龍は刹那と永久を抱く

こうはらみしろ

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とつぜんの出来事にディーオは眉を寄せて、リューイの名を呼んで問いかける。

「どうした、リューイ。気分でも悪くなったのか」
「っ、いや……名前を呼ぶのも、呼ばれるのも……ひさしぶりでさ、嬉しくって……」
「そう、か」

問いかけに答えたリューイの顔には涙が浮かんでいた。
その表情は暗いものではなく微笑みが浮かんでいたが、大きな緑色の瞳からポロポロと落ちる涙にディーオはとまどって、歯切れの悪い返事しかできなかった。

そんな自分に複雑な気持ちを抱いていると、涙を拭ったリューイがハッとなにかに気づいたようにディーオを見る。

「ちょっと待って。俺の力のおかげでって……ディーオ、なんで俺の力のことわかったんだ?」

その顔は心底不思議だという表情をしていて、さっきまで泣いていたのにコロコロと変わるその表情にディーオはクスリと小さく笑みを浮かべた。

「お前の顔は忙しいな……私は古代龍の王だぞ? それくらいはわかる」
「そうなんだ、へぇー」

そう相槌を打つリューイの顔はキラキラと輝いている。
それはまるで、勇者を見つめる子供のようだった。

そんなやり取りをしていると、ふたりのもとにピンク色に光るオーブのようなものが飛んできた。

「ふぃ~」
「わっ! なにっ? このピンクの光の玉──」
「ふぃー」

それはリューイのまわりをふよふよと飛びまわって鳴き声をあげる。
そんなピンク色のオーブを目で追うリューイに、ディーオがそれの正体を口にする。

「それが私の使い魔だ。ありがとうと言っている」
「そっか。直接なにかしたわけじゃないけど、どういたしまして」
「ふぃ~」

言いたかったことが伝わって嬉しかったのか、ピンク色のオーブ──ディーオの使い魔は嬉しそうにリューイに擦りよった。
リューイはそれを嬉しそうに受けいれて、お返しに頬を擦りよせたりと楽しそうに使い魔とじゃれ合っている。

「あははっ! 人懐っこいな、お前!」
「ふぃー!」
「ひっこみ思案な性質なのだか、よっぽど嬉しかったのだな」
「そうかー、可愛いなぁ」
「ふぃ~」

そう言って指先でくすぐれば、使い魔はふるふると震えてリューイの指先にじゃれはじめた。
それをくすくす笑いながら見つめていると、そういえば……とディーオが口を開いた。

「家に帰らなくてもいいのか? もう夜になる」
「あー、じつは今から帰っても途中で夜になるし、安全な場所で野宿でもしようかと思ってたんだよね」

あっけらかんと言い放たれた言葉にディーオは少し引っかかり、かすかにその眉をひそめる。

「家族は心配しないのか?」

リューイは見たかんじ成年とはいい難く、まだ親の庇護下にいるはずでは? とディーオは不思議に思って問いかけた。
リューイはその問いに苦笑して、少し言いづらそうに答える。

「まぁ、ね。父さんは俺の力を嫌って兄弟たち連れて出て行ったし。母さんは、死んじゃったから……」
「それは、すまないことを聞いた」

その答えにディーオは気まずげに返事をして、心の内でその内容に毒を吐いた。
いつの時代も、人間は自分の理解できないものを厭うのか……と。

そんなディーオの耳に、気まずげな雰囲気を消すためかリューイがことさら明るく話しだした。

「いいんだ、もう慣れたし! でも……悪いって思うなら恩返しさせてよ」
「恩返し、だと?」

いきなり脈略もなく出てきた恩返しという言葉に、ディーオはいぶかしげにリューイを見る。
リューイはそんなディーオの視線に頷き、それからやわらかい微笑みを浮かべて言葉をつづけた。
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