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現在第二部を更新中です――以下【おまけ】番外編『千年救敗物語』(未完)
第19話 大太刀の怪人
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もしかして……忘れかけていた一ノ瀬九恩という名前を、再び取り戻していたから――。
そんな思考が一瞬……俺の頭の中に浮かんだ。
ひょっとしたら今の俺は……この世界で演じ続けてきた王都騎士団長の息子イニアから……転生者一ノ瀬九恩へと戻りつつあるのかもしれない。
しかし……。
こちらの世界では珍しいクオンと言う名前。それがこの南方では、少々別の意味で知れ渡っていることを俺はこの時初めて知ることになる。
まず俺の名前に食いついたのは……俺と少女の話を黙って聞いていた三人組の一人。昨日、自ら毒入りの酒を見つけてまんまと毒姫の罠にハマった大男だった。
「おい。今、クオンと言ったか?」
そいつが俺の転生前の名前を聞くなりいきなり口を挟んできたのだ。
「あ、あぁ。それが俺の本当の名前なんだ。」
この名前をこの異世界で使うことにまだ慣れてはいない。俺は少し気恥ずかしげに答える。
すると、悪党三人組は本人の俺を置いたままで、何かを思い出したように口々に俺の話を始めた。
「おい、そのクオンって、まさか最近噂になってるアレじゃねぇか?」
「おお、そう言えば聞いたことあるな。あいつの千本目の相手はクオンって言う小僧だって。そこら中で言いふらしているらしい。」
「あぁ……。それなら俺も聞いたことある。クオンなんて珍しい名前だとは思っていたが……もしかして兄ちゃんのことじゃ無いのかい?なんだかお前さん……色々と狙われてるなぁ。こりゃあ……もう色々と諦めた方が良いかもしれんぜ。」
先程、少女に蹴り上げられた男は、なんとも気の毒そうな表情を俺に見せてそう言ってくる。
「なんだよ…他にも俺を狙ってる奴がいるのか」
俺には男達の言っていることがなんの事やらさっぱり分からなかったが、俺の名前が自分知らないところで独り歩きしているのは気持ちが悪い。
「なになに?あなたって…意外に有名人なの?」
しかも、隣にいる少女まで男達の話を聞いて興味深そうに俺にそう聞いてくるのだ。
俺だって、逆に聞きたいぐらいだよ。だってこの世界で前世での名前クオンを明かしたのは昨日が初めてなんだから。
「大太刀《おおだち》の怪人が、そのクオンって奴を探しているって言う噂があるんだよ。」
やさ男が脇腹の痛みをこらえながら、少女に説明をする。また蹴られるぞと俺は少しばかりの心配をしたが、なんと彼女がその話にむちゃくちゃ食い付いた。
「えっ。ちょっとどう言うことなの?大太刀の怪人ってあなたむちゃくちゃやばいじゃない。」
俺はまたもや見ず知らずの人物から命を狙われているのである。次から次へと明かされる新事実に俺は「もしや少女に本名を明かしたのがフラグだったりして……。」などとそう思わないでもない。
ところでさ……
大太刀の怪人って……いったい誰なのよ。
取り敢えず俺は、さっきからそいつを聞きたいのだ。
この南方出身の4人は、話が大太刀の怪人の事になった途端に俺の事など忘れているかのように話し込む。
「千本目に選ばれたらしいぜ。」
「千本目?でも彼の武芸はからっきしよ。私は見ていたもの。そんなやつのことあいつが狙うかしら?」
「いや、そうでも無いだろ。あの黒服を馬ごとやったのは兄さんなんだろ?」
「えぇ。彼が頭から真っ二つに。でもその後がねぇ……」
「なぁお前ら、今にして思えばあの太刀筋、誰かに似てるような気がしねぇか?」
「いや、だからその…大太刀の…」(かき消される俺の声)
「いや兄貴。いくらなんでもそれはねぇ。あれくらいなら騎士団のアザ持が出来てもおかしくねぇだろ。」
「俺もそう思っていたんだが、騎士団は基本的に剣を使うだろ。騎士団の剣技はその太刀筋に渾身の力を乗せてぶった斬るんだ。だかららもっと切り口が雑なはずだろ。だがあの馬の切り口は綺麗に真っ二つだった。恐らく刀が使われてる。それも普通の刀では無く大刀だ。」
「そう言えば、クオンが持ってる剣。それって、よく考えたら刀よね。騎士様だから先入観で剣だって思ってたけどさ。」
「なぜ兄さんが刀を使っている?今の騎士団に刀を使うやつはいねぇだろ?」
「そうだな。昔はいたが、今はいないはずだ。今どきそんな大きな刀を使う奴って言ったら……」
「大太刀の怪人……」
4人の声が一斉にその名前を呼んだ。
「ああ、奴しかいねぇ。」
「ねぇクオン。貴方いったい、あの狂人とどんな関係があるって言うの?それにその刀……」
そして4人の顔が俺に向けられる……
狂人との関係?俺の持っている刀?
しかし俺にとってそんなことは正直どうでも良かった。
まず俺はこの4人に聞きたいことがある。
「あの…よかったら、その大太刀の怪人って人について教えて頂けないでしょうか…」
次話
『俺の知らない二人目の父親』
そんな思考が一瞬……俺の頭の中に浮かんだ。
ひょっとしたら今の俺は……この世界で演じ続けてきた王都騎士団長の息子イニアから……転生者一ノ瀬九恩へと戻りつつあるのかもしれない。
しかし……。
こちらの世界では珍しいクオンと言う名前。それがこの南方では、少々別の意味で知れ渡っていることを俺はこの時初めて知ることになる。
まず俺の名前に食いついたのは……俺と少女の話を黙って聞いていた三人組の一人。昨日、自ら毒入りの酒を見つけてまんまと毒姫の罠にハマった大男だった。
「おい。今、クオンと言ったか?」
そいつが俺の転生前の名前を聞くなりいきなり口を挟んできたのだ。
「あ、あぁ。それが俺の本当の名前なんだ。」
この名前をこの異世界で使うことにまだ慣れてはいない。俺は少し気恥ずかしげに答える。
すると、悪党三人組は本人の俺を置いたままで、何かを思い出したように口々に俺の話を始めた。
「おい、そのクオンって、まさか最近噂になってるアレじゃねぇか?」
「おお、そう言えば聞いたことあるな。あいつの千本目の相手はクオンって言う小僧だって。そこら中で言いふらしているらしい。」
「あぁ……。それなら俺も聞いたことある。クオンなんて珍しい名前だとは思っていたが……もしかして兄ちゃんのことじゃ無いのかい?なんだかお前さん……色々と狙われてるなぁ。こりゃあ……もう色々と諦めた方が良いかもしれんぜ。」
先程、少女に蹴り上げられた男は、なんとも気の毒そうな表情を俺に見せてそう言ってくる。
「なんだよ…他にも俺を狙ってる奴がいるのか」
俺には男達の言っていることがなんの事やらさっぱり分からなかったが、俺の名前が自分知らないところで独り歩きしているのは気持ちが悪い。
「なになに?あなたって…意外に有名人なの?」
しかも、隣にいる少女まで男達の話を聞いて興味深そうに俺にそう聞いてくるのだ。
俺だって、逆に聞きたいぐらいだよ。だってこの世界で前世での名前クオンを明かしたのは昨日が初めてなんだから。
「大太刀《おおだち》の怪人が、そのクオンって奴を探しているって言う噂があるんだよ。」
やさ男が脇腹の痛みをこらえながら、少女に説明をする。また蹴られるぞと俺は少しばかりの心配をしたが、なんと彼女がその話にむちゃくちゃ食い付いた。
「えっ。ちょっとどう言うことなの?大太刀の怪人ってあなたむちゃくちゃやばいじゃない。」
俺はまたもや見ず知らずの人物から命を狙われているのである。次から次へと明かされる新事実に俺は「もしや少女に本名を明かしたのがフラグだったりして……。」などとそう思わないでもない。
ところでさ……
大太刀の怪人って……いったい誰なのよ。
取り敢えず俺は、さっきからそいつを聞きたいのだ。
この南方出身の4人は、話が大太刀の怪人の事になった途端に俺の事など忘れているかのように話し込む。
「千本目に選ばれたらしいぜ。」
「千本目?でも彼の武芸はからっきしよ。私は見ていたもの。そんなやつのことあいつが狙うかしら?」
「いや、そうでも無いだろ。あの黒服を馬ごとやったのは兄さんなんだろ?」
「えぇ。彼が頭から真っ二つに。でもその後がねぇ……」
「なぁお前ら、今にして思えばあの太刀筋、誰かに似てるような気がしねぇか?」
「いや、だからその…大太刀の…」(かき消される俺の声)
「いや兄貴。いくらなんでもそれはねぇ。あれくらいなら騎士団のアザ持が出来てもおかしくねぇだろ。」
「俺もそう思っていたんだが、騎士団は基本的に剣を使うだろ。騎士団の剣技はその太刀筋に渾身の力を乗せてぶった斬るんだ。だかららもっと切り口が雑なはずだろ。だがあの馬の切り口は綺麗に真っ二つだった。恐らく刀が使われてる。それも普通の刀では無く大刀だ。」
「そう言えば、クオンが持ってる剣。それって、よく考えたら刀よね。騎士様だから先入観で剣だって思ってたけどさ。」
「なぜ兄さんが刀を使っている?今の騎士団に刀を使うやつはいねぇだろ?」
「そうだな。昔はいたが、今はいないはずだ。今どきそんな大きな刀を使う奴って言ったら……」
「大太刀の怪人……」
4人の声が一斉にその名前を呼んだ。
「ああ、奴しかいねぇ。」
「ねぇクオン。貴方いったい、あの狂人とどんな関係があるって言うの?それにその刀……」
そして4人の顔が俺に向けられる……
狂人との関係?俺の持っている刀?
しかし俺にとってそんなことは正直どうでも良かった。
まず俺はこの4人に聞きたいことがある。
「あの…よかったら、その大太刀の怪人って人について教えて頂けないでしょうか…」
次話
『俺の知らない二人目の父親』
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