最強の能力師は世界平和の為には頑張らない

秋桜

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一学期

13,実技用トレーニングウェアと敵 *

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颯が寝てしまってから30分。
ようやくバスが合宿所についた。
理由はよくわからなかったが私のせいで颯が寝ていると言われ、責任をとって颯を起こして連れておりてこいと3人から言われた蘭花。

颯は寝起きが悪いようで体を揺さぶって起こそうとするがなかなか起きなかった。
ようやく起きて周りを見るとバスの中には誰も残っておらず、最後になってしまっていた。ほかの3人は颯の寝起きの悪さを知っていたのでさっさと先にバスを降りてしまっていたのだ。
あとから遅れて2人でバスを降りると、かなり目立った。

いつくか嫌な視線もあったが、目立つのはもう今更だと思い、気にせずにスタスタ歩いてクラスのみんながいる場所に行った。

クラスメイト達はみな颯の寝起きの悪さは知っていたようでお疲れ様と苦笑いで迎えてくれた。
当の颯はみんなのこういう扱いには慣れているようで特に何も言わず眠そうな顔をして私の後ろを着いてきていた。

到着式も終わり、一旦荷物を置きに部屋へ行く。
部屋割りは男女別で、さらに同じ班員、同じクラスはなるべく同じ部屋になる様に組まれているみたいだった。
その為女子が3人いた蘭花達の班に別の班の女子2人が入った、5人部屋をあてがわれた。

室内は蘭花達がAクラスという事もあるのだろう室内も広く豪華ホテルのスイートルームのようだった。

部屋に着いて中に入ると荷物を置く。
部屋のテーブルの上には実技の授業用にその人の特殊能力に合わせて学園が特注で作らせたトレーニング用のウェアがそれぞれの名札と一緒に置いてあった。

別の班の2人は既に着替えて出ていったあとで荷物だけが部屋の隅に置いてあった。
時間もなかったのでさっそくに着替える3人。

一応制服なので学校の校章や服の雰囲気は統一されているが細かいデザインや色は能力によって様々で、蘭花の実技用ウェアは動きやすさ重視の他のメンバーと少し違っていてやや防御よりの見た目をしていた。

見た目は作った人間の趣味なのか、ウェアの希望をまかせられた兄の好みなのか、体にフィットするタイプのトレーニングスーツに巫女服を掛け合わせたようなデザインだった。

「わぁ、蘭花のウェア可愛いね…いいなー…ボクなんか能力の性質上、動きやすさが大事だからどうしても見た目を妥協せざるを得なくてこんなのだよ?」

そう言ってくるっとその場で回る七凪。
七凪の格好は本人が言った通りの動きやすさ重視で蘭花と同じタイプのピタッとしたトレーニングスーツに半ぞでまでの上着とパンツというスタイルで頭にベレー帽を被っていた。

「七凪の服もボーイッシュでいいと思う。私自分のと交換したいくらい。なんで巫女服……。」

(まさか…兄様達…が?)

蘭花はこんなふうになった原因に1つしか心当たりがなかった。

「蘭花ったら3年間着るものなのに自分で意見出さなかったの?」

そういって葵依が着替え終わったようで隣の部屋から出てきた。

葵依の服は一言でいうなら
トレーニングスーツ×露出度ちょい高めの看護服だ。
トレーニングスーツもかけ合わさっているので肌は隠れているデザインで、胸元もちょっと空いている程度なので動いても見えることはないだろうがピタッとフィットした上半身に下半身はタイトなミニスカートとタイツをはいているような見た目なので体のラインが丸わかりだ。
可愛いし巨乳美人の葵依にはよく似合っていたのだが、『自分の服は自分で意見出しておかないと』と言うような趣旨の言葉を言いながら登場されたので反応に困った。

「そういうってことは葵依のその服は自分の意見…?」

「そうよ、似合わないかしら…なるべく動きやすくその上で見た目も可愛い様にって頑張ったんだけど…。」

「いや、凄く似合ってると思う。けどボクはそんな服は着れないかな…。」

そう言うと七凪は自分の胸を悲しそうに見つめた。

「胸なんて大きくても七凪が思ってるほどいい事なんてないわよ?」

「葵依、小さい人にそういう事言うのは、嫌味にしかならないんだよ!」

葵依の身も蓋もない発言に七凪が反論した。

「そうなのね…悪かったわ。」

素直に謝った葵依だが、七凪とは中等部からの付き合いだ。
なので七凪がこの話をしだすと長くなることを知っていた。
葵依は話をそらそうと思い、何かいい話題がないかと思って蘭花の方を見た。
葵依が蘭花を見ると蘭花は自分の荷物をゴソゴソとあさりはさみを取り出した。
しかも、紙用ではなく布用の裁断バサミだ。
嫌な予感がしたので蘭花に尋ねる。

「…所で、蘭花は鋏を出して何してるの?」

葵依が尋ねると蘭花はケロリとした顔で言った。

「ん、この服動きにくいからそですそを切り落とそうと思っ…「「だめよ(だよ)!」」」

私が理由を話していると言い終わる前からすごい剣幕で止められた。

「なんで?」

「なんで?ってせっかく似合っているのになんで自分から変にしようとするのよ。」

「そうだよ!というかなんで裁断バサミ持って来たの!?」

「ん、持って来てはなかった。私の能力忘れ物にも困らない。」

ドヤ顔で得意気に言う蘭花を見て葵依が呆れながら言った。

「能力使ってまでなんでせっかく可愛いウェアを切り刻むのよ…。」

「だって…これ動きにくい…。」

「とにかくだめよ。もし切り落としたところ見つけたら直ぐに先生に言って新しいものを用意させるからそのつもりでね。」

葵依の目を見た蘭花は、この目は本気で新しいのを用意される。
そう思い切り落とすのをやめた。

「……こんなことになるならめんどくさいからって任せなければよかった…。」

(…兄様…今度あったらしばらく無視してやる…。)

「そんなに嫌なら来年も特能クラスに残れれば2着目が作れるから、その時はちゃんと希望出しなさい。」

「そう…そういうことなら全力で首位キープする。」

蘭花のすわった目を見た2人は思わずたじろいだ。
話が一段落してふと時間を確認した蘭花は集合時間が迫っていることに気づく。

「ねぇ、2人とも…そんなに時間ないし、着替え終わったからそろそろ行こ?」

私がそういうと2人が私を見てきた。

「じゃあ蘭花…遅刻するし…ほら、ね?」

「そうね、お願い。今度の何か埋め合わせするから。」

「…………………しょうがない。2人ともこっちに来て。」

蘭花はやれやれと思いながらも自分も歩いていくのはめんどくさかったので2人も一緒に転移で集合場所まで連れて行ってあげた。

集合場所のドーム型の建物の入口前には既にかなりの人がいて入寮式と同じように転移で現れた蘭花達を見て少しざわついたが2回目だったこともあってすぐに落ち着いた。

蘭花が同じ班の颯達を探してキョロキョロしていると1人、目立つ人物が視界にうつる。
真っ赤な髪のツインテールをクルクルと巻き、顔は赤いつり目が特徴で、いかにもお嬢様といった見た目の目立つ人物だ。

(あの人…確か…。)

トレーニングスーツとドレスを掛け合わせたようなデザインのウェアを着たその女子生徒も蘭花が見ているのに気づいてこっちを見つめ返してきた。

目が合うとその女子はこっちに近づいてきて私の格好を見て鼻で笑うといきなり悪口を言われた。

「あなた…えっと…確か神代さんとおっしゃったかしら?神代家なんて7大名家のどの家の派閥にも入れてもらえていない家のくせにちょっと調子に乗っているんじゃないかしら。」

私はその態度にカチンと来たので本当は知っているが知らないふりをして喧嘩を売った。
そして高校入学のかなり前から元々、潰す予定ではあったのだが実物を見て徹底的に捻り潰すことに決めた。

「………………失礼ですけどどちら様でしょうか。」

私は戸惑ったふりをして尋ねた。

私のその言葉を聞いた巻きツインテールはもう一度私を鼻で笑うと機嫌が良さそうに言った。

「ふっ…流石、歴史ある名家のくせに、ろくに噂話も聞かない神代家の人間ね。わたくしの事も知らないなんて……。しょうが無いから特別に名乗って差し上げますわ!
私は名誉ある7大名家の内の1つ三栖みす家の現当主、三栖剛三郎の娘。三栖麗子ですわ!」

(…………何この人…バカなの?…神代家がどこの派閥にも入ってないのはその話を断り続けているからで、こっちは知らなくてもしょうが無いけど噂を聞かないのは四童子家の分家だからで…後者はともかく前者は結構有名な話………はぁ、もう耳が腐るからとっとと消えてくれないかな……でないと今すぐ消しちゃいそう…。)

「そうですか。それは失礼致しました。」

私は怒りを何とか抑えて言った。

「初戦の相手に学年トップがいるからと見に来てみれば…逃げるしか出来なさそうな能力のくせにそんな動きにくい格好…ちょっと可愛いからって調子に乗っていると次の試合でわたくし間違ってその服燃やしてしまいそうですわ…。」

(……………落ち着け私…消しちゃだめ。まだ消しちゃだめ。)

「という事は三栖様は火系の能力者なのですね。恐ろしいですわ…。私、怖いので転移で頑張って逃げることに致します。」

蘭花は何も知らないふりをして言った。

「ふんっ!今さらわたくしへの無礼な発言に気づいて後悔しても遅いですわ!せいぜいその逃げるくらいにしか使えなさそうな力で頑張って逃げるといいですわ。まあ、私の炎から逃げられるわけはないんだけれど!おほほほっ。」

そう言ってご機嫌で笑うと麗子はお付の人っぽい同じ班のメンバーを連れてどこかへ行ってしまった。



「あ、あの人何がしたかったのかしらね!」


先程から、蘭花のオーラがやばい事になっていたので蘭花の怒りを葵依は感じ取っていた。
話が終わっても一向に収まらない蘭花の怒りに普段は何かこういう事があってもスルーしている葵依があえて明るい声で場を和ませようとした。


「葵依、めずらしく空気をなごませようと頑張ってるところ悪いけど、ボクたぶん今の蘭花にはその声聞こえていないと思う。」

七凪の言葉を聞いて蘭花を見ると七凪の言う通り蘭花の様子に変化は全くなかった。

一方、蘭花と麗子のやり取り見ていたを周囲の人間は興味深そうに聞き耳を立てていた。その野次馬たちの中には同じ特能クラスの面々もいたが、蘭花のクラスメイトとそれ以外のクラスの人では向ける視線の種類が正反対だった。
どういう事かと言うと、クラスメイト達は蘭花が負けるとは欠片も思っていない。
その為、ただ単に興味津々といった様子なのだが、蘭花の事をよく知らないほかのクラスの人間はニヤニヤと笑いながら見るものや、目をつけられて可哀想にという同情の視線を送っていた。

(優ちゃん…初めて敵側の人間とあったけど、その場でキレずに珍しくちゃんと我慢出来たよ。これでいんだよね。優ちゃん…アイ…助かるよね?………ねぇアイ、必ず助けるからもう少しの辛抱だよ。)

私は2人に向かって、聞こえないのをわかった上で祈るように心の中で言った。
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