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48 検証(人体実験ともいう)
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訊きたい事は沢山あるだろうに、殿下はとりあえず俺の希望のものをくれた。
「・・・ハルカ、それをどうするんだ?」
でも、手に持ったグラスを上からじー・・・っと見つめたまま動かなくなった俺に我慢が出来なくなったのだろう。
ついに疑問を口にした。
「すみません、暫く待って頂けますか。必要な事なので」
「・・・そうか、こちらこそすまない」
「いえ・・・」
王族相手に無礼にも顔を上げないまま喋る俺に殿下は不快感を表すことも無く、けれど顔には疑問符を張り付けたまま隣のソファに腰を下ろした。そんな心の広い殿下、仕事は終わったのだろうか。終わったからこっちに来たんだろうな。
俺は目を見開いたまま部屋の中にいる人間の様子を窺っていた。
これからする事は、本当は内緒にしたい。
でもそれではこの人達は納得しないだろう。
だから目の前で実演しているのだ。
あー・・・瞼がプルプルしてきた。もう少しだもう少し。目が痛い。・・・もういいかな。
グラスを目の近くまで持ってきてそのすぐ上で瞼を閉じると、ポタンポタンと雫が落ちた。
「ハルカ!?どうした?」
突然涙を零した俺に殿下が慌ててソファから立ち上がったが、俺はそれに「大丈夫ですよ」と笑顔を返した。
心配してくれるのはありがたい。
でも大丈夫。これは泣いてるわけではないから。
涙を流すためには玉ねぎ!と思ったはいいけれど、玉ねぎを説明するのが面倒だったから別の手段を講じただけだ。
これで王子にこの水を飲んでもらって、治癒を掛ければ少しは良くなる?
でもなあ、いきなりやるのも。
誰かで実験出来ればいいんだけど。
とか思いながらチラッと殿下に視線を流すと
「どうした?」
大丈夫と言ったのに、まだ心配顔で即座に反応を返してくれる殿下。
この心配は純粋に俺に対する優しさと心配だと思いたい。
「・・・殿下、今どこか怪我を負っていたりしませんか?側近の方でもいいんですが」
自分の身体で実験出来れば一番良いんだけど、こればっかりは不可能だ。
「俺の治癒魔法は、これを先に飲んで頂いてから掛けた方が良く効くんです。
効果を確かめて欲しくて」
俺の治癒魔法が”俺の体液に反応する”のは特異だろうと、尤もらしい風に言い換えグラスを差し出すと、殿下方は「そう言う事か」と頷いてくれる。
「私は無いが・・・誰か怪我を負っている者は?」
殿下が側近さん達に訊くと、少し遠慮がちにさっきお茶を入れてくれた人が前に出た。
「大きな傷でもなく、もう治り掛けているので放置しているのですが」
と袖を捲ると刃物傷だろうか、10cm程のスパッと切れたような赤い線状の傷があった。
既に瘡蓋になっていて血は出ていないが、ちょっと痛々しい。
っていうか、これ深い傷ではないだろうけど俺にとっては立派に大きな傷だよ。
どんな精神力!?と側近さんを見上げると何を勘違いしたのか「もっと重症の方がいいですか?」と腰の剣を取ろうとしたので慌てて「大丈夫です!」と彼の手を押さえた。
「少しでいいので、これを飲んでください」
もう一つグラスを用意してもらい、こんなものかと二口分くらいを分けて渡した。
「皆さんにとってはただの水です。ぐいっと行っちゃって下さい」
側近さんはグラスを持ち視線を横に向け、そこにいる殿下に無言で頷かれると静かにグラスを傾けた。
ほんの少しの水は一瞬で無くなる。
ごくんと飲み込んだのを確かめ、念の為5秒ほど待って「ヒール」と唱え側近さんの腕に向かって魔力を流した。
「―――・・・これは」
「こんなに早く治るなんて・・・」
魔力を流して数秒。腕にあった傷は跡形も無く消えた。
驚かれるのは想定済みだ。
自分の力が普通じゃないのはもう認めた。
あとは出来るだけこの事実を拡散させずに、出来ればフェイドアウトするように静かに立ち去れるか。
「・・・うん、大丈夫そうですね」
これなら、そう時間を掛けずに王子殿下もどうにか治せるかもしれない。
ちゃんと治癒出来たら、出来るだけ早く、噂が立たないうちに城から出よう。
うん。
「・・・ハルカ、それをどうするんだ?」
でも、手に持ったグラスを上からじー・・・っと見つめたまま動かなくなった俺に我慢が出来なくなったのだろう。
ついに疑問を口にした。
「すみません、暫く待って頂けますか。必要な事なので」
「・・・そうか、こちらこそすまない」
「いえ・・・」
王族相手に無礼にも顔を上げないまま喋る俺に殿下は不快感を表すことも無く、けれど顔には疑問符を張り付けたまま隣のソファに腰を下ろした。そんな心の広い殿下、仕事は終わったのだろうか。終わったからこっちに来たんだろうな。
俺は目を見開いたまま部屋の中にいる人間の様子を窺っていた。
これからする事は、本当は内緒にしたい。
でもそれではこの人達は納得しないだろう。
だから目の前で実演しているのだ。
あー・・・瞼がプルプルしてきた。もう少しだもう少し。目が痛い。・・・もういいかな。
グラスを目の近くまで持ってきてそのすぐ上で瞼を閉じると、ポタンポタンと雫が落ちた。
「ハルカ!?どうした?」
突然涙を零した俺に殿下が慌ててソファから立ち上がったが、俺はそれに「大丈夫ですよ」と笑顔を返した。
心配してくれるのはありがたい。
でも大丈夫。これは泣いてるわけではないから。
涙を流すためには玉ねぎ!と思ったはいいけれど、玉ねぎを説明するのが面倒だったから別の手段を講じただけだ。
これで王子にこの水を飲んでもらって、治癒を掛ければ少しは良くなる?
でもなあ、いきなりやるのも。
誰かで実験出来ればいいんだけど。
とか思いながらチラッと殿下に視線を流すと
「どうした?」
大丈夫と言ったのに、まだ心配顔で即座に反応を返してくれる殿下。
この心配は純粋に俺に対する優しさと心配だと思いたい。
「・・・殿下、今どこか怪我を負っていたりしませんか?側近の方でもいいんですが」
自分の身体で実験出来れば一番良いんだけど、こればっかりは不可能だ。
「俺の治癒魔法は、これを先に飲んで頂いてから掛けた方が良く効くんです。
効果を確かめて欲しくて」
俺の治癒魔法が”俺の体液に反応する”のは特異だろうと、尤もらしい風に言い換えグラスを差し出すと、殿下方は「そう言う事か」と頷いてくれる。
「私は無いが・・・誰か怪我を負っている者は?」
殿下が側近さん達に訊くと、少し遠慮がちにさっきお茶を入れてくれた人が前に出た。
「大きな傷でもなく、もう治り掛けているので放置しているのですが」
と袖を捲ると刃物傷だろうか、10cm程のスパッと切れたような赤い線状の傷があった。
既に瘡蓋になっていて血は出ていないが、ちょっと痛々しい。
っていうか、これ深い傷ではないだろうけど俺にとっては立派に大きな傷だよ。
どんな精神力!?と側近さんを見上げると何を勘違いしたのか「もっと重症の方がいいですか?」と腰の剣を取ろうとしたので慌てて「大丈夫です!」と彼の手を押さえた。
「少しでいいので、これを飲んでください」
もう一つグラスを用意してもらい、こんなものかと二口分くらいを分けて渡した。
「皆さんにとってはただの水です。ぐいっと行っちゃって下さい」
側近さんはグラスを持ち視線を横に向け、そこにいる殿下に無言で頷かれると静かにグラスを傾けた。
ほんの少しの水は一瞬で無くなる。
ごくんと飲み込んだのを確かめ、念の為5秒ほど待って「ヒール」と唱え側近さんの腕に向かって魔力を流した。
「―――・・・これは」
「こんなに早く治るなんて・・・」
魔力を流して数秒。腕にあった傷は跡形も無く消えた。
驚かれるのは想定済みだ。
自分の力が普通じゃないのはもう認めた。
あとは出来るだけこの事実を拡散させずに、出来ればフェイドアウトするように静かに立ち去れるか。
「・・・うん、大丈夫そうですね」
これなら、そう時間を掛けずに王子殿下もどうにか治せるかもしれない。
ちゃんと治癒出来たら、出来るだけ早く、噂が立たないうちに城から出よう。
うん。
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