21 / 23
―― 本編 ――
【二十一】新生活への門出【本編完結】
しおりを挟む「次に再び、特務級危機名称ヤマタに分類されるシナゴが出現した場合のみ、バトルスーツの着用と武器使用、及び臨時招集をお願いする」
ビシっと敬礼をした真波司令に正式に告げられ、私も慣れない敬礼を返した。
幸い私がスーツを着用しなくなって三ヶ月が経過し、私の体も元に戻ったが、今のところは武器開発はさらに進んでいるし、シナゴは私が対処しなくても良くなっている。
この日、私はその足で自室へと戻った。
本日で、このカプセルホテルみたいな部屋ともお別れである。
と、いうのは、本当に景くんが掛け合ってくれたため、私はお引っ越しが決まったのである。本日、新居に引っ越す前、二人で籍を入れに行く。
地球防衛軍の意向で、私は日本には残って欲しいと請われたのと、景くんがOKだったので、今後は都内の邸宅で暮らす。一等地に謎の森林があり、その中央にぽつりと建っていた洋館を、景くんが購入したので、今後はそこで暮らすことに決まった。遙くんと月ちゃんも一緒であり、それぞれには乳母さん、及び邸宅には汀さんという執事さんがいると聞いた。乳母さんは代理母の方とはまた別なのだという。
基地のエントランスへ向くと、高崎博士と遠藤さん、それから真波司令が見送りに来てくれていた。それぞれに言葉をかけられて、照れくさくなってしまった。
そこへ汀さんが運転する車から、景くんが降りてきた。
「皆様おそろいで」
「――景氏。きちんと梨野を幸せにしてね」
高崎博士がそう言うと、景くんが笑った。
「勿論です。お任せ下さい」
「あ、あの、私十分幸せだよ?」
「奇遇ですね、私もです。梨野さんが隣にいて下さるだけで、私は幸福です」
景くんが私の肩を抱いた。
そんなこんなで見送られ、私は景くんと共に車の後部座席に乗り込んだ。
走り出した車の中でも、ずっと肩を抱き寄せられている。
「これからは、ヤマタ系は出ないことを祈らないとなぁ」
「出ても、可能な限り、梨野さんが動かなくて言いように、私が対処します」
「うーん」
「これでも昔の私よりは精進しているんですよ?」
くすりと笑った景くんは、それからじっと私を見た。私も視線を返す。
このようにして、私達は新しい出発を果たした。考えてみると怒濤であったが、今、私は大変幸せである。新しい生活がどのようになるのかは、まだ未知だ。子供と上手くやっていけるのかだとか、様々な課題もあると思う。けれど、今、私は頑張りたいと思っているから、勢いに乗ろうと思う。
「新型の武器にも慣れてきたところです」
「そうなんだ」
「ええ。それにしても、小児用のバトルスーツの研究が進んできたとはいえ、まさか遙が適合者になるとは……想定してはいましたが」
「それを使用せずに、シナゴが滅びればいいのになぁ」
「同じ心境です」
世界からは、シナゴという脅威が去ったわけでは無い。あくまで私に平和が訪れたと言うだけだ。それも、あるいは、つかの間のものかもしれない。先のことは全然分からない。
ただ一つ分かるのは、現在自分が幸せだというそのことのみだ。
「それはそうと、梨野さんは、無理をしないで下さい。一人の体ではないのですから」
「う、うん」
実は、私は妊娠している。
第三子となる子は、自分で産むこととなった。退院したある夜、押し倒された病室に、ゴムが無かった。高齢出産は危険だし、私は病み上がりだし、という理由で、いざ妊娠が判明したら深刻な顔で景くんには謝られて、堕胎の検討も勧められたのだが、判断したのは私である。私の最終判断を、なんだかんだで、景くんは喜んでくれた。
来年の今頃には、五人家族となる。果たして私が元気に出産できるかは不明だが、その子が仮にカボチャに見えても、きっと景くんは愛情を注いでくれると信じている。おそらく景くんは、愛情量というか興味関心の問題で、人の顔に興味があまりないだけだ。ナルシストというか、彼は根本的に完璧主義者のきらいがあって、完璧じゃないのを許せるのが、私と子供達だけという事なのだと思う。
車はその後、高速道路に入った。帯田市の風景が遠ざかっていく。
今後も勿論、有事の際は、私はこの土地に足を運ぶ所存だ。
「そういえば、『rhume chronique de type anal』のワクチン、完成して効果を発しているそうですね」
「うん、今日のトップニュースだったね」
「これで、病魔に関しては、一段落ですね」
「そうだねぇ。あとは、シナゴさえ来なくなったらいいんだけど」
私は景くんの肩に頭を預けつつ、そう呟いた。なお、バトルスーツは有事の際の転移に備えて、所持するように私に改めて渡されている。だから私の腕には、時計型のバトルスーツがある。
「シナゴとはなんなのでしょうね」
「端的に言えば宇宙人じゃないの?」
「――ある意味においては、私達の愛のキューピッドですが」
「そういうこという?」
「言いますよ、いくらでも」
クスクスと不謹慎なことを言う景くんを見て、つられて私も笑った。
その後は役所で入籍した。
可愛い婚姻届で評判の、都下のある市で提出した。
それから私達は都内の新居を目指して改めて進んだ。今後、世界がどうなるかは分からないけれど、私はこの幸せを、大切にしていきたいと強く願っている。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
YESか、はいか。〜守護者と少女の記録〜
MisakiNonagase
恋愛
返事は『YES』か『はい』。
あの日、少女がかけた魔法...
「君を一人前の大人にする。それが、あの日僕が兄夫婦と交わした、唯一の約束だった」
北関東の静かな街で、22歳の青年・輝也は、事故で両親を亡くした7歳の姪・玲奈を引き取ることになった。
独身の身で突如始まった「父親代わり」の生活。
不器用ながらも実直に玲奈を守り続ける輝也と、彼の背中を見つめて育つ玲奈。
二人の間には、血の繋がりを超えた、けれど名前のつかない絆が育まれていく。
しかし、玲奈が成長するにつれ、その絆は静かに形を変え始める。
叔父を「一人の男」として愛し始めた少女。
一線を越えぬよう、自らに「保護者」という呪縛をかけ続ける男。
「大学に合格したら、私のお願い、一つだけ聞いてくれる? 返事は『YES』か『はい』しか言っちゃダメだよ」
少女が仕掛けた無邪気な約束が、二人の関係を大きく揺らし始める。
進学による別れ、都会での生活、そして忍び寄る「お見合い」の影——。
共同生活を経て、玲奈が選んだ「自立」の答えとは。
そして、輝也が頑なに守り続けた「プライド」の先に待っていた結末とは。
これは、不器用な守護者と、真っ直ぐな少女が、長い歳月をかけて「本当の家族」を定義し直す、切なくも温かい愛の物語。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる