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―― 本編 ――
【十七】自覚(★)
しおりを挟む入浴を終えて、バトルスーツを着用した私は、朝食後景くんと共に、地下の訓練施設へと向かった。島の地下全てが、普段いる基地も真っ青なくらいの対シナゴ軍事施設だった。地下三十階にエレベーターで移動し、広大な訓練場を見る。
「この兵器は――」
翻訳機を身につけた研究者が説明してくれた。
私もヘッドフォンから流れてくる通訳の音声は理解できた。
本格的に、私がいらない世界が訪れそうだなと考える。そうなったら……どうなるのだろう。まず、出会ってしまったというのは取り消せないから、その部分に変化は無いと思うけれど、バトルスーツ不要の世界においては、景くんにとっても他の周囲のみんなにとっても私の価値は変わるだろうなと思う。
私個人に人間的な魅力があるかと言われると、これはネガティブな被害妄想でなく、ある程度客観的に考えていると自負しているのだが、難しい。私はただの引きこもりである。
最近、外見を磨き始めたが、こうなってくると、私が磨くべきだったのは内面じゃ無いかなぁと思い始めた。日本に戻ったら、教養を身につけてみようかなと思案する。
たとえば、人に優しくありたいとか、世界の平和を守りたいとか。
これらは私からすれば、人間誰しもが思う基本的道徳だと思うから、皆は褒めてくれるが、私は自分の長所だとは思わない。誰だって、私の立場だったら、戦っているんじゃ無いかなって考えることが多い。それをいうならば、景くんだって戦っているし、なんならバトルスーツを開発している高崎博士だってある意味では戦っているし、それは防衛軍の遠藤さんや真波司令だって同じだ。みんな、優しさに変わりは無い。
「以上です」
説明を聞き終え、実際に兵器を使用している映像を私は見た。
この武器が広まったら、また一歩、世界は平和になると考える。
そうしていたら、手をそっと景くんに握られた。
「難しい顔をしていますね」
「うん……ちょっと考え事しちゃってたよ」
「聞きましょうか?」
「ううん。大丈夫」
「では要約して教えて下さい」
「いいって」
「知りたいのです」
「――景くんは、優しいって思ってたとかそういう話です」
私が素直に答えると、景くんの手に力がこもった。
「私は優しくありたいとは思っていますが、どうでしょうね。貴女のようにお人好しではないので」
「どういう意味?」
「梨野さんの方が、ずっと優しいという意味です」
その後私達は退出した。
午後の十三時、レストランで昼食を食べてから、私達は部屋に戻った。
窓辺に立った私は、景くんがシャワーを浴びに行ったので、暫くの間海を眺めていた。
近年、肛門型慢性風邪に関しては、ワクチンが開発されつつあるらしい。病魔も地球からある程度去る可能性が浮上している。早く本来の平和が訪れて欲しいという思いは変わらない。特に、子供が成長する頃には、戦わなくていい世界が訪れていたらいいなと私は願っている。
「梨野さん」
その時、お風呂から出てきた景くんが、私の隣に立った。
「明日は帰国ですね」
「うん、そうだね」
「――今夜は、私も我慢の限界ですからね?」
そっと景くんが私の肩を抱き寄せた。私はしばしの間逡巡してから、小さく笑った。
「しなびたカボチャで良ければ、好きにしていいよ」
「私には今梨野さんが、とても美しく魅力的に見えます。造形という部分をかけ離れて、目を離せなくて、惹き付けられてやまない」
「レンジに目覚めちゃった?」
「いいえ。貴女のそのままの顔が、私にとっては輝いて見えるんです。不思議なものですね」
「他の人も人間に見えるようになった?」
「――特別なのは、貴女だけです。遙を除くと。きっとこれが、大切になったと言うことなのでしょうね。貴女が愛おしくてたまらないのですから」
そのまま隣から抱きしめられた。
私は景くんの胸板に額を押しつけて、目を伏せる。笑顔が浮かんでくる。
「梨野さんが、好きです」
まっすぐに言われたら、胸がドクンと高鳴った。私の心臓が、そこから煩くなり初めて、どんどん余裕が消えていく。私の耳の後ろを、景くんが指でなぞり、首筋に口づけを落とされた。私は景くんの背中に両腕を回しながら、ああ、私も多分、恋に堕ちてしまったんだろうなぁと考える。しかし、それを告げようとしたら、唇にキスをされた。その勢いで飲み込んだものだから、私の口からは、好意の言葉が出てきてくれなくなった。コレは言い訳かもしれないが。
「梨野さん。ベッドへ、行きましょう」
景くんに促され、私は寝室へと向かった。拒否する気持ちなんて、どこにも無かった。バトルスーツを腕時計型にし、私服姿になる。お互いに脱がせあいながら、何度も何度もキスをした。
「あっ、ァ……」
正面から抱き合い、膝の上に載せられて、下から貫かれる。
奥深くをぐっと突き上げられ、激しく腰を揺さぶられる。景くんにしがみついた私は、目を生理的な涙で滲ませる。それは快楽由来の涙でもあったし、気持ちが満ちて居てのうれし泣きの側面もあった。人間、長生きはするものだと思う。
「あ、あ、あ」
私の両腕を掴み、景くんが動く。
思わずギュッと体に力を込めると、露骨に内側で景くんの形を感じた。
開封されたゴムの封が、無造作にベッドの上にある。それはこの夜、二つ三つと増えていった。何度も体位を変え、景くんは私を穿つ。
「ああ、っ、ぁ――ああン! んー!」
人生で三回目の夜は、荒々しく獣のような交わりだった。いつの間にか訪れていたその夜が白むまでの間、私は声を上げた。緩急をつけて動かれる度、どんどん私の体は快楽を拾うように変わっていく。
「貴女はここが好きですね?」
「ぁっ」
私の体を熟知したようなことを、景くんがいう。実際好きだから困る。景くんの巨大な剛直で貫かれると、あんまりにも気持ちよくて、私の体は小刻みに震える。乱れた髪が肌に張り付いてきて、今度切りに行こうかなと考えた。
「あ、ン――! んン!!」
「愛してます、梨野さん」
「あ、あああ! あ、ッ、ン――!」
何度も何度も打ち付けられ、私は絶頂に達した。
この日私達は、ずっと交わっていた。
そのせいで、帰りの飛行機では終始気怠かったけれど、後悔はない。
それに自分の気持ちも明確になった。私は、景くんが好きみたいだ。
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