最強の能力師は世界平和の為には頑張らない

秋桜

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一学期

2,入学式前日② (他者視点回)*

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―西暦2XXX年4月7日16時36分―

ここ数日1年生寮で噂になっていた、『合格発表の時に2位以下を大きく突き放し全教科満点で合格した美少女』とやらを見に私、ゆずりは葵依あおいはやてと一緒に成人なるひとに校門に連れ出されていた。
本当はもう1人七凪ななも誘っていたらしいが家の用事で断られたらしい。

「その子全教科満点だったんならAクラスになるわ。こんな野次馬みたいなことしなくても同じクラスなんだからその時でいいわよ…私今日はもう少し自分の部屋の片付けをしたかったわ…せっかく高等部でも特能クラスに行けてやっと1人部屋になれたのに…どっかの色ボケに片付けの途中で連れ出されたおかげでまだ片付けが終わってないのよ。」

私は成人に文句を言って睨んだ。

「俺も葵依あおいに同意見だ。俺もまだ部屋の片付け終わってないんだが。」

「そう言わないで付き合ってよ、二人とも。ちょっと気になることがあって2人に…特に颯に見て欲しくてね。」

「颯に?じゃあ、私帰っていい?」

私はすかさず帰ろうとするが肩を掴まれて止められた。

「いや、葵依にも見て欲しんだよね。僕の家もだけど杠家も神代家と付き合いあったでしょ?」

「…そういうことね。でも私達に頼むって事は成君が知らない人だったってことでしょう?そんな人が私にわかるとは思えないわ。」

「成が分からないって…よっぽどだな。」

成人の家は隠密に優れた能力師が多く、優秀な諜報員を多数排出していた。
もちろん、成人本人も幼い頃から訓練されておりかなりの腕前だった。

「僕、合格発表の日に可愛い子いないかこっそり見に行ってたんだよ。それで神代さんを見つけたんだけど、その時に前どこかで見たことある顔ような気がしたんだよね。」

「お前、合格発表の日に見かけないと思ったら秘伝の隠密術をそんなことに…。既に名前まで調査済みだし。」

呆れる颯に私も完全に同意見だった。

「前半はどうでもいいよ、大事なのは後半!この僕があんなに可愛い子を忘れるはずないのに全然分からなかったんだよ!?一大事だよ。」

…………ツッコミどころ満載すぎて、どこから突っ込んだらいいのか分からないわ…でも、こうなると止めるより付き合った方が片付けの再開時間は早そうね。

私はそう決めると、近くのベンチを指さして2人に言う。

「あー、はいはい。じゃあそこの椅子にでも座って適当に話してましょ。高等部からの人は今日は家に帰るはずだからそのうちここを通るわよ。」

「そうだな…俺もちょっと興味出てきたし成に付き合ってやるよ。」

初めはどうでも良さそうだった颯だが成人にすっかりのせられてやる気を見せ始めていた。

しばらくして、腰まである綺麗な黒髪をなびかせながらお供に使用人らしき人物を連れた人物が校舎の方からやってきた。
寮の方向から来ると思っていた為、成人と葵依は寮の方を向いて3人で話し込んでいたので、その存在に真っ先に気づいたのは2人に向き合う形で逆方向を向いていた颯だった。

「成…もしかしてあの子か?」

小声で話す颯の声は若干震えていた。

「ん?」

颯の声に一瞬だけ振り返って顔をちらっと確認した成人が『そう、あの子。可愛いでしょ?』と言った。

それに合わせて葵依もちらっと相手を見る。

「成君、悪いけど私もあんな可愛い子知らないわ…だけど成君が騒ぐのは納得ね。」

「ね、可愛いよね…颯に先を越されるとは思わなかったけどまだ帰ってなくて良かった。」

「あれ…颯なんで分かったの?颯もその子の顔知ってたの?」

葵依は成人から外見の事は何も聞いてなかった為、颯も同じで見てもわからないと思っていたので不思議に思った。

「いやそうじゃなくて――は?」

理由を話そうとした瞬間、颯は目の前の光景に言葉を失う。
急に黙った颯が気になって葵依と成人もはやてが見てる方向を向いた。
2人が見ると一緒にいた使用人がその子に手を差し出していた。
すぐにその子はその手を取ると、使用人が何かを呟いた。
そしてその後すぐに2人は消えてしまった。

「へぇー、空間転移…自分だけじゃなくて他人も一緒にとべるなんて…優秀な空間転移能力者が今の神代家にはいるんだね。あの子の正体は結局分からなかったけどいい事分かったし今日はそれでいいか。」

「黒髪と黒目で着物が似合いそうな子だったわね、羨ましいわ。」

成人と葵依がそれぞれ感想を言う中、颯は見たものが信じられなくて青い顔をして固まっていた。

「成、葵依。さっきの…。」

「ん?颯、今朝散々僕にチャラいとか言って――………真っ青でどうした、何を見た…。」

からかおうとした成人は颯の表情を見て何かを察したのか、颯に詰め寄る。

「いや、確証はないから誰に聞かれるかわからんこの場所じゃあんまり言いたくない。俺の部屋で3人だけになってからでいいか?それまでに俺もちょっと考えを整理したい。」

「らしくないね、確証がないなんて弱気な発言を颯がするのは。」

「とにかく、気になるからさっさと颯の部屋行きましょ。」

そう言って、私は2人を引っ張って颯の部屋に向かった。

颯の部屋はまだダンボールが少し残っていたがそれ以外は中等部の頃から見慣れているいつもの颯の部屋だった。


「すまんな、まだ部屋の片付けが終わっていなくてな。」

「そんなことはいいから早く本題!」

寮の部屋までの道中、黙りだった颯の様子を見て私は何かあると思い、すっかりあの子の事が気になっていた。
そんな私に成人が便乗して急かして言った。

「そうそう。早く早く。」

「そうだな……詳しくは本人に確認を取ってからだがさっきの転移使ってたのはおそらく神代さん本人だ…と思う。」

「…………は?…いやいやいや、あの時僕も探知してたけどそんな気配全くなかっ――」

信じられない様子の成人だったが颯の表情を見て反論をやめる。

「まじで?探知が弾かれた感じも全くなかったんだけど…。」

そう言うと成人は考え込んでしまった。

「俺も半信半疑だけど…あれは神代さん本人が使ってたと思う。じゃないと、あれは説明つかない…。」

「"あれ"?颯がそんなに言うほどの何が見えたのよ。」

「すまん、それは明日本人に確認取ってからでいいか?」

「よくわからないけど、同じ女子の方が警戒されないと思うから明日タイミング見て私から神代さんに話しかけてみるわ。」

「そうか。頼む。」

葵依に頼むと言った颯の表情はまだかたかった。

その後はすぐに解散になり二人とも部屋に戻ってそれからはいつも通りだった。

次の日、私はとんでもない事を本人の口から聞くことになる。
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