5 / 10
4
しおりを挟む
とつぜんの出来事にディーオは眉を寄せて、リューイの名を呼んで問いかける。
「どうした、リューイ。気分でも悪くなったのか」
「っ、いや……名前を呼ぶのも、呼ばれるのも……ひさしぶりでさ、嬉しくって……」
「そう、か」
問いかけに答えたリューイの顔には涙が浮かんでいた。
その表情は暗いものではなく微笑みが浮かんでいたが、大きな緑色の瞳からポロポロと落ちる涙にディーオはとまどって、歯切れの悪い返事しかできなかった。
そんな自分に複雑な気持ちを抱いていると、涙を拭ったリューイがハッとなにかに気づいたようにディーオを見る。
「ちょっと待って。俺の力のおかげでって……ディーオ、なんで俺の力のことわかったんだ?」
その顔は心底不思議だという表情をしていて、さっきまで泣いていたのにコロコロと変わるその表情にディーオはクスリと小さく笑みを浮かべた。
「お前の顔は忙しいな……私は古代龍の王だぞ? それくらいはわかる」
「そうなんだ、へぇー」
そう相槌を打つリューイの顔はキラキラと輝いている。
それはまるで、勇者を見つめる子供のようだった。
そんなやり取りをしていると、ふたりのもとにピンク色に光るオーブのようなものが飛んできた。
「ふぃ~」
「わっ! なにっ? このピンクの光の玉──」
「ふぃー」
それはリューイのまわりをふよふよと飛びまわって鳴き声をあげる。
そんなピンク色のオーブを目で追うリューイに、ディーオがそれの正体を口にする。
「それが私の使い魔だ。ありがとうと言っている」
「そっか。直接なにかしたわけじゃないけど、どういたしまして」
「ふぃ~」
言いたかったことが伝わって嬉しかったのか、ピンク色のオーブ──ディーオの使い魔は嬉しそうにリューイに擦りよった。
リューイはそれを嬉しそうに受けいれて、お返しに頬を擦りよせたりと楽しそうに使い魔とじゃれ合っている。
「あははっ! 人懐っこいな、お前!」
「ふぃー!」
「ひっこみ思案な性質なのだか、よっぽど嬉しかったのだな」
「そうかー、可愛いなぁ」
「ふぃ~」
そう言って指先でくすぐれば、使い魔はふるふると震えてリューイの指先にじゃれはじめた。
それをくすくす笑いながら見つめていると、そういえば……とディーオが口を開いた。
「家に帰らなくてもいいのか? もう夜になる」
「あー、じつは今から帰っても途中で夜になるし、安全な場所で野宿でもしようかと思ってたんだよね」
あっけらかんと言い放たれた言葉にディーオは少し引っかかり、かすかにその眉をひそめる。
「家族は心配しないのか?」
リューイは見たかんじ成年とはいい難く、まだ親の庇護下にいるはずでは? とディーオは不思議に思って問いかけた。
リューイはその問いに苦笑して、少し言いづらそうに答える。
「まぁ、ね。父さんは俺の力を嫌って兄弟たち連れて出て行ったし。母さんは、死んじゃったから……」
「それは、すまないことを聞いた」
その答えにディーオは気まずげに返事をして、心の内でその内容に毒を吐いた。
いつの時代も、人間は自分の理解できないものを厭うのか……と。
そんなディーオの耳に、気まずげな雰囲気を消すためかリューイがことさら明るく話しだした。
「いいんだ、もう慣れたし! でも……悪いって思うなら恩返しさせてよ」
「恩返し、だと?」
いきなり脈略もなく出てきた恩返しという言葉に、ディーオはいぶかしげにリューイを見る。
リューイはそんなディーオの視線に頷き、それからやわらかい微笑みを浮かべて言葉をつづけた。
「どうした、リューイ。気分でも悪くなったのか」
「っ、いや……名前を呼ぶのも、呼ばれるのも……ひさしぶりでさ、嬉しくって……」
「そう、か」
問いかけに答えたリューイの顔には涙が浮かんでいた。
その表情は暗いものではなく微笑みが浮かんでいたが、大きな緑色の瞳からポロポロと落ちる涙にディーオはとまどって、歯切れの悪い返事しかできなかった。
そんな自分に複雑な気持ちを抱いていると、涙を拭ったリューイがハッとなにかに気づいたようにディーオを見る。
「ちょっと待って。俺の力のおかげでって……ディーオ、なんで俺の力のことわかったんだ?」
その顔は心底不思議だという表情をしていて、さっきまで泣いていたのにコロコロと変わるその表情にディーオはクスリと小さく笑みを浮かべた。
「お前の顔は忙しいな……私は古代龍の王だぞ? それくらいはわかる」
「そうなんだ、へぇー」
そう相槌を打つリューイの顔はキラキラと輝いている。
それはまるで、勇者を見つめる子供のようだった。
そんなやり取りをしていると、ふたりのもとにピンク色に光るオーブのようなものが飛んできた。
「ふぃ~」
「わっ! なにっ? このピンクの光の玉──」
「ふぃー」
それはリューイのまわりをふよふよと飛びまわって鳴き声をあげる。
そんなピンク色のオーブを目で追うリューイに、ディーオがそれの正体を口にする。
「それが私の使い魔だ。ありがとうと言っている」
「そっか。直接なにかしたわけじゃないけど、どういたしまして」
「ふぃ~」
言いたかったことが伝わって嬉しかったのか、ピンク色のオーブ──ディーオの使い魔は嬉しそうにリューイに擦りよった。
リューイはそれを嬉しそうに受けいれて、お返しに頬を擦りよせたりと楽しそうに使い魔とじゃれ合っている。
「あははっ! 人懐っこいな、お前!」
「ふぃー!」
「ひっこみ思案な性質なのだか、よっぽど嬉しかったのだな」
「そうかー、可愛いなぁ」
「ふぃ~」
そう言って指先でくすぐれば、使い魔はふるふると震えてリューイの指先にじゃれはじめた。
それをくすくす笑いながら見つめていると、そういえば……とディーオが口を開いた。
「家に帰らなくてもいいのか? もう夜になる」
「あー、じつは今から帰っても途中で夜になるし、安全な場所で野宿でもしようかと思ってたんだよね」
あっけらかんと言い放たれた言葉にディーオは少し引っかかり、かすかにその眉をひそめる。
「家族は心配しないのか?」
リューイは見たかんじ成年とはいい難く、まだ親の庇護下にいるはずでは? とディーオは不思議に思って問いかけた。
リューイはその問いに苦笑して、少し言いづらそうに答える。
「まぁ、ね。父さんは俺の力を嫌って兄弟たち連れて出て行ったし。母さんは、死んじゃったから……」
「それは、すまないことを聞いた」
その答えにディーオは気まずげに返事をして、心の内でその内容に毒を吐いた。
いつの時代も、人間は自分の理解できないものを厭うのか……と。
そんなディーオの耳に、気まずげな雰囲気を消すためかリューイがことさら明るく話しだした。
「いいんだ、もう慣れたし! でも……悪いって思うなら恩返しさせてよ」
「恩返し、だと?」
いきなり脈略もなく出てきた恩返しという言葉に、ディーオはいぶかしげにリューイを見る。
リューイはそんなディーオの視線に頷き、それからやわらかい微笑みを浮かべて言葉をつづけた。
0
あなたにおすすめの小説
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
偽りの聖者と泥の国
篠雨
BL
「感謝すら忘れた者たちに、明日を語る資格はない」
自らの都合で聖王セシルを追放し、異世界から新たな「勇者」を召喚したアドレアン聖王国。
しかし、その身勝手な選択が、国を、大地を、そして人々の心を根底から腐らせていく。
壊れゆく少年勇者と、彼を歪に愛した騎士。
二人の執着が交わったとき、聖王国は二度と再生不能な終焉へと突き進む。
裏切り者たちには、因果応報という名の、容赦なき報いが下る。
これは、傲慢な国が崩壊するまでの、無慈悲な記録。
-----------------------------------------
『嘘つき王と影の騎士』から引き続き読んでくださる皆様へ
この物語は、セシルを虐げた者たちが、ただただ因果応報の末路を辿るだけの物語です。
本編に救いはありません。
セシルたちのその後が気になるという方は、本編は飛ばして、最終話の後に掲載する「閑話」のみをお読みいただくことをお勧めいたします。
本作は『嘘つき王と影の騎士』の続編となりますが、前作をお読みでない方でも一つの物語としてお楽しみいただけます。
虐げられた令息の第二の人生はスローライフ
りまり
BL
僕の生まれたこの世界は魔法があり魔物が出没する。
僕は由緒正しい公爵家に生まれながらも魔法の才能はなく剣術も全くダメで頭も下から数えたほうがいい方だと思う。
だから僕は家族にも公爵家の使用人にも馬鹿にされ食事もまともにもらえない。
救いだったのは僕を不憫に思った王妃様が僕を殿下の従者に指名してくれたことで、少しはまともな食事ができるようになった事だ。
お家に帰る事なくお城にいていいと言うので僕は頑張ってみたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる