私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜

朝比奈

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第1章

神託が降りてませんように・・・。

私は軽くノックをしてから自分の名を名乗った。
するとすぐにダリオス団長から入室の許可を貰えた。

私はゆっくりと深呼吸をして中に入った。

「ダリオス団長、おはようございます。」

「おはようございます、リオ嬢。まずは、そこに座って座ってください。」

私は言われた通りダリオス団長の向かい側に座った。

「少し、レオルドが来るのを待ちましょうか。」

そう言って、ダリオス団長は紅茶を入れてくれた。

本当なら私が紅茶を入れるべきなのかもしれないが、如何せん、私は紅茶なんて入れたことがない。

いつもペットボトルに入った飲み物で満足していた私にとって、ティーポットなんてものも家にはなかった。

いや、似たのが実家にひとつあった。
緑茶を作る時に使うやつ。確かきゅうす?だったかな?

私はそれを使ったことはないが、お父さん曰く、ペットボトルのお茶よりも深みがあって凄く美味しいんだとか。

「ありがとうございます。」

私はそう言ってダリオス団長からカップを受け取った。

少し湯気が立っているその紅茶にフーと息を吹きかければ、美味しそうな匂いが返ってくる。

それを私はゆっくりと飲んだ。

うっ・・・。苦い・・・。

声には出さなかったが顔には出たのだろう。
ダリオス団長がスっと角砂糖の入った容器を私の前に差し出した。

「どうぞ、使ってください。
   ・・・私も苦いのは苦手なんですよ。」

「ありがとうございます。」

私は遠慮なく角砂糖を入れた。

ひとつ、ふたつ、みっつ。
そして、よっつめを掴んだ時、ノックの音と共にレオルドさんの声が聞こえた。

ダリオス団長が返事を返すとレオルドさんが入ってきた。

「お待たせしてしまいすみません。」

「いえ、私も先程きたばかりなので大丈夫ですよ。」

私は今度は苦くなくなった甘い紅茶を飲みながらレオルドに笑いかけた。

そして、レオルドさんが座った所でいよいよ話が始まった。

「リオ嬢、まずは君に確認したい事がある。」

「はい。なんですか?」

私は昨日レオルドさんに異世界から来たことや記憶喪失だと嘘をついていたことなどを話した。
だから、その話はダリオス団長にも伝わっているはずだ。

一体、何を聞かれるのか。

私はダリオス団長を見つめながら静かに続きを待った。

「君が異世界から来たというのは本当か?」

「えっ、あぁ。はい。本当です。」

「その時の状況を聞いてもいいか?」

私はダリオス団長に頷き、昨日レオルドさんにした説明をもう一度した。

話していて思ったが、レオルドさんが信じてくれたからと言って、ダリオス団長が信じてくれるかは別だ。

もしかしたら、私が嘘をついていると思い確認しているのだろうか。

でも、それにしても記憶喪失だと嘘をついていた事について突っ込まないのは何故なのだろうか。

それとも、その話は今からするのだろうか。

私の説明を聴き終わったダリオス団長は難しそうな顔をして、何かを考えるように少しの間目をつぶった。

「リオ嬢、君は女神について聞いたことは?」

「女神、ですか?」

「あぁ。そうだ。」

「いいえ、ありません。」

私は首を横に振った。
そんな私にダリオス団長は何かを悩んでいるみたいだった。

もしかして、女神とはこの世界では有名なのだろうか。
知らないことが、不敬になったり、するのだろうか。

いや、それよりも、ダリオス団長は私が異世界から来たという言葉を信じてくれたと思ってもいいのかな。

「リオ嬢、これから君に女神について説明しようと思う。」

「女神、ですか・・・?」

あれ?なんで女神の話になっているの?
私は確かここに今後のことについて話を聞くはずで・・・。後、嘘を着いていたことに対してもしっかりと怒られるはずだったのに・・・。

そんな私の困惑を受け流しダリオス団長は「私も詳しくは知らないが・・・」と言い丁寧に女神について語った。



「えっと、つまり、ダリオス団長の話を信じるなら、私は女神、なんですか?」

「あぁ。私はリオ嬢が女神だと、そう思ってる。」

私はダリオス団長のマジ顔に思わず距離を取った。

なるほど、ていうことはまず、ダリオス団長は私が異世界から来たって話を信じてくれたってことだよね。

いやでも、ないから。私が女神とかないからっ!?

その話は私としては勿論全力で否定させてもらいたい事だった。

まず女神なら、治癒?魔法。なのかな?が、使えるんでしょ?どんな傷も癒せるっていう・・・。

何それチートじゃないっ!?

それに、もし私が女神なら元の世界に帰れないってことでしょ?

そんなのは嫌だ。私は帰りたい。
私の世界に。

私はダリオス団長から聞いた話に何か穴がないかもう一度話を思い出した。

ん?あれ?

「あの、ダリオス団長、もし仮に私が女神なら教会に何かしら神託がおりるのでは?」

私のその言葉にダリオス団長とレオルドさんがハッとした。

「教会か・・・。レオルド、なにか聞いてないか?」

「いえ、俺は何も・・・。」

ふーむ。とダリオス団長は何やら考えている様子。

レオルドさんも難しい顔をしている。

「では、リオ嬢。今度一緒に教会へ行きませんか?」
「教会、ですか?」

ダリオス団長は、もしかしたら自分たちが知らないだけで神託はおりているのかもしれない。と言い、部下を呼びつけ、今後の予定を調整し始めた。

「では、一週間後、教会に神託がおりてないか確かめに行きましょう。レオルド、お前も来い。」

「えっ。」と私。
「はい、分かりました。」とレオルドが言った。

「待って下さいっ!もし私が仮に女神だとしたら、これから私はどうなるんですかっ!?」

だれか、お願いだから否定して欲しい。

もう帰れないだなんて信じたくない。

「とりあえず、国に保護されるでしょうね。ですから、王都にある王城での生活が始まるかと・・・。」

ダリオス団長は最後まで私に丁寧に教えてくれた。

国に保護?王城で暮らす?

毎日ドレスを来て、ダンスを踊って、腹の探り合いをしながら生きなきゃ行けないのっ!

実際の王城での生活がどんなものかは知らないが、元の世界にも帰れず、一人でそんな怖いところに行くのは絶対に嫌だと思った。

ドレスに憧れる時期は私はもう過ぎたのだ。
今年で23の私にはキツイ。

あれは可愛い子だからこそ着れるものだ。
それに、ダンス?体育が万年評価2だった私が?

無理、無理だ。

きっと、私は社交ダンスのあの緩やかな演奏を聞いただけで眠くなるに違いない。

どうか、どうか、神託がおりてませんように。

私にはもう、そう願うしかなかった。


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