魔王様!勇者元気に送還がいい

八雲 全一

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レベル4 女神教の脅威

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女神教徒…我が領地の中で最大の勢力を誇るカルト宗教団体だ。教義としては女神に絶対服従、魔王廃滅と言った所だろうか、聖恩協会が各女神教徒への窓口になっている。人間どもは私達魔族に統治されていないと自分たちで争いだし、何度も人類滅亡を繰り返しているのに私達の事を悪魔や邪教の手先として叩くのは大好きだ。いや実際その通りなのだが、それでも叩かれるとムカつくのが真理と言えよう。
彼らを地上から掃滅する作戦は他の魔王との魔王会議でも度々上がる議題なのだが、如何せん人間どもの人口のほぼすべてが女神教である。恐ろしい事実だ。そこから魔王城に突貫してくる時のゾンビのような再生力に繋がるのである。
いやゾンビの方がよっぽど可愛げがあるかもしれない。ゾンビは首を撥ねればおしまいだが、女神教徒は信仰の受容機関である脳髄を完全に破壊しなければかなり強引なリザレクションをする。何回でも何十回でも…本人の意思が萎えなければ蘇生するのだ。魔王を倒すという誓いを立てた旅の途中でも加護は発動するようだが、魔王城の中でのあいつらの強引な加護は見るに堪えない酷さである。
目の前に沸いては消えまた沸く人間どもの中でも女神教徒の狂信者は非常に危険な存在だ。神の加護をじゃぶじゃぶ湯水を使うように発動させ自分がまるで神の代理人のように振舞う。聖恩協会のエクソシストがそれに該当するが、奴らのターゲットはアンチ女神の人里に出没する化物に限られているようなので魔王城ではとんとお目にかからない。
しかし究極の狂信者として魔王城を避けて通るのは筋が立っていない。そんな強烈な妄想ともいえる思い込みから魔王城に攻め入ってきた一人のエクソシストの物語をするとしよう。
「ロキ、朝食。」
「食べても太らないパンとソーセージをお持ちしました。」
「ご苦労。」
私は寝ぼけ眼で食事を胃の中に入れた。魔王としての執務にはまだ早い明け方六時頃だ。何で魔王の私が規則正しく生活せにゃならんのだ…と思うが、上から下まで執務時間がきっちりこの魔王城では決まってしまっているので、私には為す術もない。
あー仕事したくない。このまま魔王城が爆弾かなんかで吹っ飛んで無くならないかな。部下のミスの尻拭いも、勇者の相手をすることもしなくてもいい理想の楽園に行きたい。天界の所領だろうから他の魔王と一緒に攻め込まないかんだろう。
私は朝から妄想を加速させていた。目の前の現実からの逃避…魔王は執務が最大の敵なのだ。とにかく量が多すぎる。エビルゴッドよ!何とかしてくれたまえ。ロキは私の事を冷たい目線で見ている。じとじと目。美形なので様にはなるのだが、それよりも私は理解者が欲しい。
「ロキ!仕事したくない。遊びに行かないか?魔王城を抜け出してどっかにさ。」
「駄目です。魔王様がいないとまた仕事が止まります。貴女もシステムの一環なのです。逃げ出す事は許されません。」
「ロキちゃん!そんな硬い事言わないでよ。私だって羽を伸ばしたくなる時があるのよ。分かるでしょう?」
「私は完璧で瀟洒な悪魔なので分かりかねますね…お食事下げましょうか。」
「はい。分かりました。魔王ラミア、仕事を致します。」
駄目だ。やはりロキのガードは固い。仕事をサボって遊びに行っている場合ではないのか…頭では分かっているんだけどね。フゥ―仕方ない。九時から仕事しますか。魔王城は九時~十七時勤務である。警戒のオークやロキも一緒。まあといってもロキは契約の関係からずっと一緒に生活しているので勤務時間も何もないのだが…
警戒のオークの悲鳴が聞こえてきた。えっ朝っぱらから勇者?
ヘッドセットで現場につなぐ。…辺り一面のオークの死骸の映像だ。クソやってくれるじゃないか。
ワープゲートをオンにして重装備のオークを大量に中庭に投下する。ショットガンや対物狙撃銃を装備したタイプだ。
「送っていただいた現場のオークです!対象は一名。エクソシストです。」
「随分血気だっているエクソシストだな。ラミアの名の元に勅命!撃って撃って撃ちまくれ!」
ショットガンを持ったオークが突貫し、その間に対物狙撃銃を持ったオークが狙撃を行った。
対象のエクソシストは中庭に佇み二振りの刀で構えを取っている。狙撃のタイミングに合わせて刀を振りいなす。ショットガンを持ったオークは発射すると同時に二振りの刀に作物を刈る様に狩られてしまう。
狙撃を行っているオークには祝福儀礼済投げナイフで射殺。攻撃の合間合間に銃撃を受けるもののエクソシストは苦悶の声すら上げない。
何重にも施された自動回復法術により、肉体が治癒していく。
ラミアは中庭にサイクロプスとミノタウルスを投下した。エクソシストの背後を取るが…
エクソシストの斬撃!九連閃刃!サイクロプス即死!ミノタウルスの攻撃!斧を振り下ろす!二振りの刀でエクソシストはいなす。そしてミノタウルスの首を切り上げで撥ねた。
「うちの精鋭部隊が話になってないわね。」
「あそこまでの強さとは…既に人間をやめてしまっていると言っても過言ではないでしょう。」
「加護の化物。女神の分霊を降ろして暴れているのと同じか…」
「ほぼ人間側の最高峰の戦闘マシーンと同義です。お気をつけて…」
「私が出るしかないわね。やりますか。朝食後のこなしに丁度いいわ。まあこっちの信仰の加護は直接だから…出力勝負では劣るつもりはないわね。」
中庭に遠隔射撃!カオスヘルライジング!レーヴァティン勝手に借りるわよ!ストライクイグニッション!
神刀を軌道衛星上から投下する。貫かれるエクソシスト。普通なら即座に絶命するが…リアクティブリザレクション!エクソシストの体が爆ぜその場で練りあがる。
なるほど普通に生きたり死んだりする所をあんたは越えちゃってるんだ。
私も中庭に出る。眼前にエクソシスト。超能力首絞め。カオスチョーク!
エクソシストは私に首を絞められながらも短機関銃を取り出し乱射してきた。弾が切れると即座にナイフに切り替え私をハチの巣にしようとしてくる。
グラヴィティフィールド!遠隔射撃全無効化!
「そんなんじゃ私には届かないわよ本気で来なさい!」
「汝女神アイギスに背く、化物なりし。加護を与え給え。偉大なる女神アイギスよ!」
神の雷がエクソシストと私を穿つ。エクソシストはカオスチョークの解除…私は全身が焼かれる痛みを味わっている。
エクソシストは二振りの刀で私への斬撃を試みる。クロス斬!袈裟斬り!切り上げ!卍斬!燕返し!無銘三錬突!
全てを素手で受けきることは出来ず何発か貰ってしまう。後ろに距離を取る。私の左腕切断。
息を整える。エクソシストはさらに追撃を掛けようとしていた。
「貴様を殺しきるにはこいつしかなさそうだな!エクソシスト!よく人の身でここまで練り上げた。驚嘆に値するぞ。」
私は右腕にカオスオーラを充溢させた。左腕は即座に蘇生。エクソシストに飛び込む!縮地!
カオスハートブレイク!私は眼前のエクソシストの心臓を防御の上から引きずり出した。何重にも神聖保護が掛けられているがおしまいだ。握りつぶす。
エクソシストは女神の加護の元蘇生を試みているようだが、全身の臓器が信仰の受容機関と化していたらしく、最重要部の心臓を抜き取られてしまった事で活動不能に陥った。
「フゥ片付いたな…何故エクソシストが魔王城に乗り込んできたのかは謎だったが、これでようやく仕事が出来るな。」
時刻は十時半を回ろうとしていた。
「ロキ。エクソシストの死体の片づけを頼む。どこかの聖恩協会にでもワープで放り込んでおいてくれ。」
「承知しました。最近は強い人との戦いが続いていますね。」
「ああ。あいつも殺しておくには惜しい逸材だよ。吸血鬼共が震えあがる姿が今から見えるわね。」
「フフッ魔王といい勝負をするエクソシストなど聞いた覚えがありません。」
「元々攻めてこないしな。あんな奴らに集団で狩られるなんて、野良の悪魔や妖魔達に同情するよ。」
「彼が特別強いとは思わないのですか?」
「奴の戦い方は個性を消し去った戦い方だった。女神教では量産されているって事だ。ああいう化物人間がな。」
「恐ろしい話ですね。魔王様の対策は何かございますか?」
「聖恩協会への課税強化かな。あんなびっくり人間を量産できるのだからさぞかし金があるんだろう。道端で倒れた冒険者からは所持金の半額を巻き上げると聞いた事もあるしな。」
「あまり、風当たりを強くすると大量のエクソシストを送り込まれるかもしれませんよ?」
「その時はその時さ。私は行き当たりばったり。深く考えないようにしているんだ。数百年上手く行ったんだ。これからも大丈夫さ。」

エクソシストの恐ろしさを分かっていただけただろうか?今は大丈夫だが本当の世界の危機を私が引き起こしたら、あんなエクソシストが何人も私の元へと送り込まれるだろう。まあそれはそれで楽しみだがな。
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