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本章2 王子の恋心

ジュリアス第2王子の変化

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 私は、シェルブールの邸にある情報に呆然とした。

 王城にある閲覧制限のある禁書でさえ、このように詳細で豊富な情報は残されていない。

 この国の第2王子として、500年前の知識は十分に得ていると自負している。
 だが、その私でさえ、全く知らない事ばかりではないか!

 シェルブール家の当主が何代……、何十代と変わっても、正確に知識を受け継いでいるとは……。
 シェルブール家は、王国一の貴族と称しても何らおかしくはない。


 500年前……この国が魔力で覆われていたのは、魔王が魔力の根源であったから。
 石化魔法から解かれて間もない魔王は、まだ完全復活ではないのであろう……。

 魔力を感じるリディにも、魔王をまだ探知できていない。

 魔王が復活した場合、この時代も魔力で覆われるということなのか?

 それであれば……これから誰でも魔法を使えるようになるということなのか?
 疑問は後を絶たない。

 まずは、魔法の使い方を、読み解くとするか。


 魔法を発動するには、術式をイメージして自分の体内で展開する……?

 子どもでも使えるであろう術式となると……。
 丸の中に三角を合わせた術式をイメージしたら着火。
 火を維持するには、丸を二重丸にする。
 火で形を作るのであれば、三角形を五角形にする……。
 この術式を魔力と合わせて展開できれば、ファイヤーボール。

 ――魔法全ては、様々な術式の組み合わせということか?

 難易度が高くなるものであれば、術式がより複雑になる。
 イメージして展開するのが難しくなるということか……なるほど。


 魔力がこの国に広がっても、この知識がなければ、魔法は使えないということがわかり安堵する。
 人間すべてが善人とは限らない。
 魔法を悪用されれば、弱いものほど被害を被るだろう。
 
 万が一、魔法が悪用された場合には……これまでにない規模の争いが起きるだろう。

 この知識がもたらす影響は、計り知れない……。
 この知識も現実も危険すぎる。
 国王にはどうやって報告したらよいのか……。

 この情報こそが、国宝以上の代物だと改めて認識する。

****

 この国で、魔物に遭遇したものはいないだろう。
 戦うために剣技を磨いている私でさえ、竜と遭遇し足が震えた。

 あの竜が最後まで戦う姿勢できたら……。
 接近戦しかできない私の剣術では、勝機はなかっただろう。

 結局はリディの存在によって、私たちは救われたのだ。
 そもそも、リディの魔法によって燃えた木々を消火しなければ、あの時点で助からなかったな。


 速やかな魔法の発動。リディの魔法の知識はすさまじいものなのだろう。

 本当に優秀な令嬢だ。
 リディを手放すなど、兄は愚か過ぎる。

 王城にいた時に見ていた、人形のような雰囲気とは全く違い、感情をあふれ出して可愛く笑う姿。
 ずぶ濡れになってしまったリディ……

 異性には見られたくないだろうと、奴ら2人の視界を遮ったが……。
 恥ずかしそうな彼女の姿も微笑ましかった。
 兄は見たこともないのだろう。
 婚約者だった……兄が……。

 リディを独占する権利を持っていたなんて……。
 初めて感じる、得体の知れない感情が沸いてい来る。
 兄へ強い不快感? を抱かずにはいられない。

 ――――私は何を考えている!?
 
 時間がないから早く事を運べと、クルリに急かされるているのに!
 リディの事を考えるのは止めて、続きの術式を確認しすることにする。


 冷静になって、聖女ミレーの魔力を読み解く……。
 聖女ミレーは各地の領主から要請があれば、毎日各地へ駆けつけていた。

 名前と顔を知っている相手には、魔力により念話ができるようだ。

 ミレーの顔は知れていても『聖女様』と称されることで、名前は隠されていたのか。
 一方的な念話を警戒し、王族や貴族も当時は不用意に名前を名乗らなかったようだ。
 ミレーの名を知っていたのは、王族や王城騎士や各州知事の当主のみに限られていた? 平民からの念話を防ぎ、彼女の力を王族が支配していたのか……。


 魔王は魔力の根源だが、なぜ、この聖女ミレーは豊富に魔力を使えたのか?


 魔王から漏れ出る魔力を使うのであれば、聖女ミレーも同じ程度にしか使えないはず?
 
 空間の魔力を使い術式を展開するには、体力を消耗する……。

 幼いころから相当な魔法を使いこなしていたようだが、少女にそんな体力があるのか?

 そうなれば、聖女ミレー自身が魔力を持っていたとしか考えられないな。
 偶然に……か?

 リディも彼女自身が魔力を持っている。
 一般的な空間の魔力を使う方法と彼女らは原理が根本から違うのであろう。

****

 その頃の王都では……。

 ここ最近、更に美しさに磨きがかかったソフィア公爵令嬢。

 カールディン王子は、その美しくなった容姿に更に気分を良くしている。
 婚約が決まり、彼女の美しさが更に輝きを増したのだと満足しているのだ。

 癒しの力を使え、より美しいソフィア嬢以上の女性はいないと、得意満面に喜んでいる。
 自分の判断は間違っていなかった。
 容姿だけが取り柄の前婚約者リディアンヌなど足元にも及ばない。
 

 ソフィアの父である、カモメイル公爵も、生き生きと若返って見えていた。

「娘の婚約が決まらないことが心労だったのだろう」

「婚約が決まって、やる気が出たのだろう」など、様々な噂をされていた。

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