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十八話 不死の化物!吸血鬼!
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俺達がヘルメスの町に着いてから二週間程経っていた。前回の仕事からは働いていない。休暇を取っていたのだ。
働き詰めも身体に毒だし、金が無い訳ではない。
「はぁー。暇だねぇ。ボクの腕も鈍ってしまいそうだよ。依頼を探しに行かないかい?退屈で仕方がない。」
「そろそろ誰かが言い出す頃合いかと思っていたんだがリズが耐えられなかったか。確かに腕前が鈍るかもしれないよな。エリー。どうだい?そろそろ依頼を探さないか。」
「そうね。ここでボゥッとして毎日を過ごしていても兄のセルビアが見付かるわけでも無いしね。先に進むという意味合いも込めて依頼を受けに行きましょうか。」
「少年少女達…依頼も良いけどのんびりとした時間の中でひたすら自分と向き合うのもまた修行なのだよ。まああたしみたいに枯れてる人じゃないと酷かもしれないけどね。依頼を受けるも受けないも好きにするといい。あたしは付き添うよ。」
「自分と向き合う修行か。まだ俺はその領域に到達していないと思うな。レンコ…いつか参考にさせて貰うよ。さあ皆依頼を探しにヘルメス病院に行こう!」
「「「了解!」」」
俺達は宿屋を出ると目抜通りに出てヘルメス病院へと向かった。
入口から入り、依頼受付の専門カウンターに向かう。そこには先日も話した担当者が居た。
「こんにちは。担当者さん。俺達は仕事を探しに来たんだが一番高価な依頼はあるかな?」
「危険なのでもボク達は全然構わないよ。」
「やっぱり化物退治とかかしら。まあ慣れてるから全然問題ないけれど。」
「旦那方。あるにはあるがこいつは特級に危険だぜ。ここから歩いて三時間程のヘルメス病院の管理している墓地に出現した不死の化物…吸血鬼とその眷属グールの始末だ。特に吸血鬼が危険でな。もう何パーティーも奴らの眷属グールにされちまっているよ。本当に気をつけて当たってくれないと危険な相手だぜ。報酬は三万ゴールド支払う。どうだ?それでも受けるか?」
「勿論。あたし達で受けさせて貰おう。不死殺しはあたしの専売特許でね。鮮やかに刈り取らせて貰いましょう。それじゃあね。担当者さん。」
「レンコ。相当ヤバい依頼だったみたいだけど簡単に受けちまって大丈夫だったのかよ?」
「あたしは三千年間闘い続けた。不死の化物を退治した事も数知れず。今回もさっくり解決してあげる。ただし、貴方達じゃ大分苦戦するかもしれないね。まあやってみないと分からないけど。」
「散々特訓した私達で手こずる相手って本当なの?信じられないわね。そこら辺の雑魚モンスターとは格が違うって事かしら。不死の化物ね。私の魔法でも倒しきれない…。」
「ボクのアーティファクトには不死殺しの逸話が有るものも中には有るけれど大分苦しい闘いになりそうだね。吸血鬼はレンコに任せてグールの始末に集中した方が良いのかもしれない。」
「俺のエクスリボルグの億劫蓬莱神獄剣が発動すれば吸血鬼は倒せるかもしれないな。」
「あたしとしたことが!そうだ。エクスリボルグには不死殺しの必殺技が記録されていたんだってね。それを使えば確かに吸血鬼と言えど一撃かもしれないよ。まあ血を吸われれば眷属化するから、闘いはあたしに任せて欲しいけどね。」
「分かった。大人しくレンコに任せる事にしよう。さあヘルメス病院の管理している墓地に向かうぞ。」
俺達はヘルメスの町を出て北に三時間程歩いた。そこにヘルメス病院の管理する墓地があったが…大量のグールが呻き声を上げながら練り歩いて居た。
まずはこいつらを一掃しなくては…
「エリー、リズ!グールの始末を頼めるか?」
「了解!魔法でバラバラにしてやるわ!」
「ボクのアーティファクトの錆にしてやろう!」
グールの総数は百を越える。距離は百メートル以上ある。何体かがこちらに気づいて走り寄って来た。それを迎撃する魔法と幻想顕現が火を吹いた。
「アグニストライク!レイジングフレア!トールハンマー!インパクトライトニング!ヘルレイズスパーク!ヘルフレイム!」
断続的に発射される魔法がグールの群れを焼いていった。百体以上から半数が撃破。この世から消滅。残りの六十体程が大声を上げてこちらに突撃してきた。一体にでも抜かれれば最悪グールの眷属が出る。
皆に緊張が走った。
「ボクが終わらせよう!幻想顕現!万物の贋作!天理!この身に集え!神域のアーティファクトよ!全弾発射連携爆砕!行け!」
リズの頭上に何十もの門が開きそこからアーティファクトが姿を表していた。最上の出来を示す天理のアーティファクト達をグールに向かって一斉に発射する。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!
グールの胴体にそして足元にアーティファクトが突き刺さり大爆発を引き起こした。
ドカドカドワォドグワォドグワパピパピパピ!
こちらに向かっていたグールは全滅。墓場は静かになったと思ったが…
遠くから詠唱が聞こえる。…レイン!
気づくと俺達の回りに雨雲が現れ血の雨を降らした。その雨は酸で出来ており身体を焼き溶かした。
「ぐわぁ!なんだこの雨は!敵の攻撃か?身体が焼ける。駄目だ。死ぬ死ぬ死ぬ!」
「私の身体も溶けているの?骨が見えているわ。死ぬ死んじゃう!嫌よ!そんなの嫌あ!」
「くっ!幻想顕現!アイアス!アイギス!ボク達を守るんだ。そしてエクスカリバーの鞘を全員に複製貸与!」
「吸血鬼風情が一瞬であたし達のパーティーを崩すなんてやってくれるじゃないか!オモイカネデバイス!吸血鬼の位置算出!」
オモイカネデバイスが答える。
「現在の墓地から五百メートルの拠点に居ます。」
その答えを聞くと同時にレンコは消えていた。
レンコは目標の吸血鬼から百メートルの拠点へ転移。
吸血鬼はこちらに気づくと話し掛けてきた。
「なんや。あの酸の雨を浴びても平気なんてあんたさん本当に人間なんか?もしかしたら私と同じ化物じゃないんやさかい?あぁ高ぶるわぁ。殺すにはおしい。首をねじきって蹴鞠にするのも楽しいけれど…やっぱりグールにするのが一番遊べそうやねぇ。あんたさんもそう思うやろぉ。行くでぇ。」
ふっと吸血鬼は消えた。レンコは錬成で陰陽双剣…夢想天生を呼んだ。
そしてくるりと後ろに振り替える。吸血鬼の実像が現れる前に彼女は切り結び始めていた。
袈裟斬り!直突!切り上げ!袈裟斬り五連!無銘百連閃!帝釈天億連刃!夢想天生破砕!残心…
袈裟斬りに直線の突き、下からの切り上げ、袈裟斬りの五連発、一呼吸の内に繰り出される百連の斬撃、帝釈天の加護を受けた無限にも等しい斬撃。
吸血鬼の像が現れると同時にぐちゃぐちゃに切り結ばれる。剣撃の衝撃で後ろに吹っ飛ばされる吸血鬼。
「ハァハァ…あんたさん。本当に人間なん?ここまでの連撃…人間の領域を軽く超えてるで?私も本気を見せんといけないみたいやね。行くでぇ!多重分身!全員吸血開始!」
無数に分身した質量を持った残像がレンコに迫る。彼女に飛びかかるその時レンコは静かに拳を突き出してポーズを取った。
「ハァ!」
掛け声と共に全身から気を発する。その気の余波で吸血鬼の分身は全て消え去った。そして唯一残った本物の吸血鬼に必殺の一撃を叩き込む。
それは不死殺しの鉄拳。逃れられぬ死そのもの。魔力が拳に螺旋を描いて絡み付く。そして神速の拳打となり吸血鬼を貫いた。
「億劫蓬莱神獄掌!神破!」
「グバァハァハァ。私を殺せる人間がいたなんてなぁ。いーやあんたさんはもう人間やない。こっちがわの化物やねえ。それが人間の振りをして振る舞っているだけやわ。滑稽やねぇ。」
「吸血鬼よ。あたしはどんなに魔に近づこうとも心までは堕ちない。同じ不死でもあたしは最後まで人間だ。消えろ人世を乱す悪鬼悪霊よ!」
「ええやろ。今回は先に行かせて貰うわ。あんたさんに殺された多くの化物と一緒に地獄で待たせて貰うわぁ。それじゃあなぁ。ガバァハァハァ…ガクッ」
「吸血鬼は死んだ。酸性の雨に打たれていたあの子達の元に戻らないとね。縮地でもどるよ!」
酸性の雨に打たれて五分程すると雨は止んでいた。途中からリズのアーティファクトで身体を癒せていたので問題は無い。付近にレンコの姿がない。この様子だとレンコが吸血鬼を倒したんだろう。まったく重要な時は頼りっぱなしだなぁとつくづく思う。
と、レンコが戻ってきた。
「皆大丈夫かい?あたしが吸血鬼は倒した。もう大丈夫だ。皆の身体の具合だけ教えてくれ。」
「俺は大丈夫だ。エクスカリバーの鞘で大分傷は回復したよ。」
「私も大丈夫よ。一時骨が見えたりしてちょっと取り乱したけれどね。もう安心ね。」
「ボクも大丈夫だ。アーティファクトでまず自分を咄嗟に守ったからね。皆への対応が遅れたのはボクのせいだ。この場を借りて謝るよ。ごめんなさい。」
「いや、皆良くやったと思うよ。さあ吸血鬼は倒れた。エリー、吸血鬼の死体の写真だけインスタントカメラで取っておいてね。他の皆は帰り支度を始めて。帰るよ。」
俺達はヘルメスの町への帰路に着いた。皆ポツポツと話をしている。
「なあエリー。お前の胸をムフムフさせてくれないか?更にサイズがでかくなると思うぞ。」
レイジングフレア!
アーッ!喜んでぇ!
「所でレンコ。吸血鬼ってどの位強かったんだ。」
「あたしから言わせて貰うと硬いだけの雑魚かなぁ。攻撃手段結局噛みつきしかないし。寄せ付ける危険が無ければそんなに怖い相手ではないよ。ただ慎吾が闘うならそれなりに危険な相手かもしれないね。分身しながら迫ってくる吸血鬼をエクスリボルグで撃退するのって大変そうでしょ?」
「それはそうだな。俺もまだまだ修行が必要だな。大木打ちをサボらずに続けるとしよう。」
「私の魔法とかリズの幻想顕現だったら倒せたかしら?」
「そうだねぇ。打ち込んでればその内倒せただろうけど、なんたって分身して攻めてくる様な相手だ。手数が足りなくてジリ貧で負ける可能性は否定できないね。まあああいう搦め手を使ってくる相手の為にあたしが居るんだから気にしなくて良いよ。」
「ボク達には難しい相手って事だね。この世界には度しがたい敵が幾らでも居るって事だ。嫌だねぇ。」
「あたしから言わせて貰うと皆はまだまだ成長段階。もっと鍛えれば吸血鬼だって問題なしに倒せるようになるよ。日々の修行と実戦経験をもっと積む事だね。さあヘルメスの町が見えてきたぞ。依頼の終了を報告してこよう。」
俺達はヘルメスの町のヘルメス病院に到着すると依頼受付の専門カウンターに向かった。
担当者が居たので話し掛ける。
「この写真を見てくれ担当者さん。」
死んだ女吸血鬼の写真を見せた。
「確かに吸血鬼を倒したようだな。皆手こずっていた相手なのにどうやって倒したのやら…まあ過程は気にしないでおこう。結果が大事だ。ちょっと待ってくれ。」
そう言うと担当者はカウンターの奥に入っていった。暫くすると戻ってくる。その手には三万ゴールドの金貨が入った袋があった。
「約束の三万ゴールドだ。受け取ってくれ。仕事は他にもある。またのお越しを待っているぜ。木の棒の旦那達!」
俺達は三万ゴールドを受け取ると宿屋に戻り今日は眠ってしまう事にした。
現在の所持金七万ゴールドになった。
次の旅に続く
働き詰めも身体に毒だし、金が無い訳ではない。
「はぁー。暇だねぇ。ボクの腕も鈍ってしまいそうだよ。依頼を探しに行かないかい?退屈で仕方がない。」
「そろそろ誰かが言い出す頃合いかと思っていたんだがリズが耐えられなかったか。確かに腕前が鈍るかもしれないよな。エリー。どうだい?そろそろ依頼を探さないか。」
「そうね。ここでボゥッとして毎日を過ごしていても兄のセルビアが見付かるわけでも無いしね。先に進むという意味合いも込めて依頼を受けに行きましょうか。」
「少年少女達…依頼も良いけどのんびりとした時間の中でひたすら自分と向き合うのもまた修行なのだよ。まああたしみたいに枯れてる人じゃないと酷かもしれないけどね。依頼を受けるも受けないも好きにするといい。あたしは付き添うよ。」
「自分と向き合う修行か。まだ俺はその領域に到達していないと思うな。レンコ…いつか参考にさせて貰うよ。さあ皆依頼を探しにヘルメス病院に行こう!」
「「「了解!」」」
俺達は宿屋を出ると目抜通りに出てヘルメス病院へと向かった。
入口から入り、依頼受付の専門カウンターに向かう。そこには先日も話した担当者が居た。
「こんにちは。担当者さん。俺達は仕事を探しに来たんだが一番高価な依頼はあるかな?」
「危険なのでもボク達は全然構わないよ。」
「やっぱり化物退治とかかしら。まあ慣れてるから全然問題ないけれど。」
「旦那方。あるにはあるがこいつは特級に危険だぜ。ここから歩いて三時間程のヘルメス病院の管理している墓地に出現した不死の化物…吸血鬼とその眷属グールの始末だ。特に吸血鬼が危険でな。もう何パーティーも奴らの眷属グールにされちまっているよ。本当に気をつけて当たってくれないと危険な相手だぜ。報酬は三万ゴールド支払う。どうだ?それでも受けるか?」
「勿論。あたし達で受けさせて貰おう。不死殺しはあたしの専売特許でね。鮮やかに刈り取らせて貰いましょう。それじゃあね。担当者さん。」
「レンコ。相当ヤバい依頼だったみたいだけど簡単に受けちまって大丈夫だったのかよ?」
「あたしは三千年間闘い続けた。不死の化物を退治した事も数知れず。今回もさっくり解決してあげる。ただし、貴方達じゃ大分苦戦するかもしれないね。まあやってみないと分からないけど。」
「散々特訓した私達で手こずる相手って本当なの?信じられないわね。そこら辺の雑魚モンスターとは格が違うって事かしら。不死の化物ね。私の魔法でも倒しきれない…。」
「ボクのアーティファクトには不死殺しの逸話が有るものも中には有るけれど大分苦しい闘いになりそうだね。吸血鬼はレンコに任せてグールの始末に集中した方が良いのかもしれない。」
「俺のエクスリボルグの億劫蓬莱神獄剣が発動すれば吸血鬼は倒せるかもしれないな。」
「あたしとしたことが!そうだ。エクスリボルグには不死殺しの必殺技が記録されていたんだってね。それを使えば確かに吸血鬼と言えど一撃かもしれないよ。まあ血を吸われれば眷属化するから、闘いはあたしに任せて欲しいけどね。」
「分かった。大人しくレンコに任せる事にしよう。さあヘルメス病院の管理している墓地に向かうぞ。」
俺達はヘルメスの町を出て北に三時間程歩いた。そこにヘルメス病院の管理する墓地があったが…大量のグールが呻き声を上げながら練り歩いて居た。
まずはこいつらを一掃しなくては…
「エリー、リズ!グールの始末を頼めるか?」
「了解!魔法でバラバラにしてやるわ!」
「ボクのアーティファクトの錆にしてやろう!」
グールの総数は百を越える。距離は百メートル以上ある。何体かがこちらに気づいて走り寄って来た。それを迎撃する魔法と幻想顕現が火を吹いた。
「アグニストライク!レイジングフレア!トールハンマー!インパクトライトニング!ヘルレイズスパーク!ヘルフレイム!」
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ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!
グールの胴体にそして足元にアーティファクトが突き刺さり大爆発を引き起こした。
ドカドカドワォドグワォドグワパピパピパピ!
こちらに向かっていたグールは全滅。墓場は静かになったと思ったが…
遠くから詠唱が聞こえる。…レイン!
気づくと俺達の回りに雨雲が現れ血の雨を降らした。その雨は酸で出来ており身体を焼き溶かした。
「ぐわぁ!なんだこの雨は!敵の攻撃か?身体が焼ける。駄目だ。死ぬ死ぬ死ぬ!」
「私の身体も溶けているの?骨が見えているわ。死ぬ死んじゃう!嫌よ!そんなの嫌あ!」
「くっ!幻想顕現!アイアス!アイギス!ボク達を守るんだ。そしてエクスカリバーの鞘を全員に複製貸与!」
「吸血鬼風情が一瞬であたし達のパーティーを崩すなんてやってくれるじゃないか!オモイカネデバイス!吸血鬼の位置算出!」
オモイカネデバイスが答える。
「現在の墓地から五百メートルの拠点に居ます。」
その答えを聞くと同時にレンコは消えていた。
レンコは目標の吸血鬼から百メートルの拠点へ転移。
吸血鬼はこちらに気づくと話し掛けてきた。
「なんや。あの酸の雨を浴びても平気なんてあんたさん本当に人間なんか?もしかしたら私と同じ化物じゃないんやさかい?あぁ高ぶるわぁ。殺すにはおしい。首をねじきって蹴鞠にするのも楽しいけれど…やっぱりグールにするのが一番遊べそうやねぇ。あんたさんもそう思うやろぉ。行くでぇ。」
ふっと吸血鬼は消えた。レンコは錬成で陰陽双剣…夢想天生を呼んだ。
そしてくるりと後ろに振り替える。吸血鬼の実像が現れる前に彼女は切り結び始めていた。
袈裟斬り!直突!切り上げ!袈裟斬り五連!無銘百連閃!帝釈天億連刃!夢想天生破砕!残心…
袈裟斬りに直線の突き、下からの切り上げ、袈裟斬りの五連発、一呼吸の内に繰り出される百連の斬撃、帝釈天の加護を受けた無限にも等しい斬撃。
吸血鬼の像が現れると同時にぐちゃぐちゃに切り結ばれる。剣撃の衝撃で後ろに吹っ飛ばされる吸血鬼。
「ハァハァ…あんたさん。本当に人間なん?ここまでの連撃…人間の領域を軽く超えてるで?私も本気を見せんといけないみたいやね。行くでぇ!多重分身!全員吸血開始!」
無数に分身した質量を持った残像がレンコに迫る。彼女に飛びかかるその時レンコは静かに拳を突き出してポーズを取った。
「ハァ!」
掛け声と共に全身から気を発する。その気の余波で吸血鬼の分身は全て消え去った。そして唯一残った本物の吸血鬼に必殺の一撃を叩き込む。
それは不死殺しの鉄拳。逃れられぬ死そのもの。魔力が拳に螺旋を描いて絡み付く。そして神速の拳打となり吸血鬼を貫いた。
「億劫蓬莱神獄掌!神破!」
「グバァハァハァ。私を殺せる人間がいたなんてなぁ。いーやあんたさんはもう人間やない。こっちがわの化物やねえ。それが人間の振りをして振る舞っているだけやわ。滑稽やねぇ。」
「吸血鬼よ。あたしはどんなに魔に近づこうとも心までは堕ちない。同じ不死でもあたしは最後まで人間だ。消えろ人世を乱す悪鬼悪霊よ!」
「ええやろ。今回は先に行かせて貰うわ。あんたさんに殺された多くの化物と一緒に地獄で待たせて貰うわぁ。それじゃあなぁ。ガバァハァハァ…ガクッ」
「吸血鬼は死んだ。酸性の雨に打たれていたあの子達の元に戻らないとね。縮地でもどるよ!」
酸性の雨に打たれて五分程すると雨は止んでいた。途中からリズのアーティファクトで身体を癒せていたので問題は無い。付近にレンコの姿がない。この様子だとレンコが吸血鬼を倒したんだろう。まったく重要な時は頼りっぱなしだなぁとつくづく思う。
と、レンコが戻ってきた。
「皆大丈夫かい?あたしが吸血鬼は倒した。もう大丈夫だ。皆の身体の具合だけ教えてくれ。」
「俺は大丈夫だ。エクスカリバーの鞘で大分傷は回復したよ。」
「私も大丈夫よ。一時骨が見えたりしてちょっと取り乱したけれどね。もう安心ね。」
「ボクも大丈夫だ。アーティファクトでまず自分を咄嗟に守ったからね。皆への対応が遅れたのはボクのせいだ。この場を借りて謝るよ。ごめんなさい。」
「いや、皆良くやったと思うよ。さあ吸血鬼は倒れた。エリー、吸血鬼の死体の写真だけインスタントカメラで取っておいてね。他の皆は帰り支度を始めて。帰るよ。」
俺達はヘルメスの町への帰路に着いた。皆ポツポツと話をしている。
「なあエリー。お前の胸をムフムフさせてくれないか?更にサイズがでかくなると思うぞ。」
レイジングフレア!
アーッ!喜んでぇ!
「所でレンコ。吸血鬼ってどの位強かったんだ。」
「あたしから言わせて貰うと硬いだけの雑魚かなぁ。攻撃手段結局噛みつきしかないし。寄せ付ける危険が無ければそんなに怖い相手ではないよ。ただ慎吾が闘うならそれなりに危険な相手かもしれないね。分身しながら迫ってくる吸血鬼をエクスリボルグで撃退するのって大変そうでしょ?」
「それはそうだな。俺もまだまだ修行が必要だな。大木打ちをサボらずに続けるとしよう。」
「私の魔法とかリズの幻想顕現だったら倒せたかしら?」
「そうだねぇ。打ち込んでればその内倒せただろうけど、なんたって分身して攻めてくる様な相手だ。手数が足りなくてジリ貧で負ける可能性は否定できないね。まあああいう搦め手を使ってくる相手の為にあたしが居るんだから気にしなくて良いよ。」
「ボク達には難しい相手って事だね。この世界には度しがたい敵が幾らでも居るって事だ。嫌だねぇ。」
「あたしから言わせて貰うと皆はまだまだ成長段階。もっと鍛えれば吸血鬼だって問題なしに倒せるようになるよ。日々の修行と実戦経験をもっと積む事だね。さあヘルメスの町が見えてきたぞ。依頼の終了を報告してこよう。」
俺達はヘルメスの町のヘルメス病院に到着すると依頼受付の専門カウンターに向かった。
担当者が居たので話し掛ける。
「この写真を見てくれ担当者さん。」
死んだ女吸血鬼の写真を見せた。
「確かに吸血鬼を倒したようだな。皆手こずっていた相手なのにどうやって倒したのやら…まあ過程は気にしないでおこう。結果が大事だ。ちょっと待ってくれ。」
そう言うと担当者はカウンターの奥に入っていった。暫くすると戻ってくる。その手には三万ゴールドの金貨が入った袋があった。
「約束の三万ゴールドだ。受け取ってくれ。仕事は他にもある。またのお越しを待っているぜ。木の棒の旦那達!」
俺達は三万ゴールドを受け取ると宿屋に戻り今日は眠ってしまう事にした。
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次の旅に続く
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