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第一章:出会いの章 〜導きのルート設定〜
第三話 最近のカーナビは女の子が出てくる?
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――カーナビから女の子が出てきた! はい? 隣には、美人な水着姿の女性。どうしても胸元に視線がいってしまう……。
ごくり、と何かを飲み込んだ感覚だった。初めて見る、至近距離での女性の肌。視線をその膨らみから離すことができなかった。
「……何、ぼーっと、しているのよ?」 いきなり強い口調だった。どう答えればいい。新車のナビから女性が現れるなんて、最先端のAGI研究でさえありえないことだ。 「あなた、バカなの? カーナビから人が出てくるわけないでしょう。私、後部座席にずっといたのよ……」 「……」 「それよりなんでエアコンをつけないの、バカじゃないの。四十度を超えていたわよ。限界だったのよ!」 一方的に言い放たれた。
(……そうだ、どうして水着なんだ?) 「それより、服は」 未来が問いかけると、彼女は見なさいと言わんばかりに力強く後ろの席を指さした。そこには、びちょびちょになった服が転がっていた……。
未来が謝りながら服を着ることを勧めたが、「嫌よ、バカじゃないの」と一蹴される。 ――家でシャワーを浴びさせて! 彼女は水着のまま、家の方へと走っていった。
***
(……え? なにをやってるんだ。真夏だからいいのか? いや、水着で街を歩いている人なんて見たことがない。まずい、人に見られる!) 慌てて左右を確認したが、幸い誰もいない。ふー、と息を吐いて安心した。
玄関の前でじっと扉を見つめていた彼女が叫ぶ。 「開かないのだけど!」 未来がスマートフォンで解錠すると、彼女はダッシュで中に入り、エアコンの前に陣取った。 「涼しい、ふー、生き返る……」 未来は思わず凝視してしまったが、慌てて「シャワーをどうぞ」と促した。
美野里は、ベトベトの汗を流すべく浴室へ急いだ。脱衣所から、シャワーの音と肌が動く気配が伝わってくる。
(いかん、洗濯を……) 未来はあのびちょびちょの服を回収した。この服、なんというのだろう。外は猛暑だ、すぐに乾くはずだ。 洗濯機をまわす。洗剤と柔軟剤が一体型だったのが救いだ。たぶん、これでいい。女性の水着なんて洗濯したことがない。スイッチをポチ、と押すと機械音が響き渡った。 (洗濯方法を調べないと……) 未来はパソコンを起動し、画像解析で洗濯方法を検索し始めた。
「――ふー、生き返った」 シャワーから彼女が出てきた。 「ねー、タオル」 「すみません、ただいま!」 バスタオルを脱衣所に持っていく。彼女は、そこにかかってあった未来の研究所の白衣を羽織っていた。クリーニングから取ってきたばかりなのに……。サイズがまったく合わず、だぼだぼだ。
「……ごめん、ごめんなさい、これ、バスタオルです」 (ムフフ、ありがとう。照れちゃってかわいい) サイズの合わない白衣姿で部屋に出てきた彼女は、「エアコン、最高」と涼んでいる。だが、白衣の隙間から、豊かな谷間がこぼれ落ちそうだ。視線を感じた彼女は(勝った! ムフフ)と心の中でほくそ笑む。
「……ところで、君はどうして車にいたんだ」 言いかけた時だった。未来のスマートフォンに着信があった。海外にいる親父からだ。今の時間はあちらでは真夜中のはずだが。
『誕生日七月十九日、おめでとう。車と美人を送ったからな』 『おめでとう。美人さんと、しっかりね』 母さんの声も聞こえた。それだけ告げると、通話は切れた。
……いったい、なにがなんだかわからない。なんで、しっかり? 美人さんと何をしっかりしろというのか。 (ムフフ、パニックになっている、かわいい)
「わかった、私が誕生日プレゼントなの。そこでパソコン、使っていい?」 未来が頭を抱えるのを余所に、彼女はパソコンを操作し始めた。じっと未来を見て、文句ないわよねと言わんばかりの圧力だ。 「クレジットカード」 言い放たれ、言われるがままに手渡した。 「何か買うのでしょうか」 「見てわからないの。私、下着がないのですけど。このままでいいということかしら?」 一人で納得しながら、テキパキと操作を続ける。 「貯金あるわね、すごいじゃない。これ増やしてあげるね」 意味不明な言葉を投げかけられ、未来は呆然と立ち尽くした。 「突っ立ってないで。届いたら洋服を買いに行くから。……水着は?」 ギュッと睨みつけて威嚇された。彼女はパソコンで「しまむら」を調べていた。ここで下着を買えばいい、と決めたようだ。
未来は頭の整理がつかないまま、麦茶を出して置いておいた。目の前には、サイズ違いの白衣一枚の美人。カーナビから出てきたわけではない。当たり前だ。だが、どうしてこの女性が自分の部屋にいるのだろう。 視線はどうしても、溢れんばかりの谷間に向かってしまう……。 (ムフフ、私のことを見ている。勝負あったわね) 彼女はゆっくりと首を回すと、強めの目つきで外を見た。
未来は謝りながら、干していた水着を取り込もうとしたが、緊張のあまり手が滑り、ベランダの下に落として汚してしまった。 「あ!」 (ムフフ、予定通り) 「……では、下着を買いに行きましょう。車でね。助手席初ドライブが下着を買いに行くなんて、運命ね」
***
「しまむら」に着いた。何でも揃う店だ。美野里は淡々と選び、会計を済ませると「すぐに着たいです」と試着室へ。 溢れかえっていた膨らみが服の下に隠れ、未来は「ふうー」と安堵の息を吐いた。だが、同時に少しだけ残念な気持ちになったのも事実だった……。
「次、ユニクロに。そのダサいの、なんとかする!」 運転する未来は、緊張しながらも狐につままれたような顔をしている。 (大勝利だ! ムフフ)
買い物を終えると、「お腹空いた、帰りましょう」と美野里が言った。唖然とする未来を睨み返すと、すぐに帰宅。車内のエアコンは涼しかった。
***
帰宅して冷蔵庫を開けるなり、美野里が叫んだ。 「……なんにもないじゃない! ビールと焼酎だけ。食事は?」 チーズにアーモンド、ナッツ、それに落花生。おつまみばかりのラインナップに彼女は呆れ返った。 「お食事のことよ!」 「コンビニが複数、駅前にあるし……」 「ダメだこりゃ。私、お寿司が食べたい。行きましょう。さっきネットで調べたの、『大黒鮨』」
「いらっしゃーい! お、未来、今日は美人さん連れだね」 大将の大きな声が店内に響いた。 「未来もやっと女性を連れてきたのか。うれしいな」 「『今日は』? 未来、お寿司食べたことあるの?」 「食べるよ、毎晩大将のところで食べているから」 自分のことを呼び捨てにされて驚く未来を余所に、美野里は注文を始めた。 (ここ、時価なんだ……) 「すごい偉いぞ未来。大将、おまかせで! まずビールね」 どれくらい食べただろうか。もうお腹いっぱい、幸せだった。 「ごちそうさまでした、美味しかったです。大将、また二人で来ますね」
***
家に戻るなり、美野里はそのままお風呂へ。髪を乾かしたら一直線にベッドへ潜り込んだ。 「あの、ベッド一つなんだけど」 「一緒に寝ればいいじゃない。おやすみ」 女の人と一緒に寝る? どういうことだ。 「早くしなさいよ、寒いでしょ」 「寝れるかー!」 未来の叫びも、彼女は知らんぷりだ。どうやら家出少女のように思われているようね、と彼女は思う。 「いい、思い出して。誕プレが私なの。寝ますよ、早く。おやすみなさい」 言い放つと、すぐに規則正しい寝息が聞こえてきた。
***
缶ビールを開けながら未来は考えた。ネットで調べても、誕生日に女性をプレゼントする親なんて出てくるわけがない。 結局、ベッドの隙間に入り込んだ。視線はどうしても隣の膨らみにいってしまう。寝よう。夢だ、これは夢だ。 主導権を握られたまま、奇想天外な一日が過ぎた。
――どこかで、聞いたことがある名前だよな。「美野里」
何かを思い出せそうな気がしたが、睡魔には勝てなかった。「美野里……」と声に出しながら、未来は深い眠りに落ちていった。
ごくり、と何かを飲み込んだ感覚だった。初めて見る、至近距離での女性の肌。視線をその膨らみから離すことができなかった。
「……何、ぼーっと、しているのよ?」 いきなり強い口調だった。どう答えればいい。新車のナビから女性が現れるなんて、最先端のAGI研究でさえありえないことだ。 「あなた、バカなの? カーナビから人が出てくるわけないでしょう。私、後部座席にずっといたのよ……」 「……」 「それよりなんでエアコンをつけないの、バカじゃないの。四十度を超えていたわよ。限界だったのよ!」 一方的に言い放たれた。
(……そうだ、どうして水着なんだ?) 「それより、服は」 未来が問いかけると、彼女は見なさいと言わんばかりに力強く後ろの席を指さした。そこには、びちょびちょになった服が転がっていた……。
未来が謝りながら服を着ることを勧めたが、「嫌よ、バカじゃないの」と一蹴される。 ――家でシャワーを浴びさせて! 彼女は水着のまま、家の方へと走っていった。
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(……え? なにをやってるんだ。真夏だからいいのか? いや、水着で街を歩いている人なんて見たことがない。まずい、人に見られる!) 慌てて左右を確認したが、幸い誰もいない。ふー、と息を吐いて安心した。
玄関の前でじっと扉を見つめていた彼女が叫ぶ。 「開かないのだけど!」 未来がスマートフォンで解錠すると、彼女はダッシュで中に入り、エアコンの前に陣取った。 「涼しい、ふー、生き返る……」 未来は思わず凝視してしまったが、慌てて「シャワーをどうぞ」と促した。
美野里は、ベトベトの汗を流すべく浴室へ急いだ。脱衣所から、シャワーの音と肌が動く気配が伝わってくる。
(いかん、洗濯を……) 未来はあのびちょびちょの服を回収した。この服、なんというのだろう。外は猛暑だ、すぐに乾くはずだ。 洗濯機をまわす。洗剤と柔軟剤が一体型だったのが救いだ。たぶん、これでいい。女性の水着なんて洗濯したことがない。スイッチをポチ、と押すと機械音が響き渡った。 (洗濯方法を調べないと……) 未来はパソコンを起動し、画像解析で洗濯方法を検索し始めた。
「――ふー、生き返った」 シャワーから彼女が出てきた。 「ねー、タオル」 「すみません、ただいま!」 バスタオルを脱衣所に持っていく。彼女は、そこにかかってあった未来の研究所の白衣を羽織っていた。クリーニングから取ってきたばかりなのに……。サイズがまったく合わず、だぼだぼだ。
「……ごめん、ごめんなさい、これ、バスタオルです」 (ムフフ、ありがとう。照れちゃってかわいい) サイズの合わない白衣姿で部屋に出てきた彼女は、「エアコン、最高」と涼んでいる。だが、白衣の隙間から、豊かな谷間がこぼれ落ちそうだ。視線を感じた彼女は(勝った! ムフフ)と心の中でほくそ笑む。
「……ところで、君はどうして車にいたんだ」 言いかけた時だった。未来のスマートフォンに着信があった。海外にいる親父からだ。今の時間はあちらでは真夜中のはずだが。
『誕生日七月十九日、おめでとう。車と美人を送ったからな』 『おめでとう。美人さんと、しっかりね』 母さんの声も聞こえた。それだけ告げると、通話は切れた。
……いったい、なにがなんだかわからない。なんで、しっかり? 美人さんと何をしっかりしろというのか。 (ムフフ、パニックになっている、かわいい)
「わかった、私が誕生日プレゼントなの。そこでパソコン、使っていい?」 未来が頭を抱えるのを余所に、彼女はパソコンを操作し始めた。じっと未来を見て、文句ないわよねと言わんばかりの圧力だ。 「クレジットカード」 言い放たれ、言われるがままに手渡した。 「何か買うのでしょうか」 「見てわからないの。私、下着がないのですけど。このままでいいということかしら?」 一人で納得しながら、テキパキと操作を続ける。 「貯金あるわね、すごいじゃない。これ増やしてあげるね」 意味不明な言葉を投げかけられ、未来は呆然と立ち尽くした。 「突っ立ってないで。届いたら洋服を買いに行くから。……水着は?」 ギュッと睨みつけて威嚇された。彼女はパソコンで「しまむら」を調べていた。ここで下着を買えばいい、と決めたようだ。
未来は頭の整理がつかないまま、麦茶を出して置いておいた。目の前には、サイズ違いの白衣一枚の美人。カーナビから出てきたわけではない。当たり前だ。だが、どうしてこの女性が自分の部屋にいるのだろう。 視線はどうしても、溢れんばかりの谷間に向かってしまう……。 (ムフフ、私のことを見ている。勝負あったわね) 彼女はゆっくりと首を回すと、強めの目つきで外を見た。
未来は謝りながら、干していた水着を取り込もうとしたが、緊張のあまり手が滑り、ベランダの下に落として汚してしまった。 「あ!」 (ムフフ、予定通り) 「……では、下着を買いに行きましょう。車でね。助手席初ドライブが下着を買いに行くなんて、運命ね」
***
「しまむら」に着いた。何でも揃う店だ。美野里は淡々と選び、会計を済ませると「すぐに着たいです」と試着室へ。 溢れかえっていた膨らみが服の下に隠れ、未来は「ふうー」と安堵の息を吐いた。だが、同時に少しだけ残念な気持ちになったのも事実だった……。
「次、ユニクロに。そのダサいの、なんとかする!」 運転する未来は、緊張しながらも狐につままれたような顔をしている。 (大勝利だ! ムフフ)
買い物を終えると、「お腹空いた、帰りましょう」と美野里が言った。唖然とする未来を睨み返すと、すぐに帰宅。車内のエアコンは涼しかった。
***
帰宅して冷蔵庫を開けるなり、美野里が叫んだ。 「……なんにもないじゃない! ビールと焼酎だけ。食事は?」 チーズにアーモンド、ナッツ、それに落花生。おつまみばかりのラインナップに彼女は呆れ返った。 「お食事のことよ!」 「コンビニが複数、駅前にあるし……」 「ダメだこりゃ。私、お寿司が食べたい。行きましょう。さっきネットで調べたの、『大黒鮨』」
「いらっしゃーい! お、未来、今日は美人さん連れだね」 大将の大きな声が店内に響いた。 「未来もやっと女性を連れてきたのか。うれしいな」 「『今日は』? 未来、お寿司食べたことあるの?」 「食べるよ、毎晩大将のところで食べているから」 自分のことを呼び捨てにされて驚く未来を余所に、美野里は注文を始めた。 (ここ、時価なんだ……) 「すごい偉いぞ未来。大将、おまかせで! まずビールね」 どれくらい食べただろうか。もうお腹いっぱい、幸せだった。 「ごちそうさまでした、美味しかったです。大将、また二人で来ますね」
***
家に戻るなり、美野里はそのままお風呂へ。髪を乾かしたら一直線にベッドへ潜り込んだ。 「あの、ベッド一つなんだけど」 「一緒に寝ればいいじゃない。おやすみ」 女の人と一緒に寝る? どういうことだ。 「早くしなさいよ、寒いでしょ」 「寝れるかー!」 未来の叫びも、彼女は知らんぷりだ。どうやら家出少女のように思われているようね、と彼女は思う。 「いい、思い出して。誕プレが私なの。寝ますよ、早く。おやすみなさい」 言い放つと、すぐに規則正しい寝息が聞こえてきた。
***
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