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幸せ過ぎる結婚生活(1)
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レフィーと電撃結婚(雷竜なだけに)をして、早一ヶ月。
「駄目……これは自堕落な生活過ぎる。何とかしなくては……!」
私はクッキーを片手に、もう片手で頭を押さえた。
起きて食べて、本を読んで食べて寝る。時々レフィーと談話して、食べて寝る。寝るについても初日以来、艶っぽい展開にはなっていなくて。(だだし、キスは激しい)
これでは新婚生活というより、「気の合う同志とシェアハウス始めました」だ。そこんところ、どう思っているんでしょう。私はそんな目で、ソファに並んで座っていた夫の横顔を見つめてみた。
「何とかするとは、何か面白いことでも始めるのですか?」
本から顔を上げたレフィーが、こちらを振り向く。
本当、『面白いこと』に目がないよね、貴方。
「特に何を思い付いたというわけではないけど、ここの生活が快適過ぎて。何かしら貢献しないと、バランスが取れない気がしてならない……」
レフィーも大体私と似たような生活を送ってはいるが、それでも彼の方は例のハンドメイド用の素材を採りに出かけたり、本を片手に何かを作っていたりとまだアクティブだ。
一方、私は完全に休日モードで……いや、それより酷い。元の世界では最低限の家事はやっていた。だがここに住んでからは、それすらもやっていない。
勿論、レフィーがやってくれているということではない。何とここには、ブラウニーが住み着いているのである。
(麻理枝先輩……先輩の夢がここにいますよ……!)
家事妖精ブラウニー。麻理枝先輩が度々ぼやいていたので、その存在はしっかりと覚えている。お菓子をあげる代わりに家事をやってくれる妖精だ。「ブラウニーがうちの汚部屋にも来ないかしら。今日帰ったら綺麗になっているとかない?」と口にする先輩に、「一ヶ月、アニメ専門店に行くのを我慢したら、ブラウニーじゃないけど人間なら雇えると思いますよ」と返すのが、あの頃の日常風景だった。
街でレフィーがやたらお菓子を買っているなと思っていたら、まさか彼らの給料だったとは。「安全なカルガディウムの街で人間のお菓子がもらえるなら、それに越したことはない」と、この家にこぞってやって来るらしい。なるほど。
「貢献なら、ミアはしていますよ。貴女を愛でることで、私の心は穏やかになっていると思います」
「嬉しいけど、そういう曖昧な効果の話ではなくて」
貢献、貢献……。持っていたクッキーを口に放り、モグモグしながら考える。
そんな私の頭を、レフィーがなでなでしてくる。
「ミア」
「うん?」
「物理的に愛でてみましたが、そちらの感触も最高です。確実に効果があります」
「うん、ありがとう。でもそういうことでもなくてね?」
まだなでなでしていたレフィーにそう返事しながら、私はさらに深く考え込み――
「では私の実験に付き合って下さい」
「ぶっ」
レフィーの一言に、一気に深みから引き上げられた。
クッキーを食べ終わっていたのが、不幸中の幸いであった。
「駄目……これは自堕落な生活過ぎる。何とかしなくては……!」
私はクッキーを片手に、もう片手で頭を押さえた。
起きて食べて、本を読んで食べて寝る。時々レフィーと談話して、食べて寝る。寝るについても初日以来、艶っぽい展開にはなっていなくて。(だだし、キスは激しい)
これでは新婚生活というより、「気の合う同志とシェアハウス始めました」だ。そこんところ、どう思っているんでしょう。私はそんな目で、ソファに並んで座っていた夫の横顔を見つめてみた。
「何とかするとは、何か面白いことでも始めるのですか?」
本から顔を上げたレフィーが、こちらを振り向く。
本当、『面白いこと』に目がないよね、貴方。
「特に何を思い付いたというわけではないけど、ここの生活が快適過ぎて。何かしら貢献しないと、バランスが取れない気がしてならない……」
レフィーも大体私と似たような生活を送ってはいるが、それでも彼の方は例のハンドメイド用の素材を採りに出かけたり、本を片手に何かを作っていたりとまだアクティブだ。
一方、私は完全に休日モードで……いや、それより酷い。元の世界では最低限の家事はやっていた。だがここに住んでからは、それすらもやっていない。
勿論、レフィーがやってくれているということではない。何とここには、ブラウニーが住み着いているのである。
(麻理枝先輩……先輩の夢がここにいますよ……!)
家事妖精ブラウニー。麻理枝先輩が度々ぼやいていたので、その存在はしっかりと覚えている。お菓子をあげる代わりに家事をやってくれる妖精だ。「ブラウニーがうちの汚部屋にも来ないかしら。今日帰ったら綺麗になっているとかない?」と口にする先輩に、「一ヶ月、アニメ専門店に行くのを我慢したら、ブラウニーじゃないけど人間なら雇えると思いますよ」と返すのが、あの頃の日常風景だった。
街でレフィーがやたらお菓子を買っているなと思っていたら、まさか彼らの給料だったとは。「安全なカルガディウムの街で人間のお菓子がもらえるなら、それに越したことはない」と、この家にこぞってやって来るらしい。なるほど。
「貢献なら、ミアはしていますよ。貴女を愛でることで、私の心は穏やかになっていると思います」
「嬉しいけど、そういう曖昧な効果の話ではなくて」
貢献、貢献……。持っていたクッキーを口に放り、モグモグしながら考える。
そんな私の頭を、レフィーがなでなでしてくる。
「ミア」
「うん?」
「物理的に愛でてみましたが、そちらの感触も最高です。確実に効果があります」
「うん、ありがとう。でもそういうことでもなくてね?」
まだなでなでしていたレフィーにそう返事しながら、私はさらに深く考え込み――
「では私の実験に付き合って下さい」
「ぶっ」
レフィーの一言に、一気に深みから引き上げられた。
クッキーを食べ終わっていたのが、不幸中の幸いであった。
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