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masuta

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第一章:出会いの章 〜導きのルート設定〜

第七話 花火大会、そしてアメリカへ

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  ひゅーーーーーーーーーーーーーーーーう  ばーーーーーーーーーん  ひゅーーーーーーーーーーーーーーーーう  ばーーーーーーーーーん、ばん、ばんばんばーーーーん。

 ぱらぱらぱらあ。

 きれいに大きく打ち上げられた花火は、水面にも映った。  きれいだった。

   ***

 着替え、着替え。お母さん、着せて。  少し大人に見えるように、前もふっくらと、お願い。  お化粧もちょっと、しちゃうね。  どう? きれい?!

 姿見で、自分を見た。  我ながら、美人である。少し大人に見える。ムフフ。

 よし! いこう!  お父さん、お母さん、ありがとう。  今まで見た中で一番の笑顔だった。

   ***

 車で駅に連れてきてもらった。凄い人だった。マスクは外した。  もう一度鏡を見て、化粧を直し、お母さん、これでいい? 「もちろんよ、きれいだわ」  よし!

 ……いた! 両手を振って、会えた。やっと会えた。  久しぶりに会えたはずなのに、ずっと一緒にいた気持ちだった。

   ◇

 物凄い人の流れに彼について行き、目的の花火大会会場に着いた。  りんご飴とチョコバナナを買って、麦茶もなぜか買ってくれた。  お小遣いは貰ってあるのだけれど。

 生まれて初めて男の子に買ってもらった。りんご飴。

「べー」

 舌見せて、赤いよね?

「見せて」

「うわ、真っ赤!」  トマト飴だと、もっと、真っ赤なのかな。意味不明な話に、大笑いしていた。

「なんでチョコバナナなのだろうね? バナナチョコだと変なのかな」 「どっちが主役だと思う?」 「うーん、チョコなのかな?」 「でも中はバナナなんだよ」

 そんなこと考えたこともなかった。  二人は大笑いした。久しぶりに笑った。  いつぶりだろう。こんなに笑ったのは。

   ◇

 花火が始まった。  上を見上げた。ものすごい大きな花火。  こんなに大きい花火を見るのは生まれて初めて。

 きれいだった。

   ◇

 ドキドキが止まらなかった。  手を繋ぎたい。手を繋ぎたい。  どうやって手を繋げば良いの。誰か教えて、手の繋ぎ方。

 顔を直視できなかった。恥ずかしかった。  生まれて初めて、人を好きになった。

 ――幼稚園の時に、うちにお泊まりに来てくれた。  一緒に家の外で花火をして、楽しかった。バーベキューをやって、私一人、大はしゃぎしてしまい、その時だった。  私が炭火をひっくり返した。

 木炭の塊が私の顔に飛んで来た時、素手で木炭を払いのけてくれた。  手は、火傷をしていた。  氷、氷と両親たちが慌てたが、彼は痛がる素振りをみせずに。

「大丈夫?」

 と声をかけてくれた。  わたしのヒーローだった。ヒーローが今、隣にいる。

   ◇

 上を向いて、一緒に花火を見ている。  ドキドキが止まらなかった。  手を繋ぎたい。好きと言いたい。

 彼は振り返って、私を見て。 「きれいだね」

 わたしがきれい? それとも花火のこと?  どちらでも良かった。私のことだと思い込んだ。  私のことをきれいと言ってくれた。ずっと空に浮かぶ花火を二人で見ていた。時間はあっという間に過ぎていった。

 花火はフィナーレを迎えた。  私は、ぼそっと、一言呟いた。 「また、一緒に来たいな」 「もちろん」  笑顔で答えてくれた。

 手を繋ぐことは出来なかった。好きということも出来なかった。  好きと言って、私が死んじゃったら困るものね。

 笑顔で手を振って別れた。 「また来ようね!」  両手で手を振ってくれた。  わたしも両手で手を振って。 「約束だよー!」  元気な姿を見せた。

   ***

 車内に入ると、思いっきり泣いた。我慢していたものが、一気に溢れ出した。声を出して泣いた。  泣きながら、言った。 「……お父さん、お母さん」 「ありがとう、私、必ず、治って帰ってくる――」

 お父さん、お母さんの目にも涙が。たくさんのテールランプが動かない道は、涙を拭う時間をくれた。

 ――そしてアメリカに渡った。

   ***

 ――六年後、奇跡は起きた。  目を覚まし、案内され、光が眩しかった。 「車椅子、いりません。歩けます」  扉を開けた。

「まったくもって、問題ない。健康そのものだ」  医師は、わかりやすく話し始めた。 「筋力も影響ないから、歩けるし言葉も発せられるよ。……まさか、本当に彼のアイディアが無ければ、不思議なものだ。結果的に完璧だった。私も信じられないよ。もう、大丈夫。すべて上手くいったよ」

「ところで、会話が通じるのだね。英語が上手い」

 治ったのだ。私の記憶はまだ、あの花火大会のまま。  そう、中学校三年生の時のまま。  あれから六年経ったらしい。

   ◇

 私は色々な検査を経て、スタンフォード大学に進み、卒業した。夢中で勉強に励んだ。あの人のことは片時も忘れることは無い。一生懸命頑張った。

 卒業式。たくさんの人が集まり、笑顔である。冗談を言いながら……そこに、新穂の両親が来てくれていた。  うちの両親には、実はまだ内緒なのである。

 二十六歳になっていた。明日で七月。  私の生還は、今年の年末に伝えることになっている。理由はわからないのだが、そのように決まっている。お金の話なのかな? と思ったが、そうでもないらしい。詳しくはわからないが、二人が私を救ってくれたことだから、安心していた。

 十五歳で渡米して二十六歳。この十一年の間、ずっと私を見守ってくれていたのだから。

   ◇

 さらに、新穂の両親が何やら話を始めた。  確かに、おもしろい! と大笑いした。  お二人は、とても変わっている人だ。

「あの、新穂さん……」  と私は言いかけたら。

「新穂さんなどと、他人行儀に言わないでね。お父さん、お母さんで良いのだから」 「はい、お父さん、お母さん」  笑顔で答えた。 「うちの息子を頼んだよ」

 義理の両親となる二人の手をとり、私は深く頭を下げた。 「はい、お任せください。ありがとうございます、お父さん、お母さん」

 ――こうして私は日本に帰ってきたのであった。  そう、彼に会うために。彼に想いを伝えるために。  それだけが、私のであった……。
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