least common multiple

優未

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 今日は高校の同窓会だった。卒業から10年を祝しての開催らしい。普段なら人が大勢集まる催しは苦手で参加しないのだが、友達に一緒に行こうと誘われたのだ。肝心の友達は不参加になってしまったが。

「久しぶり」

 話せる相手もいなくて1人黙々と食事をしていると声をかけられた。

「えっと」

 久しぶりと言われても、思い出せない。誰だろうこの美男子は。私が思い出せないでいると、彼も少し気まずそうな顔をしてしまった。

「あー覚えていない?俺、久田」
「久田くんって委員会が一緒だった?」
「そうそう、図書委員の久田」
「ごめんなさい、すぐ気が付かなくて。なんというか……落ち着いたね?」
「俺も社会人ですから」

 失礼なことを言ってしまったにも関わらず陽気に笑い、乾杯とグラスを合わせた。久田志伸くんといえば、ツンツンした髪の毛とピアスが印象的な男の子で、学年問わず多くの女子生徒からモテていた。なぜこの人が図書委員になんてなったのだろうと不思議に思ったものだった。今はあのツンツンはどこかへ行ってしまったようだ。それにピアスもしていない。

「落合は1人で来たの?」
「みいちゃん、伴野さんが一緒に行こうって誘ってくれてたんだけど。急にデートの予定が入ったとかで」
「それで友達のこと放置するのはな」
「いいのいいの。恋人との時間優先したほうがいいもん」

 みいちゃんの彼氏は現在地方転勤中だ。遠距離恋愛の2人の邪魔はしたくない。

「落合はそういう相手いるの?」
「え?いないいない。久田くんみたいにモテないし」
「別に俺普通だよ?」
「またまた」
「好きな子には相手にされていなかったし……だから告白された子と付き合ってみたけど、長続きしなくて」

 また失礼なことを言ってしまったようだ。どんなに大勢からモテようとも好きな子に振り向いてもらえなければ辛いだろう。まるで少女漫画に出てくる当て馬ポジションだ。ちなみに私は当て馬キャラを好きになることが多い。好きになった相手がヒロインでなければ……いや、叶わない恋をしているからこそ当て馬は魅力的なのだ。脳内妄想を繰り広げていると、1つの考えが浮かぶ。

「もしかして今日その子に会いたくてきたとか?」

 あまり周りに聞こえるのもよくないと思い、耳元で囁く。

「えっ!あーうん、と…」

 少しだけ久田くんの耳が赤くなった気がする。

「やっぱりここにいないでその子のところ行ってきなよ」
「いい、いい。俺は落合と話したいから」
「本当に?」
「…うん。落合は優しいね」
「そんなことないよ」

 久しぶりに会って何を話せばいいか分からないでいたが、久田くんは話の仕方もスマートで全く気まずくなることがなかった。

「5年前のクラス会の時も話しかけたかったんだけど、用事で遅れて行ったら丁度落合が帰るところで諦めたんだ」

 それは知らなかった。私のような目立たない人間にも目を向けてくれていたとは。社交的な人間は何もかもが違うと思った。今もこうして1人で隅っこにいる私に声を掛けてくれているところも流石である。おかげで退屈せずにこの時間を過ごせているが、先ほどからずっと2人で話していることがふと気になった。周りの皆が何となくこちらを見ているような。きっと久田くんと話がしたいのではないだろうか。彼に憧れていた子はたくさんいるはずだ。

「…久田くんみたいな人気者とずっと話していて大丈夫かな」
「またそれ?一通り話したいやつとはもう話したよ。嫌じゃなければ俺の相手して?」

 何度も同じことを言われるのは嫌だろう。ここは彼の厚意に甘えて2人で楽しく会話を続けることにした。
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