35 / 69
恋情と愛情(1)
しおりを挟む
結局、私は俵なまま自宅の玄関まで運ばれた。
俵の次は小さな子供かはたまた猫か、両脇を持たれてぷらんと空中に吊された後、足からふわりと降ろされる。成人女性を「すとん」ではなく「ふわり」なのだから、レフィーは相当力持ちなようだ。減速せずにここまで来て、まったく息も上がっていないようだし。
ふんふんと感心していて、だから私は身構えるのが遅れた。
「キスの時間です」
「! んむ……っ」
決して乱暴ではないが、ガッという感じで両頬を掴まれたと思えば既にレフィーの唇はゼロ距離。さすがに一月以上こんな調子なので、多少は慣れた。が、今回の私は身構えていなかったせいでよろけてしまった。
トンッと壁に背が当たる。半歩片足を下げたせいで空いた脚の隙間に、まさに隙を見逃さずレフィーの脚が侵入してくる。加えて、上体を斜めにした私にピッタリ同じ斜めの角度で、身を寄せてくる。
私が体勢を崩したのをいいことに、レフィーはいつも以上に深く口づけてきた。
(気持ち良くて……ぼぅっとする……)
キスの時間を始めた頃は、ゾクゾクとして溶かされる感覚があった。けれど最近は、見た目の激しさに反して、緩やかに蕩けるようなキスに変わってきている。
きっと私の反応を見て、合わせていっているのだろう。今もまた、私が「気持ちいい」と思っているのが筒抜けなのだろう……うぅ、恥ずかしい。
「ミア。おかえりなさい」
「ん……ただいま。レフィー、おかえりなさい」
「ええ、ただいま戻りました」
キスの合間に、取って付けたように挨拶の言葉を口にするレフィー。それに返す私。
レフィーとのキスは好きだ。しかし、何度でも言わせて欲しい、これは『挨拶のキス』ではないと。
今日なんて場所が場所だけに、このまま「ベッドまで待てない」とかいって、なだれ込むラブシーンに近――
「ひゃぁっ」
キスが口から頬に移って油断したところを、耳を甘噛みされて肩が跳ねる。
そうだね、こんなことしてたね、玄関で。どれかの漫画で描いた覚えがあるよ。でもって、それやっぱり「ベッドまで待てない」のパターンに入った奴だったと思う!
「ミア。うやむやになっていた恋愛進展度を補いたいです」
「ままま、待ってレフィー。私は、軽め。もっと軽めを希望!」
とうとうその場に座り込んでしまった私。またも私に合わせて座ったレフィー。
同じく座ってはいても、くたりとしている私に対し、レフィーは片膝を立てたピシッとした姿勢でいる。こちらに覆い被さるように距離を詰めた彼の上体が、私の視界を埋めていた。
俵の次は小さな子供かはたまた猫か、両脇を持たれてぷらんと空中に吊された後、足からふわりと降ろされる。成人女性を「すとん」ではなく「ふわり」なのだから、レフィーは相当力持ちなようだ。減速せずにここまで来て、まったく息も上がっていないようだし。
ふんふんと感心していて、だから私は身構えるのが遅れた。
「キスの時間です」
「! んむ……っ」
決して乱暴ではないが、ガッという感じで両頬を掴まれたと思えば既にレフィーの唇はゼロ距離。さすがに一月以上こんな調子なので、多少は慣れた。が、今回の私は身構えていなかったせいでよろけてしまった。
トンッと壁に背が当たる。半歩片足を下げたせいで空いた脚の隙間に、まさに隙を見逃さずレフィーの脚が侵入してくる。加えて、上体を斜めにした私にピッタリ同じ斜めの角度で、身を寄せてくる。
私が体勢を崩したのをいいことに、レフィーはいつも以上に深く口づけてきた。
(気持ち良くて……ぼぅっとする……)
キスの時間を始めた頃は、ゾクゾクとして溶かされる感覚があった。けれど最近は、見た目の激しさに反して、緩やかに蕩けるようなキスに変わってきている。
きっと私の反応を見て、合わせていっているのだろう。今もまた、私が「気持ちいい」と思っているのが筒抜けなのだろう……うぅ、恥ずかしい。
「ミア。おかえりなさい」
「ん……ただいま。レフィー、おかえりなさい」
「ええ、ただいま戻りました」
キスの合間に、取って付けたように挨拶の言葉を口にするレフィー。それに返す私。
レフィーとのキスは好きだ。しかし、何度でも言わせて欲しい、これは『挨拶のキス』ではないと。
今日なんて場所が場所だけに、このまま「ベッドまで待てない」とかいって、なだれ込むラブシーンに近――
「ひゃぁっ」
キスが口から頬に移って油断したところを、耳を甘噛みされて肩が跳ねる。
そうだね、こんなことしてたね、玄関で。どれかの漫画で描いた覚えがあるよ。でもって、それやっぱり「ベッドまで待てない」のパターンに入った奴だったと思う!
「ミア。うやむやになっていた恋愛進展度を補いたいです」
「ままま、待ってレフィー。私は、軽め。もっと軽めを希望!」
とうとうその場に座り込んでしまった私。またも私に合わせて座ったレフィー。
同じく座ってはいても、くたりとしている私に対し、レフィーは片膝を立てたピシッとした姿勢でいる。こちらに覆い被さるように距離を詰めた彼の上体が、私の視界を埋めていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
〘完〙なぜかモブの私がイケメン王子に強引に迫られてます 〜転生したら推しのヒロインが不在でした〜
hanakuro
恋愛
転生してみたら、そこは大好きな漫画の世界だった・・・
OLの梨奈は、事故により突然その生涯閉じる。
しかし次に気付くと、彼女は伯爵令嬢に転生していた。しかも、大好きだった漫画の中のたったのワンシーンに出てくる名もないモブ。
モブならお気楽に推しのヒロインを観察して過ごせると思っていたら、まさかのヒロインがいない!?
そして、推し不在に落胆する彼女に王子からまさかの強引なアプローチが・・
王子!その愛情はヒロインに向けてっ!
私、モブですから!
果たしてヒロインは、どこに行ったのか!?
そしてリーナは、王子の強引なアプローチから逃れることはできるのか!?
イケメン王子に翻弄される伯爵令嬢の恋模様が始まる。
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる