最後の魔法使いはただ幸せになりたい

Hkei

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第3章 テコーダール国

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少しいいだろうかと国王から声がかかり、リルは立ち上がる。

「この国には今まで魔法使いがいた事がないのだ。具体的に魔法使いとは何が出来る?」 

「…」

「例えば天候を変えたりはできるのか?」

「私の魔力を広げれる範囲に魔法をかけてる間だけは変える事は可能ですが、大元からの変更は出来ません」

「分かりやすく言うと…嵐が来てる時に、私の家の周りだけ被害が出ないようにすることはできても、嵐自体を消滅させることは出来ません」

「死者を甦らすのは」

「出来ません」

「作物を増やすとかは」

「魔力を与えた土地に限り収穫量を倍にするくらいなら、ただし私が常に魔力を与え続けるのが条件になります」

このような質疑応答がしばらく続いた後、国王が静かに尋ねる

「我が国の為に働くことは可能か」

「…」

「では…命令すれば可能だろう」

誓約の事をやはり知っているのだこの国王は…と思ったが

「従いかねます。私の先の誓約はまだ解けておりませんので」

その言葉に驚いたのはルークだった。そうか…と国王は去って行った。そしてお開きの挨拶をしてパーティーはあっけなく終了したのだ。

ホールから人が次々と帰って行く中、リルとルーク、ジャンたち3人とフレッドだけが残った。

「リル…誓約解けてないってどういう事?」

「そのままの意味…」

「あの時、力使ってただろ?あいつら動かなかったし!!」

ルークはリルの両腕をつかみ揺らしながら怒鳴る。フレッドが落ち着けとルークを離しリルを座らせる。

「じゃあ今体調悪いのは…」

ハンナが心配そうに聞く

「屋敷からでたからそのせい…」

ドクドクと鼓動が早く苦しい…今はまだ倒れる訳にはいかない

「だったらさっさと帰ればいいじゃん!!ここにあんたの場所なんてないから!!リリーナの邪魔しないで!!」

叫んだリリーナは今まで見たことない表情のルークに睨まれ、ハンナの後ろに隠れる。

「リリーナあなたのお姉ちゃんなのよ?どうして…」

ハンナがたしなめるように言うも拗ねたまま答えようとしない。
今まで自分1人みんなに愛され幸せだったのに、いきなり姉が現れ、その幸せを奪うように見えたら受け入れるのは無理だろうとリルは思う。
しかしその場所は本来リリーナのモノだったはず…

「リルお前はどうしたかった?」

「…」

「ここに来た事を後悔してるのか?」

父の質問にブンブンと頭を横に振る。

「私はあの時、光に包まれたあの日からずっと……お父さん、お母さん、ルークに会いたかった…」

「じゃあ今がいいだろう!さっさとあいつの記憶消せば終わりだろ!!」

「あの日以来私は1人だった」



違う。それは違うと今は分かる。



「1人だと思い込んでた」

「リル…言わないで…」

ルークが泣きそうな声でつぶやく。


「私は…師匠と、ジェイド様に居場所を作ってもらっていた。1人じゃなかった」

エヴァはリルが見つかる前から助けてくれていた。その後もリルを育ててくれ亡くなる時ですら1人残すことを悔いていた。
師匠が亡くなった後、ジェイドは屋敷に来てくれていた。ジェイドの息抜きのためもあったが、同時に自分も助かっていたのだと今さらに気づく。



「リル!!」

「ここに私の居場所はない」

「俺が今から作るから!!俺の側にいてくれ!!」

記憶を消された時もずっと心の中に何かがあって、それが何かは分からなかったが、記憶が戻った時にリルのことだと思い出し涙した。忘れてはいけない存在だったのに!

思わずリルに抱きつく。このまま離すつもりなどない。もう二度と忘れたりしない!!

「お願いだ…リル!!」

「リル、父さんたちもお前を返したくないんだ」

「リルお母さんからもお願いするわ!!」

「みんな言ってる!あいつなんて俺が忘れさせるから…頼む…リル…」

さらに力を込めて抱きしめるも柔らかいリルを感じることが出来ない…
嫌だ!リルの背中をしっかりと抱くも、見えてはいるのに自分の腕の中にリルはいない…

「…私はリル・・として生きた時間よりリリーナ・・・・として生きた時間の方が長くなってしまったの」

「会えてよかった。ありがとう」


真っ白な光に包まれ視界を奪われた後、既にリルの姿はなかった
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