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ノースポール公爵家の事情編
お家事情4
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涙が落ち着いてきた頃、やっと2人は顔を上げた。リタは泣き過ぎて瞼が腫れており、フローレンスも目元が赤くなっている。
「取り乱してごめんなさいね。ついつい、感情が昂ってしまったわ。・・・ふふっ、こんな顔を見られたらいい攻撃材料を与えてしまうわね。」
「すぐに冷やすものをお持ちしますね。」
リタがそう言い、部屋の外に出ようとするのをヒナタが止めた。
「リタさん、ちょっと待ってください。回復魔法を使ってみましょう。効くかは分かりませんが、そんな顔で出ると何か言われるかもしれませんよ?」
「・・・それもそうですね。でも回復魔法は傷にしか効かないのでは?」
「そうなんですか?・・・あまり魔法は分からないので、まぁ、とりあえずやってみましょう!」
ヒナタの中では魔法=万能という意識があったので、回復魔法が傷にしか効果が無いというのは意外だった。
(まあ、でも瞼の腫れも傷の部類じゃないかな?いけるいける!)
2人の目元に片手ずつ掲げ念じる。すると、白くほわっとした光が目元を包み込む。
「暖かいわ・・・。」
そして、そっと目を開けた2人はお互いの顔を見て声を上げた。
「「わ、治ってる!」」
「良かった!これで大丈夫ですね。」
2人の腫れて赤くなっていた目は、腫れがひき赤みも無くなっていた。
「ちゃんと回復魔法が効いたみたいでよかったです。・・・ところで、お嬢様の味方って言っていいのかな?家の使用人でお嬢様が信頼できる人って、誰なんですか?あ、リタさん以外で。」
「・・・そう・・・ね。・・・・いないわ。リタ以外は皆、わたくしを忌み嫌っていると思うわ。」
「え?ひとりも?」
「・・・ええ。」
悲しそうなフローレンスの表情にリタも眉根を寄せ、俯く。
「そう・・・ですか。じゃあ、わたしがお嬢様の味方2人目ですね!」
暗くなりそうな空気を少しでも明るくできるように精一杯の笑顔でヒナタはピースを作る。
「・・・え・・・。でも貴女は・・・」
「テイムされてるからって、考えることまでは強制じゃないみたいだから、思考は別みたいですよ?強制されて味方だと言ってるわけじゃないので、そこは間違えないでくださいね!」
「そうなの・・・?」
「はい!そうです!でも、だからこそあんまりキツい事を頼まないでいただけると・・・嬉しいなぁ~なんて?」
ここぞとばかりに、にやにやしながらヒナタはフローレンスに訴えてみる。
戸惑いを覚えていたフローレンスは、そのヒナタの表情を見てイタズラを思いついたような顔になった。
「あら、どうしようかしら?あなたはスライムだし~、わたくしより魔法も使えるみたいだし~、意外と頑丈そうだし~、かなり使えそうだからキツい事を頼まないと約束は難しいわね!ふふっ。」
「え~~!?そんなぁ~、そこをなんとか!わたしか弱いスライムですよ?何が出来るっていうんですかぁぁぁぁぁ・・・。」
「まあ・・・まずは、そうね、偵察に行ってきてもらあおうかしら。」
「グスッ・・・偵察・・・ですか?」
「ええ。スライムの姿だったら、気づかれないでしょ?・・・透明にもなれるみたいだし?」
「はぁ、そう・・・ですね?・・・何を調べたらいいんですか?」
若干、不貞腐れながらヒナタはフローレンスに聞いた。
「ひとつは、お母様の容体を見てきて欲しい事。・・・実はお母様にあまり会えないの。エライザ様が会わせてくれなくて。最後に会ったのはひと月前だから、心配で心配で。リタも面会を出来ないようにされているみたいだから、様子が分からないのよ。」
「それは・・・なんででしょうね?実の母親なんだから会うくらい良さそうですけどね。・・・分かりました。調べて来ますね。他にはありますか?」
「もちろん、ふたつめは、エライザ様を監視してほしいの。」
「監視ですか?」
「そうよ。何か企んでいると思うのだけど、掴めないのよ。」
(まあ、リタさんしか味方がいないなら情報もそうそう集まらないだろうしね。)
迂闊な事は言わないヒナタだった。
「分かりました。でもずっと監視するのは無理ですよ?お嬢様のお母様の様子も見ないとですし。」
「分かってるわ。できる範囲でいいからお願いするわ。」
「そういう事なら!では、今から行ってきますね!」
「ええ!お願いね!・・・って、そういえば貴女・・・この1週間ずっと私の姿でいたけど、魔力は大丈夫なの?」
「え?あ、・・・そういえば・・・特に違和感なかったので忘れてました。大丈夫みたいです。」
そう言ってヒナタは笑顔でガッツポーズを見せる。
「わたくしの姿でそのようなポーズをとらないでほしいわ・・・。」
「あ、すみません。テヘペロ。」
「言ってるそばから。・・・まぁ、いいわ。わたくしとリタ以外の前では気をつけてくれればいいわ。・・・でも、姿が変わったままでも大丈夫だと言うと貴女の魔力はどれほどなのかしらね?」
「さあ?どうなんでしょうね?とりあえず、今からお母様の様子を見て来ますね!」
そう言うとヒナタは、スライムの姿へと戻っていく。
(おぉ~!戻れた!・・・実はちょっと戻り方が分かってなかったんだけど、やっぱり念じればなんとでもなるもんだわー。)
どこまでも能天気なヒナタであった。
「では、ヒナ。頼みましたよ。」
スライムよ姿では話せないので、右手を上げて返事をしたのだった。
そのまま透明になり、部屋のドアの下の僅かな隙間から廊下へと出る。
(いざ!屋敷探検だぁ!)
「取り乱してごめんなさいね。ついつい、感情が昂ってしまったわ。・・・ふふっ、こんな顔を見られたらいい攻撃材料を与えてしまうわね。」
「すぐに冷やすものをお持ちしますね。」
リタがそう言い、部屋の外に出ようとするのをヒナタが止めた。
「リタさん、ちょっと待ってください。回復魔法を使ってみましょう。効くかは分かりませんが、そんな顔で出ると何か言われるかもしれませんよ?」
「・・・それもそうですね。でも回復魔法は傷にしか効かないのでは?」
「そうなんですか?・・・あまり魔法は分からないので、まぁ、とりあえずやってみましょう!」
ヒナタの中では魔法=万能という意識があったので、回復魔法が傷にしか効果が無いというのは意外だった。
(まあ、でも瞼の腫れも傷の部類じゃないかな?いけるいける!)
2人の目元に片手ずつ掲げ念じる。すると、白くほわっとした光が目元を包み込む。
「暖かいわ・・・。」
そして、そっと目を開けた2人はお互いの顔を見て声を上げた。
「「わ、治ってる!」」
「良かった!これで大丈夫ですね。」
2人の腫れて赤くなっていた目は、腫れがひき赤みも無くなっていた。
「ちゃんと回復魔法が効いたみたいでよかったです。・・・ところで、お嬢様の味方って言っていいのかな?家の使用人でお嬢様が信頼できる人って、誰なんですか?あ、リタさん以外で。」
「・・・そう・・・ね。・・・・いないわ。リタ以外は皆、わたくしを忌み嫌っていると思うわ。」
「え?ひとりも?」
「・・・ええ。」
悲しそうなフローレンスの表情にリタも眉根を寄せ、俯く。
「そう・・・ですか。じゃあ、わたしがお嬢様の味方2人目ですね!」
暗くなりそうな空気を少しでも明るくできるように精一杯の笑顔でヒナタはピースを作る。
「・・・え・・・。でも貴女は・・・」
「テイムされてるからって、考えることまでは強制じゃないみたいだから、思考は別みたいですよ?強制されて味方だと言ってるわけじゃないので、そこは間違えないでくださいね!」
「そうなの・・・?」
「はい!そうです!でも、だからこそあんまりキツい事を頼まないでいただけると・・・嬉しいなぁ~なんて?」
ここぞとばかりに、にやにやしながらヒナタはフローレンスに訴えてみる。
戸惑いを覚えていたフローレンスは、そのヒナタの表情を見てイタズラを思いついたような顔になった。
「あら、どうしようかしら?あなたはスライムだし~、わたくしより魔法も使えるみたいだし~、意外と頑丈そうだし~、かなり使えそうだからキツい事を頼まないと約束は難しいわね!ふふっ。」
「え~~!?そんなぁ~、そこをなんとか!わたしか弱いスライムですよ?何が出来るっていうんですかぁぁぁぁぁ・・・。」
「まあ・・・まずは、そうね、偵察に行ってきてもらあおうかしら。」
「グスッ・・・偵察・・・ですか?」
「ええ。スライムの姿だったら、気づかれないでしょ?・・・透明にもなれるみたいだし?」
「はぁ、そう・・・ですね?・・・何を調べたらいいんですか?」
若干、不貞腐れながらヒナタはフローレンスに聞いた。
「ひとつは、お母様の容体を見てきて欲しい事。・・・実はお母様にあまり会えないの。エライザ様が会わせてくれなくて。最後に会ったのはひと月前だから、心配で心配で。リタも面会を出来ないようにされているみたいだから、様子が分からないのよ。」
「それは・・・なんででしょうね?実の母親なんだから会うくらい良さそうですけどね。・・・分かりました。調べて来ますね。他にはありますか?」
「もちろん、ふたつめは、エライザ様を監視してほしいの。」
「監視ですか?」
「そうよ。何か企んでいると思うのだけど、掴めないのよ。」
(まあ、リタさんしか味方がいないなら情報もそうそう集まらないだろうしね。)
迂闊な事は言わないヒナタだった。
「分かりました。でもずっと監視するのは無理ですよ?お嬢様のお母様の様子も見ないとですし。」
「分かってるわ。できる範囲でいいからお願いするわ。」
「そういう事なら!では、今から行ってきますね!」
「ええ!お願いね!・・・って、そういえば貴女・・・この1週間ずっと私の姿でいたけど、魔力は大丈夫なの?」
「え?あ、・・・そういえば・・・特に違和感なかったので忘れてました。大丈夫みたいです。」
そう言ってヒナタは笑顔でガッツポーズを見せる。
「わたくしの姿でそのようなポーズをとらないでほしいわ・・・。」
「あ、すみません。テヘペロ。」
「言ってるそばから。・・・まぁ、いいわ。わたくしとリタ以外の前では気をつけてくれればいいわ。・・・でも、姿が変わったままでも大丈夫だと言うと貴女の魔力はどれほどなのかしらね?」
「さあ?どうなんでしょうね?とりあえず、今からお母様の様子を見て来ますね!」
そう言うとヒナタは、スライムの姿へと戻っていく。
(おぉ~!戻れた!・・・実はちょっと戻り方が分かってなかったんだけど、やっぱり念じればなんとでもなるもんだわー。)
どこまでも能天気なヒナタであった。
「では、ヒナ。頼みましたよ。」
スライムよ姿では話せないので、右手を上げて返事をしたのだった。
そのまま透明になり、部屋のドアの下の僅かな隙間から廊下へと出る。
(いざ!屋敷探検だぁ!)
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