のろし

けろけろ

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『学生』

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『学生』とは 何か特別な権利を与えられた
時間です
彼らはもちろんただのひとで
だからその権利は『学生』が終わると
消える
あんなに横柄で 憚りなく
信号のように単色に
それでもぎらぎら輝いて
赤いものや 青いの 黄色いのなど
同じ色で群れて
更に横柄で 憚りなく
輝いて

それでも 輝きは輝きで

あんな権利を 僕だって
しばらくは持っていたはずだったけど
いまは『学生』の時間外の人間はみんな
昏くみえる

明けぬ夜のように
朝方 この絵のように蒼いそらに
重なって
人の街はいつでも闇に
沈んでいる

『学生』とは
夜に 遠くみえる信号
はっきりと信号と分かる色で
点滅したり 同時に赤く光ったり
だけれど いまここにいる
僕には関係ない

やがて 彼らも
『学生』が終われば
穏やかに黒ずんでいくのだろう
老いる速さで それとは気づかず
絶望に染まるのだろう

この人の世に降りた
闇と共に
生きていくことを選ぶのならば
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