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原始の時空層に畳まる
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会津の堆い雪の壁がある道のように
人の壁は延々続き
そのとき僕は 擦り切れた薄いぼろで
脱したいきもちで 奥へ進んだ
(このとき 僕は 千人の人のなかで
一人で夜を越えるときには感じない
孤独になって)
やっと拓けた空間で
やっと高く そして太い松明にこころを
遣った
大地に根差したような大松明一本
銀行やらの名の入った垂れ幕をつけた
細い松明二十四
その周りを火の玉を提げた竿を持ち
歩く人々列となり
火煌々と
現し世離れした夜の明るさ
子も親も 学生 老人
みな火に命じられるままに
列は真剣に
ゆっくり進む
この世のものでない
この夜のものでない
やがて列が絶え
大松明の梯子を男が昇る
男天辺で
高々と火を掲げて振り
雄叫びをあげると
大松明の足元に集まった人々も
声を上げる
そのとき 太鼓は鼓動をなぞって鳴り始める
ドンドン ド ドン・ドンドン ド ドン
僕の鼓動 太鼓の響き 大地を鳴らし
ドンドン ド ドン・ドンドン ド ドン
原始の遺伝子 活性し
目の前にあるのは
過去の映像
繰り返し行われた
種々大陸 人類共通の祀り
(それを面白可笑しく見物するのが観光というもの)
一千の人の眼に それぞれ一つずつ いまここに一千の祀りが始まったのです
男手にした松明を深々と大松明の頂点に押し込み
上がる 上がる 煙が上がる
男が逃げるが早いか
小さな燻り プラズマを散らし
朱の顕在
太く 高い 藁の皮
焼けて 剥がれて ほろりと宙で
溶けて消える
パチパチ 松の樹脂煙となり
そのとき天高く聳える大気の壁が
厚く突き抜け
炎旗めき
プラズマの縁を虹が囲んだ
あんなに遠いのに 熱い
煙 希薄な海流を薄白く染め
プラズマ珊瑚の卵がばらばらに
流れていく
(天の祭りだ
ここは 天上の島だ)
まるで目を離せない
僕はいま 天高く浮かんだ島にいることを
感じて疑わない
次々に松明は燻り プラズマを発する
夜が松の裏に逃げ込み 光るほど黒い
赤い竜巻は空を憧れる
産まれては消え 産まれては消える
金色の絵の具 天に注ぐ灰の川
この世のものではない
この夜のものではない
(ああ 一転して これは災厄だ
焼け野原を 何かが壊れていく様を
僕らは悦んで眺める
この千幾百の共犯者)
もう僕は見てはいられない
希薄な海流に注ぐ灰の川
プラズマ珊瑚の卵がぎらぎら光る
眼のようで
戦に反対した志士たちの後継
その祀り
それが観光客に戦争を見せて悦ばせている
大気の壁が柔な松明を一本打ち払い
ドミノ倒しに隣の一本も傾いた
悦んではいけない
これは 粛々と執り行なわれる祀りなのだから
何かが壊れるのを 滅びるのを
手を叩いて悦んではいけない
太鼓は打ち鳴らされる
大地は鳴る
こんな混沌
もう僕も笑うしかない
この世のものでない
この夜のものでない
まるで地獄
みんなみんなそんなに快感に浴しているなら
いっそ溺れちまって滅べばいい
観光するような祀りではないのだ
このような無形の文化というものは
どいつもこいつも 景色を目に見ず
機械のレンズに写して
無機の可搬媒体に記憶して
生身の眼球と脳皮質は幽霊のように
ぼうっと佇む
ああ 僕はもう松明の足元へ走り出して
イカロを唱えて踊りたい
原始の遺伝子の衝動に任せて
過去の時空層に一緒くたに畳まれて
透明な化石のひとつになってしまいたい
人の壁は延々続き
そのとき僕は 擦り切れた薄いぼろで
脱したいきもちで 奥へ進んだ
(このとき 僕は 千人の人のなかで
一人で夜を越えるときには感じない
孤独になって)
やっと拓けた空間で
やっと高く そして太い松明にこころを
遣った
大地に根差したような大松明一本
銀行やらの名の入った垂れ幕をつけた
細い松明二十四
その周りを火の玉を提げた竿を持ち
歩く人々列となり
火煌々と
現し世離れした夜の明るさ
子も親も 学生 老人
みな火に命じられるままに
列は真剣に
ゆっくり進む
この世のものでない
この夜のものでない
やがて列が絶え
大松明の梯子を男が昇る
男天辺で
高々と火を掲げて振り
雄叫びをあげると
大松明の足元に集まった人々も
声を上げる
そのとき 太鼓は鼓動をなぞって鳴り始める
ドンドン ド ドン・ドンドン ド ドン
僕の鼓動 太鼓の響き 大地を鳴らし
ドンドン ド ドン・ドンドン ド ドン
原始の遺伝子 活性し
目の前にあるのは
過去の映像
繰り返し行われた
種々大陸 人類共通の祀り
(それを面白可笑しく見物するのが観光というもの)
一千の人の眼に それぞれ一つずつ いまここに一千の祀りが始まったのです
男手にした松明を深々と大松明の頂点に押し込み
上がる 上がる 煙が上がる
男が逃げるが早いか
小さな燻り プラズマを散らし
朱の顕在
太く 高い 藁の皮
焼けて 剥がれて ほろりと宙で
溶けて消える
パチパチ 松の樹脂煙となり
そのとき天高く聳える大気の壁が
厚く突き抜け
炎旗めき
プラズマの縁を虹が囲んだ
あんなに遠いのに 熱い
煙 希薄な海流を薄白く染め
プラズマ珊瑚の卵がばらばらに
流れていく
(天の祭りだ
ここは 天上の島だ)
まるで目を離せない
僕はいま 天高く浮かんだ島にいることを
感じて疑わない
次々に松明は燻り プラズマを発する
夜が松の裏に逃げ込み 光るほど黒い
赤い竜巻は空を憧れる
産まれては消え 産まれては消える
金色の絵の具 天に注ぐ灰の川
この世のものではない
この夜のものではない
(ああ 一転して これは災厄だ
焼け野原を 何かが壊れていく様を
僕らは悦んで眺める
この千幾百の共犯者)
もう僕は見てはいられない
希薄な海流に注ぐ灰の川
プラズマ珊瑚の卵がぎらぎら光る
眼のようで
戦に反対した志士たちの後継
その祀り
それが観光客に戦争を見せて悦ばせている
大気の壁が柔な松明を一本打ち払い
ドミノ倒しに隣の一本も傾いた
悦んではいけない
これは 粛々と執り行なわれる祀りなのだから
何かが壊れるのを 滅びるのを
手を叩いて悦んではいけない
太鼓は打ち鳴らされる
大地は鳴る
こんな混沌
もう僕も笑うしかない
この世のものでない
この夜のものでない
まるで地獄
みんなみんなそんなに快感に浴しているなら
いっそ溺れちまって滅べばいい
観光するような祀りではないのだ
このような無形の文化というものは
どいつもこいつも 景色を目に見ず
機械のレンズに写して
無機の可搬媒体に記憶して
生身の眼球と脳皮質は幽霊のように
ぼうっと佇む
ああ 僕はもう松明の足元へ走り出して
イカロを唱えて踊りたい
原始の遺伝子の衝動に任せて
過去の時空層に一緒くたに畳まれて
透明な化石のひとつになってしまいたい
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