、大丈夫よ。だって、皆は、おとぎ話だと思っているんだから。
****
質素な王都の伯爵邸では、いつもの顔ぶれが私たちを出迎えてくれる。
「旦那様、奥様、お嬢様、お帰りなさいませ。長旅に、さぞお疲れのことでしょう」
「ただいまー。ハンズ大好き!」
優しく微笑む執事に、言葉よりも先に抱き着いてしまう。
「おやおや、久しぶりですのに、変わっていませんね。かわいらしいお嬢様は、ますます美しく輝いてきましたね」
「そうかしら? それより、私のお楽しみは?」
「お茶を用意しておりますので、お寛ぎできる服に着替えて、お待ちください」
「はーい。おやつはたくさんお願いね!」
「お嬢様……」
促されるまま、素直に寛いで、明日のパーティーのことなんて、少しも気にしていない。
****
私は日ごろ着慣れないドレスを着て、両親に挟まれて王城の大広間で、早く庭に行きたいのを、わくわくしながら待っている。
たぶん私以外の、この場にいる人達は、上階に登場する王族を待っているんでしょうね。みんなで、同じ場所を見上げていて、ちょっと気持ち悪い。
周囲に緊張感が広り、王族達が入って来た! やっと始まった! 早くっ! 早くっ!
国王に王妃、主役の第1王子、13歳の第1王女、8歳の第2王子、6歳の第3王子、第2王女はここにはいないみたいね。
王様が挨拶をしてるけど、偉い人の挨拶って、面白くないわね――。
あー、やっと、つまらない挨拶が終わったから、もう、この場所にいなくても大丈夫ね。両親へ庭園の植物を見に行くことを告げたことだし、よし、行こう!
王族へ挨拶に向かう貴族達の流れに逆らって歩く。
もう、ぶつかってこないでよ。ぅうーん、ドレスが引っかかって歩きにくい――。
はぁー疲れた……、やっと出口にたどり着けた。
「あー、空の下はやっぱり気持ちいい!」
綺麗に整備された庭を探索することだけが、この日の唯一の楽しみで、領地では見ることのない植物を探し始め、楽しい気分だったのに、少し上ずった声が、私の後ろから聞こえて、振り返る。
「そっ、そこの君、名前は?」
――――っ!?
驚きと、困惑で瞬時に下を向く。
えっ、どうしてこんなところにカールディン王子がいるの?
今、貴族達が向かって行った先にいるはずでしょう? なんで庭園にいるのよ!
「顔を上げてっ。名前は?」
「シェルブール伯爵家のリディアンヌと申します。カールディン殿下におかれましては、本日は、誠におめでとうございます」
とりあえず、淑女の礼をとってみる。
この後はどうしたらいいんだろう? もう、立ち去ってもいいかしら?
「やっぱり、あの聖女様の生家、シェルブール伯爵家の令嬢だったのか! その……髪が……、あまりにも輝いていて目が離せなかった。僕は君と仲良くなりたいんだ。庭園を見たいのであれば、僕が案内しよう」
心から不要な提案を、きっぱり断りたいのを堪えて、貴族らしく回りくどい言い方で断ってみるか。
「寛大なお気遣い感謝申し上げます。ただ、カールディン殿下の手を煩わせるわけにはいきません。ましてや、今日の主役である殿下のことを、皆が待っておりますので……私は一人で大丈夫です」
「いや、王族専用の庭園は広いから、警備の目が届かない所もあるはずだ。可愛い令嬢が一人でいるのは良くない。何より、僕はこの庭園をよく知っているから、誰よりも案内に適している」
「……」
何なの? この子どもみたいな王子はっ! 話を聞いてよぉ! 断っているのに、勝手に話を進めないで!
絶対に、案内に適切なのはあなたではないでしょう。
あなたは今日の主役ですよ?
わかっていますか!?
「リディアンヌ嬢……。僕は君の姿を見て、浮かれてしまった。少しでいいので、一緒に散策をしてほしい」
嫌がる私に構う訳もなく、王子は距離を詰めてくる。
ぬけぬけと不可解な事を言うカールディン王子のことを、駄目だと思いながらも、怪訝な顔で見てしまう。
気持ち悪い言動の連続に、すっかり引いてしまった。
.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆.。.:*.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆.。.:*
第3話を読んで、いただきありがとうございます。
一方的なカールディン王子とリディの出会い。
この気持ちがどうなるのか……
是非、追いかけていただけると嬉しいです(*ᴗˬᴗ)
感想、ブックマーク を
付けていただけると、大変励みになります。
応援よろしくお願いします。とっても喜びます。
王都の雰囲気は賑やかすぎて、田舎の領地に慣れている私には少し苦手。
土の匂いや花の匂い、鳥の声や川の流れる音を感じていた馬車の中は、町に入ってからは、香辛料や肉の焼ける刺激的な匂いに変わって、人の声が馬車の中にまで響いている。もう既に、帰りたくてしょうがない。
「あー、早く領地のお家に帰りたいなぁ」
「ははは、まだ、邸にも着いていないじゃないか。帰るのは殿下の誕生日をお祝いしてからだぞ」
父も顔では同感と、笑っているくせに!
「早く済ませて、帰りましょうね。でもっ、ハンズ達に会えるのは嬉しいわぁ。みんな元気かしらぁ」
「ハンズも、リディには甘いから、王都の珍しいお菓子をたくさん用意しているはずだ」
「今日は何かなー。領地に帰ったら、なかなか食べれないから、1年分位食べ溜めておかないと!」
「……。止めておきなさい」
当主のお父様は、権力には興味も無いのに、領地経営の手腕は王国の5本の指に入るほどと言われている。
気候には恵まれていないけど、その気候に合った作物を選んで、農民たちと土壌の研究もしている。
畑や家畜にとって重要な、水の確保は、全ての地域に水路の整備が行き届いていて、肥料への還元もできる下水路の整備もされているから、周辺の領地と比べても、圧倒的に豊かな生活水準を保っていると、よく遊びに行く加工場の人たちが教えてくれる。農家のおじさんや町の人たちが色んな事を教えてくれるから、自然と色んな知識がついて、とっても助かっている。
だけど、貴族のマナーというものは、聞く機会はないから、……さっぱりだけど。
まぁ、周りの真似をして過ごしていれば、なんとかなるはず。
両親は、私の見た目の事を気にしているけど、大丈夫よ。だって、皆は、おとぎ話だと思っているんだから。
****
質素な王都の伯爵邸では、いつもの顔ぶれが私たちを出迎えてくれる。
「旦那様、奥様、お嬢様、お帰りなさいませ。長旅に、さぞお疲れのことでしょう」
「ただいまー。ハンズ大好き!」
優しく微笑む執事に、言葉よりも先に抱き着いてしまう。
「おやおや、久しぶりですのに、変わっていませんね。かわいらしいお嬢様は、ますます美しく輝いてきましたね」
「そうかしら? それより、私のお楽しみは?」
「お茶を用意しておりますので、お寛ぎできる服に着替えて、お待ちください」
「はーい。おやつはたくさんお願いね!」
「お嬢様……」
促されるまま、素直に寛いで、明日のパーティーのことなんて、少しも気にしていない。
****
私は日ごろ着慣れないドレスを着て、両親に挟まれて王城の大広間で、早く庭に行きたいのを、わくわくしながら待っている。
たぶん私以外の、この場にいる人達は、上階に登場する王族を待っているんでしょうね。みんなで、同じ場所を見上げていて、ちょっと気持ち悪い。
周囲に緊張感が広り、王族達が入って来た! やっと始まった! 早くっ! 早くっ!
国王に王妃、主役の第1王子、13歳の第1王女、8歳の第2王子、6歳の第3王子、第2王女はここにはいないみたいね。
王様が挨拶をしてるけど、偉い人の挨拶って、面白くないわね――。
あー、やっと、つまらない挨拶が終わったから、もう、この場所にいなくても大丈夫ね。両親へ庭園の植物を見に行くことを告げたことだし、よし、行こう!
王族へ挨拶に向かう貴族達の流れに逆らって歩く。
もう、ぶつかってこないでよ。ぅうーん、ドレスが引っかかって歩きにくい――。
はぁー疲れた……、やっと出口にたどり着けた。
「あー、空の下はやっぱり気持ちいい!」
綺麗に整備された庭を探索することだけが、この日の唯一の楽しみで、領地では見ることのない植物を探し始め、楽しい気分だったのに、少し上ずった声が、私の後ろから聞こえて、振り返る。
「そっ、そこの君、名前は?」
――――っ!?
驚きと、困惑で瞬時に下を向く。
えっ、どうしてこんなところにカールディン王子がいるの?
今、貴族達が向かって行った先にいるはずでしょう? なんで庭園にいるのよ!
「顔を上げてっ。名前は?」
「シェルブール伯爵家のリディアンヌと申します。カールディン殿下におかれましては、本日は、誠におめでとうございます」
とりあえず、淑女の礼をとってみる。
この後はどうしたらいいんだろう? もう、立ち去ってもいいかしら?
「やっぱり、あの聖女様の生家、シェルブール伯爵家の令嬢だったのか! その……髪が……、あまりにも輝いていて目が離せなかった。僕は君と仲良くなりたいんだ。庭園を見たいのであれば、僕が案内しよう」
心から不要な提案を、きっぱり断りたいのを堪えて、貴族らしく回りくどい言い方で断ってみるか。
「寛大なお気遣い感謝申し上げます。ただ、カールディン殿下の手を煩わせるわけにはいきません。ましてや、今日の主役である殿下のことを、皆が待っておりますので……私は一人で大丈夫です」
「いや、王族専用の庭園は広いから、警備の目が届かない所もあるはずだ。可愛い令嬢が一人でいるのは良くない。何より、僕はこの庭園をよく知っているから、誰よりも案内に適している」
「……」
何なの? この子どもみたいな王子はっ! 話を聞いてよぉ! 断っているのに、勝手に話を進めないで!
絶対に、案内に適切なのはあなたではないでしょう。
あなたは今日の主役ですよ?
わかっていますか!?
「リディアンヌ嬢……。僕は君の姿を見て、浮かれてしまった。少しでいいので、一緒に散策をしてほしい」
嫌がる私に構う訳もなく、王子は距離を詰めてくる。
ぬけぬけと不可解な事を言うカールディン王子のことを、駄目だと思いながらも、怪訝な顔で見てしまう。
気持ち悪い言動の連続に、すっかり引いてしまった。
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