6 / 16
魔王と勇者
6、最後の戦い
しおりを挟む「魔王様、勇者が攻めて参りました」
物々しい翼の生えたガーゴイルが、魔王の座る玉座の前で跪きながら報告した。
「‥‥勇者マルチナが来たか」
玉座で足を組み頬杖をついている魔王。
「Lv99の勇者マルチナ率いる3人パーティです」
魔王は嬉しそうに笑みを作る。
「‥‥‥私も入り口前を守りましょう」
ガーゴイルは一礼すると外に出ようとする。
「‥‥‥良い。余の創り出した最強の勇者だ、奴らとは小細工抜きで正面から戦う。さあ‥‥扉を開け颯爽と現れる勇者達を出迎えようではないか」
トントン!
トントントン!
トントントントン!
ドンッドンッドンッ!!!
‥‥。
ギギギギギッ!
魔王の間の扉が開いた。
ファッションセンスの欠片もない、派手なマントに身を包む勇者マルチナのパーティーが颯爽と現れた。
「よく来たな勇者マルチナと仲間達よ。二度と歯向かえぬよう‥‥」
「どうして開けてくれないんだ!」
魔王の決め台詞の途中で勇者マルチナが口を挟む。
「‥‥‥なんかもう‥‥色々と雰囲気が台無しだ‥‥‥」
「何故だ!もう私の事はどうでもよくなったのか‥‥‥‥この指輪はやっぱり嘘だったのか!」
仁王立ちの勇者マルチナ。
少し悲しそう。
「勇者マルチナよ、其方らは強くなった。余も本気でいくぞ」
魔王は嬉しそうに笑みをつくる。
「‥‥‥嫌いではないんだな?」
「‥‥‥‥そんな話はしておらん」
「どっちなんだ、はっきりしろ!」
勇者マルチナの罵声が響く。
「‥‥‥こういう場合、どうするのだ?」
ガーゴイルに呟く魔王。
「愛してると叫べばよろしいかと」
ニヤニヤとガーゴイル。
「‥‥‥それでない事くらい余でもわかる。‥‥怒るぞ」
元村娘の2人も、キラキラした目でこちらを見ている。
それに気付いた魔王は溜息を吐いた。
「‥‥‥どうするのだ、戦わんのか?」
「戦うに決まってるだろう!」
勇者マルチナはそう言うと、勇者の剣を構えた。
戦士レナと僧侶メリルも武器を構える。
「‥‥それで良い」
魔王はニヤリと笑うと、恐らく最後になるであろう決め台詞を吐く。
「よく来たな勇者マルチナと仲間達よ。二度と歯向かえぬよう、其方らにこの世の物とは思えぬ絶望を味合わせてくれるわ」
「魔王、覚悟!」
勇者と魔王の壮絶な戦いが今始まる。
「次のターンでブレスを吐くぞ。耐えてみよ」
「メリル、結界を!」
「任せて!」
激しい攻防は続く。
「‥‥まだだ。まだ足りぬぞ、勇者マルチナ」
「くそ、やっぱり強い!」
勇者の剣での攻撃を、容易く受け流す魔王。
「‥‥魔王の雷を喰らえ」
「行って、マルチナ!私が全て受け止めるわ!」
戦士レナの声と共に、勇者マルチナは渾身の力で魔王に斬りかかった。
「‥‥‥やるな」
深々と身体を斬りつけられ、片膝をついた魔王は自分の体力が100を下回った事に気付く。
同時に自らの死期を悟った。
笑みを浮かべる魔王。
「よくぞここまで強くなったな勇者マルチナよ。‥‥‥よく聞け、これが余の最後の助言だ」
「‥‥どうした突然」
勇者マルチナは構えを解き、魔王を見つめた。
「余の体力が100を切ると、邪神が復活し弱った余を殺すイベントが発生する。其方らに宣戦布告すると邪神はすぐいなくなる」
「‥‥‥なんだそれは!」
「もう余り時間が無い‥‥聞け。其方らはこの場で邪神と戦う事にはならない。街に戻って装備などを整えしっかり準備してから挑め。‥‥邪神は余より数段強い筈だ」
「貴方は死ぬのか?!」
「‥‥今の余に、邪神に抗う力は残っておらん」
刹那、魔王の間に閃光が走る。
無数の閃光は次第に集約し魔王の間の中心に。
集まった閃光は形を作り、それが現れた。
禍々しいオーラが魔王の間を支配する。
邪神の復活。
「‥‥‥来たか」
勇者マルチナの背後に現れた邪神に目をやる魔王。
漆黒の羽で宙を舞い、黒い球体の魔力を溜めた大きな4本の腕が魔王に向けられていた。
「‥‥‥‥」
勇者マルチナも無言で振り向いた。
目が据わっている。
「‥‥‥‥勇者マルチナ、妙な事を考えるなよ。其方も体力は残っておらんだろう」
「‥‥‥うるさい」
邪神に斬りかかる勇者マルチナ。
しかし剣が邪神に届く事はなく、勇者マルチナは邪神の周りに現れた黒い結界に吹き飛ばされ魔王の前に転がった。
「無茶をするな。今の邪神は結界に守られておる、攻撃は当たらん。邪神が去ったら結界を解く方法を探せ」
「うるさい!」
勇者マルチナは立ち上がり、魔王を守るように剣を構え邪神を睨む。
「‥‥‥最後の最後まで手のかかる勇者だ」
邪神が魔法を放つのと同時に、魔王は勇者マルチナを弾き飛ばした。
背後からの魔王の攻撃に抗う事が出来ず、弾き飛ばされた勇者マルチナ。
倒れ込む彼女が顔を上げ目にしたのは、黒い炎に焼かれ崩れ落ちる魔王の姿であった。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる