新しいルートでご案内致します。目的地は、君の隣(きみとな)

masuta

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第一章:出会いの章 〜導きのルート設定〜

第二話 もう限界、無理。無理。壊れる寸前の回路

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 一方の謎の美少女は――これでよし、バーン……辺り一面は真っ白に。

 ……しかし、暑い。暑い。「あついーい……」もうびちょびちょ。車内は何℃なのかしら。四十度を超えている。  頭が……フラフラする。思考がまとまらない……。

 そもそも、この人、バカなのでしょうか。運転席側でいいから、車、エアコンをつけてよ。脇や額から汗が滴る。  もう、ビーチポンチョまで、びちょびちょ。ぬいじゃえ。なかなか脱げない。汗でべとべと。もう、気持ち悪い。  少し匂うかしら……。中に水着を着て正解だった。店長の勧め。

 新車がわたしの汗で汚れちゃう。汗で汚れる、シミになる。  ――新車にシミ、わたしのシミ。この表現、卑猥ね。「ムフフ……」

 ふー、これでなんとか、暑さはしのげる――わけがない。暑い……。

 マイクも汗でびちょびちょ。使えるのかしら、心配。  すでに、一時間は居た。密閉された車内に。

 四十度は超えているはず。店員さんもわけのわからないことを言っているし、動揺しているのは感じ取れたが、紙の指示ってなによ。納車された後部座席に、カーテンを閉められ、こっそりと潜む。暑い。

 ――紙を読むと、ドキドキが止まらない。

 楽しみ! もう一度、紙に書いてあることを見直す。「何これ? おもしろい!」思わず吹き出しそうになった。我慢、我慢。こんなこと、やるの。ドッキリ的なのかしら? 

 とても楽しくなってきた。黙読し、暗記した。

 ……ペースはこんな感じのほうが、良いわね。とりあえず、これで合わせてOK! こんな感じかなと、あれ、ここなのね。あれ、頭がフラフラしてきた。

   ***

 話は数時間前に遡る――。

 一時間ほど前であろうか、店舗から出発。近いわね、きれいなお家。マンションであろうか。  店長と営業さんが、誰かと話していた。エンジンはかかりっぱなし。エアコンのおかげで、後部座席をつけていなくても涼しい。

   ◇

 何か話が終わったらしい。別の車で、行っちゃった。  え、エンジン切るの。切っちゃうの。私、私、ここにいるのよ。「おーい戻ってこーい」

 新車よ、納車されたのよ。普通嬉しくて、すぐに乗るでしょう……。

 しかし、暑い。エンジンを切ったとたん、車内の温度が急上昇。先ほどまでの涼しさから一変した。  あの人バカなの。実はこの新車、転売用とか。もしそうだとしたら、この紙の指示になんの意味があるのよ。

 暑い。汗が滴る。びちょびちょだ。  スポーツドリンクを一瓶渡されていたが、すぐに飲み干してしまった。暑い、暑い、暑い。このまま外に出ちゃおうかな……。

 紙の指示通りにしないとダメなのかな。遂行しないと店長の首が飛ぶって言ったし……。  このままだと、わたしの意識が飛んじゃうわ。暑い。汗が滴る。

 思考回路が支離滅裂、体の限界を感じた、その時である。

   ◇

 ――そして現在。限界は、すぐそこまで来ていた。

 きた、きた、きたー。

 ついに来た。なにやってるのよ。外観なんてどうでもよいでしょう。早くエンジンかけなさいよ、エアコン。エ・ア・コ・ン! 

「はあ?」写真撮ってる場合じゃないのよ。こっちは、暑すぎて……もうだめ。  汗が滴る。脱いじゃえ。汗がべとついて。もう、髪もぐしゃぐしゃ。手櫛で整える。ビーチポンチョも脱いで、恥ずかしいけれど水着姿。それでも、汗が滴る。ふー。少しは楽になったかな。

 なっていなーい。この酷暑から早く解放して。何やってるのよ。早く車に乗って。

 おーい、と心の中で何度も叫ぶが……次第に気が遠くなってきた。その時、バッタン。

 お! きたー、入ってきた。

 おいおい、エンジンのかけ方もわからないのか。ど素人! マイク、マイク。 「スマートフォンをかざしてください」  隙間からのぞき込むと、スマートフォンをかざし、エンジンがかかった。

 やった、エアコンつけてよ。バカなんじゃない、この人。

 新車にわたしの汗が染みこむ。一番初めに車を汚したのは、わ、た、し……。表現次第では、このエロス。  ――そういうことに入り浸っているわけではなく、エアコンを! お願いします。

   ◇

 いきなり運転するの。少しだけ窓が開いたが、入ってくるのは熱風。紙、マイク。私は慌てた。店長が言っていた通りに行動すれば良いと、自分に言い聞かせる。

 わたしの役目は、ナビをすること。暑い。正直、意識がもうろうとしてきた。頭がフラフラする。  この暑さは、やばいやつ。なんとか、紙に書かれたシナリオ通り終わった。紙がもう汗でぐしょぐしょだ。

 文字はわたしの汗で、もう見えていない。  これ以上は意識が持たない。目の前の光景が歪んで見える。

   ◇

 あとに書いてあることは、わかったわ。薄れゆく意識のなか、最後はこれで終わらせると集中した。  そして、これだったわね。

「美野里……」  え。嘘! 本当に――。 「……」  それは後に。まず、この酷暑から解放されないと、意識が……飛ぶ。  あと少し。これを、こうすると。

「――ドーン! バーン! シューン!」

 真っ白、何も見えない。手探りで、ここ、こっちよね。えーい、ここを開けて前に。……何かぶつかった。よいしょと、ここで良いはず。

 座った。視線を感じる……。いいわ、暑いんだもの。

 すかさず、エアコンのボタンを押した……。ゴオーッ、と物凄い冷風が直撃する。生き返る。  涼しい。汗が急激に冷える。気持ちが良い。物事が整理できるくらいに、スッキリしてきた。「ふうー」

 ずっと……この時を待っていた。

 待っていたのに……彼は気が付かない。じっと見られている。どうして、わたしのこと、忘れてしまったの。……

 わたし、わたしよ……。  これから、どうになってしまうのであろう。  でも、私は、決めているの。そう、あの日からずっと……。
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