最後の魔法使いはただ幸せになりたい

Hkei

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第1章 幼少期

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目を開けようとしても重くて開けれない。無理やり開ける。


──身体が重い…動かない…

時間をかけ頭を動かすが自分がどこで寝てるのかも分からない。

「お…父さん?」
「お母さん」
「ルーク!」

呼んでみても誰も答えてくれない。

──ここどこ?なんで誰もいないの…

怖いよ…


また意識が揺らいでとぎれる。







次に目が覚めた時、側に人がいる気配がした。
カバっと起きてそちらを見る。


「おばあちゃん…誰?」

「もう起きれるかい?」

「ここどこ?お父さんお母さんは?」

「…とりあえず何か食べるか飲むかい?」

「答えてよ!!」





「みんないない死んだな」

「うっ…嘘だ!!嘘だ!!嘘だ!!」


「見せてやろうか」

その老婆は右手をリルの額にあてる。その瞬間懐かしい風景が流れ自分が住んでた街外れまですすんでいく。が、その場所には何もなく空き地になっている。
住んでた家、父親を手伝った畑、母親と一緒に植えた花壇…記憶の中にある全てがなかった。




「なんで?嫌だ嫌だ…いやだ…」



もうそこから泣いて泣いて泣いて、倒れるまで泣いて、身体から出る水分なくなるまで泣いた。



何日くらいそんな状態だったろうか。
少し落ち着いてきた。まだ受け入れるつもりもない。みんなが自分の前からいなくなったとは思えない。ここから出て探す!このままではダメだと思えるほどには頭がはっきりしてきて、ふと気づく。












「…おばあちゃん…さっきの…」

「ああ、魔法だね」

「私はこの国唯一だった魔法使いだね。お前さんと一緒だ」

エヴァは椅子に座ったまま手を動かすとリルのまわりにあった椅子が動く。そこに座りなと促すがここ数日ろくに食べてなかったリルは動こうとしても動けない。

「お前さん弱ってる場合じゃないだろ?」

この人は…

「私が使い方を教えてあげるよ。ちゃんと使えないと困るだろ?」

「おばあちゃ…」

「師匠とお呼び!お前さんは…」

この人は敵じゃない。

「リル…ううんリリーナだ」

母親から聞いていた本当の名前を使う。



◇◆◇


「エヴァ。あの子はどうだ?」

「…やっと動けるようにはなってますな」

「そんな事を聞いているのではない。使えるのか」

「…使いこなせるまでには、まだまだ・・・・かかりますな」

「早くしてくれ」






◇◆◇


フードのついた長いローブを着る。袖口には見事な刺繍が施され、ポイントについてる装飾が動かす度にシャララと音がする。

「師匠。なんでこんな格好するの?」

「一応王族に会うからな。ここから出るが今は変な気おこさないでおくれ」

「…分かってる」

今まであまり意識して使ってこなかったが、実際エヴァの様に自由に使うとなると、自分にはまだまだなところが多かった。

「では行くぞ」

リリーナの肩に手を置き持ってる杖を動かすと目の前に扉があった。
扉が開くと広いホールがあり奥に座ってる人影が見える。眩しくてはじめ顔までは見えなかった。

「お前がリリーナか」

ギルバート国王が静かに話すがリリーナは答えない。

「父上が聞いているのだ。なぜ答えない!!」

ジェイド第1王子が睨みながら叫ぶもリリーナは答えない。

「こちらが我が弟子のリリーナ。マナーなどは教えておらんので」

「ふふっ。ではそれも教える必要があるわね」

バルバラ王妃が笑いながら

「その子は顔立ちいいから、他の使い方もありそうだしね」


──こいつら…嫌い!!

感情が爆発しそうなのをエヴァが手を出し止める

「我が弟子は魔法使いですのでね…とりあえず顔見せは終わったので失礼する」

杖を動かすと2人の姿はその場から消えた。
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