竜の花嫁 ~夫な竜と恋愛から始めたいので色々吹き込みます~

月親

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恋情と愛情(3)

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 レフィーが離してくれたので、私も彼の胸から離れて最初の位置へと戻る。
 トンッ
 最初と違うのは、今度こそレフィーが壁ドン(両手バージョン)をしてきたということ。

「言葉は見つからなくとも、私は貴女の価値をわかっているつもりです」

 近い。近い。訴えたいのはわかった。もう少し離れよう?

「貴女を得ることでしか知りうることのなかった感情の価値を、私はわかっているつもりです」
「感情の、価値……」

 続けられたレフィーの言葉に、ドキリとする。

(レフィーにとっては、感情も『知識』?)

 デートに付き合ってくれたのも、今離れたくないと思ってくれたことも、ただ彼の『知識』を充実させるもの?
 だとしたら、彼が口にした『貴女の価値』と『感情の価値』は、果たして別物なのだろうか。新しく手に入れた私が面白いから、新しいことを私が提案するから……目を背けていた『実験』と同じ線上に、私は立っていないだろうか。
 このもやもやとした気持ちは、前にもあった。表面に出ないだけで、ずっとくすぶっていたことも知っている。
 どこか決着を付けない限り、きっとずっとこのままだ。
 私は一度キュッと口を引き結び、それから「レフィー」と彼の名を呼んだ。

「レフィー。子供ができたら……『実験』が終わったなら、私は用済みなの?」
「え?」

 意を決してレフィーに尋ねて、それに対し考えてもいなかったというふうに目をみはった彼に、少しほっとする。
 これまでずっと私は、自分の趣味をレフィーに押し付けてきた。私は恋愛がしたくて、だからレフィーの『面白いことを試したい』という性格に付け込んで、やってもらっていた。
 実際、面白がってくれていたとは思う。でも、私が彼の実験を拒む意図でもってそうしたことに変わりはない。
 私は、彼のデートで満足して。彼との新しい生活も充実していて。でも、レフィーは? 私と結婚して、彼は何を得しただろう。

「レフィーは種族的に私としか子供を作れないから、私が必要で。私はそれを盾に、レフィーの実験を先延ばしにしてばかりいる。それなのに、レフィーは自分の意思で私を喜ばせようとしてくれる。私はいつだって欲しがるばかりで、レフィーに何かしてあげようとしていない」

 そんな私なんて、いる? 最後の一言は、口にはしなかった。
 困らせるだけの問いであったし、「それもそうですね」と返されることも怖かった。
 顔向けができない。そんな気持ちに呼応してか、気付けば私の視線はレフィーの顔から肩に移っていた。
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