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エピソード001 相続問題は時間を巻き戻して
第十三章 それからの中津家
しおりを挟む中津家絡みの一件が終わってから一週間が経過した。
俺は東京郊外にある行きつけのバー「愛の巣」で楽しく飲んでいた。
この行きつけのバーはいわゆる隠れ家的な飲み屋であり内装は結構洒落ている雰囲気のいい店だ。
いつもは金に余裕のある時に一人で飲み食いしているのだが……今日は一緒に飲んでいる人達がいる。
「結構いい店じゃないの。一見地味だけどそこが落ち着いていいわね」
一人は先日俺達が救出した天王寺三重さんだ。
助けた時の約束通り今一緒に飲んでいる。
やはり比較的年齢の近い女性と一緒に飲むのは楽しいものだ。
もっとも今回一緒に飲んでいるのは三重さんだけではないのが残念だな。
はい実は三重さんの他に二人の男がいる訳で。
「おい三重、あまり宗吾さんとばかり話すなよ」
「うふふ!貴方やいてるの?」
そう、男の一人は三重さんの旦那さんである天王寺庵さん。
本物の奥さんである三重さんが戻ってきたせいか笑顔が絶えない印象だ。
三重さんが偽物だった時はどうなるかと思ったが本当によかったよ。
「光善寺さん、今回は色々とありがとうございました!」
「はは、こちらもビジネスだったから気にしない事だよ翔太君」
「いえ!あなた方がいなかったら中津家はあのヤクザどもに食い荒らされていました。光善寺さんは私達中津家の恩人です」
もう一人の男は今回の依頼者だった中津翔太君。
いつもながらいい青年だなぁ。
「マスター!赤ワインを四杯頼むよ」
「はい!」
俺は店のマスターに赤ワインを頼む。
するとマスターは四杯の赤ワインと……どうゆう訳か四人分のキッシュが運ばれてきた。
「あれ?俺はキッシュを頼んだ覚えは」
「宗吾さん、今日はいい事あったでしょう。だからこれは私からのサービスです」
「ですが……」
「それに新しい顧客を連れてきたのも理由です。という訳でそちらのお三方も今後もここを宜しくお願いします」
成程ね。
ここは俗にいう隠れ家的バーだから誰かが招待しないと客が増えないからな。
これは新しい客へのサービスみたいだな。
なら、気を取り直して。
「では、今回の事態収拾を祝って……乾杯!」
「「「乾杯!」」」
それから俺達四人はささやかだが楽しい飲み会を楽しんだ。
暫く酒を飲みながら互いに中身のない会話を楽しむ俺達。
そんな中で俺達は自分達の現状を互いに語り始めた。
「そうですか、弁護士続けられるんですか」
「はい、もうっとも今は活動禁止中ですが」
「流石に処分を受けたみたいですね庵さん」
天王寺庵さんはその後、不起訴処分になり釈放されたがやはり悪質な強要とはいえ犯罪に加担したとして弁護士協会から一か月の活動停止処分を受けたそうだ。
もっとも弁護士資格を失わなかったのが救いだったと思うなぁ。
「ですからいい機会ですので……今度。妻と一緒に少し長い旅行に行こうと思います」
「いいですね。で、やはり海外ですか?」
「いえ、私としては国内の静かな田舎で落ち着きたいですね」
田舎町でゆっくりかぁ。
俺もそんな場所で静養してみたいなぁ。
だが、一方の三重さんは意見が違うようで?
「え~っ!私はイギリスとかフランスのほうがいい!ブランド品とか買いあさりた~い」
「は、はは……」
「庵さん、所帯持ちも大変ですね」
流石は元ホスト狂いだった三重さん。
結婚したq後でもかなり贅沢好きみたいだなぁ。
うちの社長がこれ聞いたら延髄切りぶっかましてるのは確実だな。
それに三重さん!貴方の亭主はこれから一か月は収入無しだからブランド品買いあさりだなんて到底無理だと思いますが?
「三重さん、簡便してくださいよ」
「フランス!イギリス!買いあさり!」
あ~あ、酒が入ってるのかこの夫婦……喧嘩屁締めちゃったよ。
こりゃ暫くは収まる気配はないな。
マスターは「酒が切れたら落ち着きますよ」と客が少ないのをいい事に放置を決め込んだみたい。
夫婦喧嘩は犬も食わない。
という訳で俺もあの夫婦喧嘩は放置を決め込んだ。
俺は少し離れて苦笑いで飲んでいる翔太君の元へ。
「いやぁ、ひどいなアレ」
「まぁ……中津家が普通に戻った証ですよ」
「これが普通ねぇ」
それから俺はビールを二杯におつまみをマスターに注文。
少ししてから届いたビールと枝豆を食べながら翔太君と色々と話す事に。
「えっ?勇さんと洋二さんが和解したって」
「はい。祖父も今回の一件で色々と思う処があったみたいです」
へぇ、あの仲が悪い勇さんと洋二さんがねぇ。
やっぱり一度死亡した影響で心境に変化があったのかな?
ただ翔太君の話だと仲直りしたい勇さんと違い洋二さんの方は困惑しているそうだ。
何しろ一度は父親の事を新で喜んでいたのに生き返った上に和解したいと言ってきたらそりゃビックリすると思うな。
まぁ、まだ勇さんが和解したくぃと言ってきてまだ日が経過してないから気持ちの整理がついていない筈。
翔太君としても時間が解決してくれると信じているそうだ。
俺もそう思いたいが果たしてどうなるかな?
「それと……父が地方に飛ばされる事になりました。まぁ当然の結末ですよ」
「あら~っ」
どうやら翔太君の父親である健一は地方の支社へ左遷される事が決まったそうだ。
どうも勇さんの蘇生した後で翔太君が内部告発をしたらしく、それで勇さんの逆鱗に触れたらしい。
ちなみにその健一さん以前から会社の金を着服した上にそれを洋二さんに罪をなすりつけた事もあったそうだ。
「あの男はああなって当然です!あのようなシロアリは即刻追い出すべきなのです」
「おいおい、健一さんって君の父親だろ。そこまでしなくても……」
「僕はあの男とは親子の縁を切りました!離縁状も叩きつけてやりました。これも全て中津家の為です」
うわぁ。
これは洋二さんとは対照的だな。
片や親と和解して……もう方や息子に絶縁されるとはなぁ。
俺はビールを飲みながら中津家の現状に驚く。
「処で……生き返った勇さんは今どうしてる?」
「祖父は今夜そちらさんの会長さんと一緒に飲んでいる筈ですよ。多分沢山ある思いで話でもしているのでしょう」
そうか。
勇さんは今頃うちの会長と一緒に飲んでいるのか。
多分大きなお座敷のある場所で日本酒を飲み交わして思い出話でもしてるのだろうなぁ。
折角うちの社長がまた生きる機会を与えたのだ。
今度は納得のできる天寿全うを果たして欲しい。
「そういえば翔太君はこれからどうする気だい」
「そうですね……実は魔界に行こうと思います」
えっ!魔界ってあの魔界かっ!!
確かに俺達人間が行く事自体はリスクがないが……正直危なくないか?
「実は僕は魔族を一人契約していまして……だから彼女と一緒に色々とやってみようと思うんです」
「契約している魔族とねぇ……えっ、彼女ってその魔族って女の子か!」
「はい、結構可愛いですよ。ただ年齢は魔族らしく二百歳ですが」
うげっ、魔族で二百歳といえば人間ではピチピチの二十歳ぐらいじゃねぇか。
畜生~っ!俺もそうゆう可愛くてピチピチの女の子魔族と契約した~い!
「魔界には様々な魔法鉱石とかの資源や魔界しか取れない食物とかありますから……僕はそれらを貿易するビジネスを構築したいのです」
「もっとも魔界には甘いものがないがな」
「えっ?どうしてそれを知って居るのですか」
「俺の知り合いが上級魔族と契約しているから知っているの」
その上級魔族が誰かは……もう言うまでもねぇな。
しかもその上級魔族ちゃんは事あるごとに甘いものをご所望だからなぁ。
「まぁ、魔界は人間が滞在するには厳しい環境だから……体に気をつけろよ」
「はい!」
翔太君の決意を秘めた目は俺が見ても輝いてるなぁ。
ここは彼の今後に期待しよう。
けどそれに比べてあちらの夫婦はというと?
「贅沢は敵だっ!三重」
「遊びたい!海外で遊びたい!豪遊したいよぉ!」
あ~あ、まだやってるよ。
けどこうゆうのが仲が良い夫婦ってやつかもな。
この状況を翔太君と話し合った結果もう少しの間このままにしておく事にした。
その内、二人の酒が切れて大人しくなるだろう。
「では、翔太君!」
「はい光善寺さん」
「中津家の新たなる門出に……改めて乾杯!」
「乾杯!」
俺と翔太君は改めて互いにウイスキー入りのグラスで互いの今後を祈って乾杯。
今夜は楽しい夜になりそうだ。
本当は絶世の美女と一緒に飲みたいのが本音だがこうゆう互いに分かり合えた男同士で飲むのも悪くない。
それから俺と翔太君は争っている天王寺夫妻を後目に楽しく店の閉店時間近くまで飲み明かした。
そして、また出会える事を誓いながら。
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