スライムなのに悪役令嬢になっちゃった！？・・・荷が重い！！

身代わり生活スタート

魔法の授業①

「すみません、遅くなりました。」


懐中時計を翳し、部屋の中へと入室するフローレンスに変化したヒナ。フローレンスにはミニを持たせて、姿を消して一緒に部屋へ来てもらった。
ヒナタはどうしても1人では魔法について理解できる自信がなかったのだ。


「おかえり、フローレンス。忘れ物はあったかい？」

「え？あ！は、はい！ありました。」

「？・・・そう、よかった。では、まずはお茶からでよかったかな？」

「はい！大丈夫です！」


ニコニコで、お茶のお誘いを受けたヒナタだった。


「なんだか、フローレンスの感じが変わった・・・かな？」


すぐにフローレンスから背中を叩かられる。先程までのフローレンスとの態度の違いに気づかれたようだ。
フローレンスはにこりともしなかったが、ヒナタは始めからニコニコなのだから怪しまれても仕方ないかもしれない。


「え、あ、いや、その、か・・・変わらないですよ？」


挙動不審すぎるヒナタに疑いの目が外れない。が、そこへお茶が運ばれてくる。
お茶のお供にケーキやクッキー、マカロン等も運ばれてきた。


「さあ、フローレンス。どれでも好きなものを食べていいよ。君の為に用意したんだ。」

「わあ！いいんですか！あ、・・・ありがとうございます。嬉しゅうございますわ！」


口調が怪しいが、笑顔でごまかす。
淑女教育はなかなか仕事をしなかった。
だが、お茶のマナーは頑張っておかしくない程度にはできた。フローレンスのツッコミが飛んでこなかったから、合格点はもらえたのだろう。


「さて、お茶を飲みながらでいいから聞いてね。フローレンスが知りたいのは魅了魔法についてだよね？」

「ええ、そうです。それは、どのような効果で効力はどれほどなのか、解除は誰でもできるのかなど分かりますでしょうか？」

「そうだね。じゃあまずは、どのような効果を発揮するのか、から。まあ大雑把には魅了をかけた人の好感度を上げるものだね。初めはこの人良いくらいだが、重ねてかけることにより、段々と執着させて行く事ができる。・・・麻薬のようなものだと考えていいだろう。」

「麻薬・・・」

「だから、あまりに長期間かけられて廃人になったケースもない事はない。少数事例どけどね。」

「その事例ではどのくらいの期間掛けられていたのでしょうか？」

「それは、確か20年とか30年だったと思う。なんせ300年程前の文献にちょっとだけ載っているくらい古い情報だから、正確ではない。しかもそれも魔法の力が強くないと廃人までなることはほとんどないと考えてもらっていいと思う。」

「そうですか・・・。」
(旦那様は解除できたし、今は意識もはっきりしていりという事は・・・エライザ様はそこまで強い魅了魔法を使えるわけではないという事かな？)

「魅了魔法とは、一度かけただけでは効果が薄い。だから、何度も重ねがけをする。だが、それは対象者が1人の場合ならばそんなに時間をかける事なく自分の虜にしてしまう事ができるのであって、フローレンスの場合のように対象者が大勢だとかなりの期間が必要になってくると思われる。」

「だから、エライザ様は何年も時間をかけて、だん・・・お父様や使用人達に魅了魔法をかけていたのですね。」

「そう考えて間違いないだろう。事情を考えるに2年前にやっとある程度までかけ終わったのだろう。それを解除となると、これはかなり難しくなる。」

「・・・え、どうしてですか？」

「長期間、かけられ続けた魔法を解除するのは普通の魔法使いには難解なんだ。絡み合った紐を解くような感覚と思ってくれていい。それを解くにはかなりの力量が必要となる。屋敷の使用人までとなると、解除に年単位でかかるかもしれない。だが、解除できないというわけではないからそこは安心して欲しい。」

「ですが、解除にそんなに長い間だと流石に困ります。もっと早くできないのでしょうか？」


ヒナタの訴えにライアンも腕を組み考え込む。あっ！と気づいたようにヒナタを見た。


「こちらも難しいかもしれないが、この方法ならすぐに解除できるかもしれない。」

「どんな方法ですか？」

「光魔法を使える人に解除をお願いするんだ。」

「光魔法・・・ですか？」
(わたし使えるんですけど？)

「そう、光魔法を使える人はそういないから探す事から始めないといけないが光魔法には『ディスペル』という魔法があるはずなんだ。それなら絡まった紐をすぐに解ける。」