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第3章〜内乱の激化と流行病の発症〜

27.日記①

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本文より1部抜粋

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いつか戻るかもしれない本当の私へ

最初にはっきりさせておきます。
全てを押し付けたあなたを許す事は難しいです。

そして、この日記は私のマイナス思考をひたすら書き綴った愚痴日記です。
これを書いている今の私にはまだそうなるかは分かりませんが、きっとそうなっていると思います。
言えない気持ちを溜め込むといつか潰れてしまうので前世の頃からつけているマイナス日記です。
あなたがこの先を読む事はおすすめしません。

それと私はあなたを―(以下略)―


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【聖星暦1710年 夏の2の月の30日】

今日の記憶が消えてもいいように今日の事を書いておきます。


―(中略)―


と、こういう経緯で私は明日から引きこもる事にしました。

怖いから。

運命が、未来が、時の流れが。
離れていく人達の優しさが。

全てが怖い。

アリシアナはなんて強いのだろう…とは思った。
けど私には無理だ。
理解出来ない。
自分の為だけにあそこまで出来るアリシアナは逆にすごいと思う。

そして、疑問にも思った。
なんで私はここにいるんだろう。
ここはなんでこんなに違うのだろう。

あの神はアリシアナでは退けられないのに。
あれはヒロインだから勝てるもの。
私は悪役で引き立て役。
それだけでしかない私には絶対に無理なのに…。



【聖星暦1710年 夏の3の月 1日】

引きこもり生活1日目。

朝起きてすぐに自分の記憶を確認したが昨日の記憶は消えてない事がわかった。

朝食後にジークフリート王子が来た。
昨日急に部屋から追い出したからそのせいで様子を見に来たのだろうと想像がついた。

今日は会いたくなかったので体調不良を理由に帰ってもらった。
ジークフリート王子は私に花をくれた。
貰った花はマリアの提案で部屋に生けておく事になった。
それ以降はずっと刺繍をしたり本を読んだりしてのんびり過ごした。

【聖星暦1710年 夏の3の月 2日】

引きこもり生活2日目。

今日も記憶は消えてなかった。
今日もジークフリート王子は来ていたがまたマリアに断ってもらった。
ジークフリート王子には悪い事をしてしまった。
せっかく来てくれたのに追い返してしまった。
刺繍で何か作ってお詫びに届けて貰おうか。
王子だけじゃなくてマリアも。
全部マリアに任せ、嘘をつかせて断ってもらうのは申し訳ない。
ごめんなさい。
けど、引きこもる以上は自分では出来ない。
今はまだ大丈夫だろうけど、前のアリシアナの頃から仕えている彼女にはずっとこうだと不審がられるかな。
引きこもりは辞めないにしても王子にはある程度の所で会わないとダメかもしれない。

けどまだ無理だ。
会えない。
会いたくない。

怖い。



【聖星暦1710年 夏の3の月 3日】

引きこもり生活3日目。

今日も記憶は消えていない。
けど念の為にこれからも大まかな状況は日記にも書いていこう。

この2日間花をくれたジークフリート王子は今朝も来ていたようだった。
なのに何かを察したのか今日は侍女から何も聞かれなかった。
ただ一言「早く元気になってください、でも何かあったらすぐに仰ってくださいね。」と寂しそうな笑顔で言われた。まさかジークフリート王子が何か言ったのだろうか。
どこまでバレてるのだろう。

怖い…。



【聖星暦1710年 夏の3の月 5日】

引きこもり生活5日目。

記憶は今日も消えてはいなかった。
こんな記憶消えてしまえばよかったのに。 

また、あの時の夢をみた。
やっぱりダメだ。
無理だ。
私はアリシアナの様に強くはいれない。
なんでアリシアナはあんなに強くいられたの。
アリシアナとして過ごせば過ごすほど日々思い知る。

私には無理だよ。
帰りたい。
戻りたい。
こんな所嫌すぎてどうにかなりそう。


【聖星暦1710年 夏の3の月 10日】

引きこもり生活10日目。

今日もあの時の夢をみた。
やっぱりあの人は信じられない。
そして記憶はやっぱり消えてない。
消えて欲しい記憶はけして消えないらしい。
現実は残酷だ。

なんで私はここにいるのか、
私は何の為にここに連れてこられたのか、
最近そんな事ばかり考えてしまう。


【聖星暦1710年 夏の3の月 13日】

引きこもり生活も13日目になったが、相変わらず記憶は消えない。
神様はとことん私に意地悪らしい。

明日で2週間。
もう2週間も経ってしまう。
初めにくれたあの日から、王子は毎日花をくれる。
マリアが毎日それを部屋の花瓶に生ける度に私に心配そうな目を向ける。
あの目が頭から離れない。

【聖星暦1710年 夏の3の月 22日】

最近新しく気づいた事がある。
アリシアナがまだ幸せだった頃の夢。
その夢をみた日の朝は唐突な虚無感に襲われて死にたくなる。

アリシアナが病んでいたのも今なら少しわかる気がした。


【聖星暦1710年 夏の3の月 30日】

今朝は新しい夢だった。

あの人は大丈夫だと思ってたのに。
信じられると思ってたのに。
この1ヶ月私のお世話をずっとしてくれてもう少しで信じられそうだったのに……。もう信じられない。
引きこもって今日で1ヶ月、向こうから何も言ってこないって事は向こうはまだ私を信じてくれているという事だろうけど…私は知ってしまった。彼女は信じてはいけない。

あの時に、真っ先にアリシアナの元を離れたのは彼女だったのだから。

今日の夢でアリシアナは本当に1人だったのだと思い知らされた。

怖い。
怖い…。


【聖星暦1710年 秋の1の月 1日】

引きこもり生活31日目。

最近怖いものがまたひとつ増えた。

夜眠るのが怖くなってしまった。
そして少し危機感も覚えている。

世の中の引きこもりがなぜ引きこもりをやめられないのかを実感している。
この1ヶ月この世界の事を本で学びつつ、趣味を満喫している。
誰とも会わず。誰とも話さず。
 1人でいるというのは気が楽だ。
人間1度楽を覚えてしまうとなかなか抜け出すことは難しい。
ずっとこうしていられればそれがいいけど…おそらく、そうもいかない。
そろそろ逃げるのは終わりにしないといけない。

明日になったらきっとやめる。

明日になったらやめる。
明日になったらやめる。
明日になったらやめる。

明日になったらやめる。

これだけたくさん書けば明日は動けるよね。

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