魔王様!勇者元気に送還がいい

八雲 全一

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レベル5 漁師

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「これ以上望むものはありません!どうでしょうこの魔界スライサーの切れ味!魔界マグロや生意気な人間を一刀両断できます。しかも常に刃を水が流れていますので、血糊や脂がつきません!何ともお買い得なこちらの商品!今ならなんと一万魔通貨でお取り寄せできます。どう思いますか?ジェニファーさん。」
「私のような小癪で醜く下種な人間を一刀両断可能なのは特にポイントが高いと思います。出がけに限って侵入してくる私みたいな人間って煩わしいですよね。そんな時ように何と魔界レイザーガンもお付けします!これで遠距離のうるさい羽虫も一撃死!私もフルアーマー状態で撃たれる試験に参加したのですが、結果は驚き!アーマーを貫通して即死しました。何という事でしょう!私も大怪我くらいかな?と思っていたんですけど流石にびっくりしました。こちらもセットになったお値段気になりますよね?なんと魔界スライサーと魔界レイザーガンセットで一万魔通貨となっております。安い!」
…魔界テレビの通販番組だ。最初は料理に使う料理道具だと思ったが、結局対人殺傷兵器の番組になっている。人間を捕まえて実証しているのが悪魔的でポイントが高い。一応人間も見ている番組なのだが色々な意味で大丈夫なのだろうか?
私としてはガトリングガンとか名刀を紹介して欲しかった。料理道具は料理道具で分かれているとポイントが高い。これではどっちつかずである。中途半端なのは良くないと思うな。
ロキがこちらを一瞥してすぐに目をそらした。何やらニマニマしている。気持ちの悪い悪魔だ。問い詰めてみよう。
「何をそんなににやにやしているんだ?ロキ。」
「ぷぷっ…いえ、なんでもございません。気にしないでください。魔王様。」
「それ絶対私の事馬鹿にしている笑いだよな…ロキ、私は何でもお見通しだ…白状しなさい。」
「人間に向かって魔界スライサーを試そうとした魔王様が間違って自分の腕を切り落とすシーンを想像して噴き出してしまいまして…」
「何でそんなことになってるのよ!私は誤って自分の腕を切り落とした事などはない!」
「だからこそです。新たなる魔王様失敗シリーズ妄想してしまいました。」
「あんたは本当に失礼な悪魔ね。魔界に強制送還してあげましょうか?」
「千年契約がまだ残っていますよ。後幾星霜超えても一緒です。魔王様。」
「あのークーリングオフは利きませんか。この失礼な悪魔に限界を感じているんですけど。普通、魔王見て誤って腕切り落としそうとか思っても言わないでしょ。言い訳を考えなさいよ。もうちょっとお料理姿が可愛らしそうだと思ったとかさ、色々あるわけじゃない。」
「そうですね。対処法として記憶しておきます。」
「何で私が面倒なクレーマーみたいな扱いになっているの?おかしいのそっちでしょうが!」
「そうですけれど、部下の過ちを暖かく見守るのが魔王様ではないでしょうか。」
「害意マックスなんだよ!あんたの過ちとか仕込みとかは!どんだけ私を普段からオモチャにしている事か…カリスマが台無しだよ!これ外に聞こえてないでしょうね。私もキャラを捨て去る時が来ちゃってるくらいムカついてんのよ!」
「あっスピーカーオンのままですね。ヘッドセットを着けっぱなしだったみたいです。」
「クッソ!どうしてそうなるのよ!ギャグマンガみたいにピーピー怒っているのがばれちゃったじゃない。」
「素をさらけ出すのも可愛さアピールの一環になるのではないでしょうか。」
「いや私ってメチャクチャ口うるさいおばさんみたいのが素じゃない。いくら見た目が若くてぴちぴちの女の子でも、性格のカバー効かないのよ。」
「ほらほらそう怒鳴られますとまたイメージが悪化しますよ。警戒中のオークさんはどう思いますか。」
ロキは霊的な通信回線…霊信回線を無理やりオークにつないで会話に巻き込んだ。オークよ哀れ、でも変なこと言ったら多分私怒るね。
「えっそんな事はないです。魔王様はいつも通り美しいと思いますし、必要に応じて怒ることも大事ではないでしょうか。」
「チっつまらないですね。まあ良いでしょう。今日の人間の襲撃はまだないのですか?」
「ロキ様、ご期待に沿えず申し訳ありません。今日はまだですね。警戒を続けます。」
警戒中のオークはそう言うと霊信回線から消えていった。
フー落ち着け私。いつものロキのちょっかいだ。こんなものを気にしていたら魔王としては生きていけない。もっとどんと大きく構えるべきなのよ。
ロキは私をいじくるのが大好きなようで四六時中悪戯を仕掛けてくる。勘弁してほしい。契約を結ぶときに一番静かで言う事を聞きそうという理由でロキを選んでしまった事を私はいつも後悔している。もっと騒がしいけどおおらかで優しい悪魔を選ぶべきだったと思う。しかし悪魔は大抵性格に一癖二癖あるものだ。どの悪魔も使いこなすのは並大抵の努力ではないだろう。
戦闘能力自体はロキに依存していないのは幸いだ。そこまで依存していたらロキの悪戯や諫言にきっと言い返せなくなってしまう。
気付くと魔界テレビの通販番組も終わっていた。通販番組からここまで私を激怒させてほくそ笑むのだ。ロキ恐るべし悪魔。…まあちょっとは楽しかったけど…
「魔王様。警戒中のオークから霊信が来ています。繋ぎますか?」
「ええ。私の悪評以外だったら繋いで。」
「了解です。公平に意見を聞きましょう。」
こいつ…どこまでも食えない奴だ。ロキ…!
「えー魔王様は大変お美しく、立派なご意見を述べるのが得意な方だと思います。魔王様、お取込み中の所、大変恐縮ですが人間の侵入です。どうも漁師が侵入してきたようです。」
「お褒め頂きありがとう。漁師ってなんかの陳情?今なら気が立っているから直接相手にしてあげるわよ。」
「いえ…あくまで魔王様を討ち取りに来たと主張していますね。」
「そう、まあ良いでしょう。私が相手をするわ!」
カオスワープ!私は中庭にいる漁師の前に降り立った。漁師はブローニングでしこたまハチの巣にされたようだがまだ気勢は折れていないようだった。
「なぜ私に挑むんだ?愚かなる人間!」
「魔王の放つ邪悪なオーラのせいで近場の漁場で魚が取れなくなったのだ。お前を倒さないと魚が取れない。だからここにいる!」
「何でもかんでも私のせいにするな人間!消えろ。」
カオススパーク!混合属性の光線が漁師を穿った。即死後、即座に蘇生。
「ガはッ強い…それでも俺達の海を取り返すんだ。海で魚が取れないのは、貴様のその邪悪なオーラが海を汚染しているせいなんだ!やるぞ。」
漁師は銛を振りかざし特攻してきた。何でもかんでも私のせいにされても困る。人間は愚かだ。そしてその愚かしさゆえに肉の器に固執するのだ!
「貴様らの海がどうなろうが知らぬわ!とどめ!」
ツインカオススパーク連携カオスウィドウスラッシュ!
漁師は二重の破壊光線に貫かれた後、霊刃の袈裟斬りによって完全に絶命した。
しかし早くも女神の加護によって蘇生しながら立ち向かってくる。
「打ち克つ!それでも打ち克つ!この苦境に!」
逆境レベル九!ただの銛が女神の加護により聖剣並みの輝きを放ち始めた。
「魔王様。致命の一撃をそのままだともらいますよ。」
ロキが真剣な表情で告げる。
「これだから女神教の信徒は嫌なのよ。なんでも魔王の所為。打ち克つという概念による究極の補正。」
漁師は再度突貫してくる。無銘銛撃!霊刃で叩き落す。
ダーインスレイブ!オーバーロード!伝説の邪剣を霊刃から顕現し、漁師を打ち砕く一撃を加える。
ダークネスカオスフィフスパーキング!目にも止まらぬ五連続の邪悪な剣閃は銛ごと漁師を打ち砕いた。最後の希望が砕け去り絶望する漁師…
「所詮貴様の八つ当たりだったという事だ。悔しかったら養殖でもして生計を立てるんだな。」
「俺達は自然の魚を皆に届けることに誇りを感じていたんだ。貴様の邪悪なオーラで海の魚たちが絶滅しかけているのだ!お前を倒さないと海が返ってこないんだ。」
魔王に縋り付く漁師。
「その汚らわしい手で触るな!この下種!愚かなる人間よ!良かろう。そこまで言うなら貴様の海が不漁になった原因を調べてやろう。」
「何故人間に肩入れするのです?魔王様。」
「ロキ!私は何でもかんでも私の所為にする風習は仕様がないと思うが嫌で嫌で仕方がないのだ。さあ貴様らの家に帰るんだな人間。」
漁師はオーク達に羽交い絞めにされて外に放り出された。これで入ってこようとは思わないだろう。
数ヶ月後…結局のところ不漁の原因は不明だが、別の漁場の漁師たちによる密漁の乱獲が可能性としては高いという事だった。やはり私の所為では無いではないか。調査結果を添えた抗議文をその漁師が住む漁村に送っておいた。以後、その漁師の顔を見る事は無いがまれに海産物の差し入れが届くようになった。フム、何でもかんでも私の所為では無いと分かればいいのだ。分かればな…まあ家には分かったうえでおちょくってくるロキという存在がいる。それに比べれば人間など可愛いものだろう。
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