最後の魔法使いはただ幸せになりたい

Hkei

文字の大きさ
17 / 18
第3章 テコーダール国

4

しおりを挟む
少しいいだろうかと国王から声がかかり、リルは立ち上がる。

「この国には今まで魔法使いがいた事がないのだ。具体的に魔法使いとは何が出来る?」 

「…」

「例えば天候を変えたりはできるのか?」

「私の魔力を広げれる範囲に魔法をかけてる間だけは変える事は可能ですが、大元からの変更は出来ません」

「分かりやすく言うと…嵐が来てる時に、私の家の周りだけ被害が出ないようにすることはできても、嵐自体を消滅させることは出来ません」

「死者を甦らすのは」

「出来ません」

「作物を増やすとかは」

「魔力を与えた土地に限り収穫量を倍にするくらいなら、ただし私が常に魔力を与え続けるのが条件になります」

このような質疑応答がしばらく続いた後、国王が静かに尋ねる

「我が国の為に働くことは可能か」

「…」

「では…命令すれば可能だろう」

誓約の事をやはり知っているのだこの国王は…と思ったが

「従いかねます。私の先の誓約はまだ解けておりませんので」

その言葉に驚いたのはルークだった。そうか…と国王は去って行った。そしてお開きの挨拶をしてパーティーはあっけなく終了したのだ。

ホールから人が次々と帰って行く中、リルとルーク、ジャンたち3人とフレッドだけが残った。

「リル…誓約解けてないってどういう事?」

「そのままの意味…」

「あの時、力使ってただろ?あいつら動かなかったし!!」

ルークはリルの両腕をつかみ揺らしながら怒鳴る。フレッドが落ち着けとルークを離しリルを座らせる。

「じゃあ今体調悪いのは…」

ハンナが心配そうに聞く

「屋敷からでたからそのせい…」

ドクドクと鼓動が早く苦しい…今はまだ倒れる訳にはいかない

「だったらさっさと帰ればいいじゃん!!ここにあんたの場所なんてないから!!リリーナの邪魔しないで!!」

叫んだリリーナは今まで見たことない表情のルークに睨まれ、ハンナの後ろに隠れる。

「リリーナあなたのお姉ちゃんなのよ?どうして…」

ハンナがたしなめるように言うも拗ねたまま答えようとしない。
今まで自分1人みんなに愛され幸せだったのに、いきなり姉が現れ、その幸せを奪うように見えたら受け入れるのは無理だろうとリルは思う。
しかしその場所は本来リリーナのモノだったはず…

「リルお前はどうしたかった?」

「…」

「ここに来た事を後悔してるのか?」

父の質問にブンブンと頭を横に振る。

「私はあの時、光に包まれたあの日からずっと……お父さん、お母さん、ルークに会いたかった…」

「じゃあ今がいいだろう!さっさとあいつの記憶消せば終わりだろ!!」

「あの日以来私は1人だった」



違う。それは違うと今は分かる。



「1人だと思い込んでた」

「リル…言わないで…」

ルークが泣きそうな声でつぶやく。


「私は…師匠と、ジェイド様に居場所を作ってもらっていた。1人じゃなかった」

エヴァはリルが見つかる前から助けてくれていた。その後もリルを育ててくれ亡くなる時ですら1人残すことを悔いていた。
師匠が亡くなった後、ジェイドは屋敷に来てくれていた。ジェイドの息抜きのためもあったが、同時に自分も助かっていたのだと今さらに気づく。



「リル!!」

「ここに私の居場所はない」

「俺が今から作るから!!俺の側にいてくれ!!」

記憶を消された時もずっと心の中に何かがあって、それが何かは分からなかったが、記憶が戻った時にリルのことだと思い出し涙した。忘れてはいけない存在だったのに!

思わずリルに抱きつく。このまま離すつもりなどない。もう二度と忘れたりしない!!

「お願いだ…リル!!」

「リル、父さんたちもお前を返したくないんだ」

「リルお母さんからもお願いするわ!!」

「みんな言ってる!あいつなんて俺が忘れさせるから…頼む…リル…」

さらに力を込めて抱きしめるも柔らかいリルを感じることが出来ない…
嫌だ!リルの背中をしっかりと抱くも、見えてはいるのに自分の腕の中にリルはいない…

「…私はリル・・として生きた時間よりリリーナ・・・・として生きた時間の方が長くなってしまったの」

「会えてよかった。ありがとう」


真っ白な光に包まれ視界を奪われた後、既にリルの姿はなかった
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

処理中です...