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「志伸、今日落合さん来るらしいな」
「チャンス逃すなよ」
同窓会が決まった時点で、伴野に落合を誘ってもらうように頼んだ。頼れるものは何でも頼ろうと思って、幹事の友人に自分の気持ちを伝えてみた。落合のことで協力してもらうためだったのだが、そもそも他の面々にも周知の事実だったらしい。
「大した用もないのによく俺のクラスに来てただろ」
「一緒の委員会だったよな」
「モテる人間は自分からいかないから…」
当時これだけの人間に俺の気持ちがバレていたとは知らなかった。何もできずに過ごした高校時代が情けなくなってきた。さらに今日の参加者は何となく事情が知らされているらしい。皆が俺を生温かい目で見てくる。若干のいたたまれなさを感じていると、目当ての人物が会場に到着した。
「落合です」
「落合さん久しぶり~座席はくじ引きだからこの箱からどうぞ」
引いたくじを見ながら着席する。落合は周りの人間と軽く挨拶をした後、ドリンクメニューを眺めていた。近くの人間の話を聞いて相槌を打っているが、会話に積極的に混ざる様子はない。協力を仰いだ伴野だけでなく、落合と仲が良かったメンバーは今日見事に欠席している。
「高校卒業から10年という節目を記念して―――乾杯」
落合は黙々と食事をしている。大勢の集まりが苦手らしいし、仲の良い相手がいないとなると居心地が悪いかもしれない。今の状況を作った原因の大半は俺である。落合の横は空いているし、話に行こう。そう思って立ち上がると、仲間たちに背中を押された。
「久しぶり」
さりげなさを装って声をかけるも、落合は不思議そうな顔をしている。目線が上にいってキョロキョロしている。これはもしや覚えていない?名乗ると流石に思い出してくれたようだが、今度は何故か目線が頭に行く。気になって手で触ってみるも、特になにもなさそうだ。
高校時代と変わらない真っ直ぐ伸びた背筋が彼女らしさをよく表していた。上手く立ち回れなかった若い頃の後悔が尾を引いているなんていうのは幻想だった。自分の気持ちを再確認したところだったというのに、落合は何を勘違いしたのか、好きな人のところへ行けなんて言ってくる。気を使ってなのか耳元で囁かれて、そこに熱が集まるのが分かる。今までで1番近い距離に緊張する。
昔のように何もできないまま終わらせたくはない。いい印象を持ってもらって次に繋げたい。落合も楽しそうに話しているように見えるのに、それは俺の勘違いなのか。何となく自分との間に線を引かれている気がする。
「…久田くんみたいな人気者とずっと話していて大丈夫かな」
積極的に交流を持つタイプではないが、周りには気を使う人だ。会場を見まわして、俺が落合とだけ話していることを心配しているようだ。ここにいる人間のほとんどが事情を知っているし、こっちを見てきているのはただの野次馬だから気にしなくていい。そんな裏事情を話すタイミングは、二次会への不参加を決めた時にきた。
驚くほど周りに知られていた俺の気持ちは、肝心の本人にはちっとも届いていなかったらしい。戸惑ってはいるが、嫌そうには見えない……と思う。まずは友達からと言われたが、友達なんかで終わりたくない。同じ気持ちを返してもらえるように頑張ろう。
「じゃあ、彼氏候補としてこれからよろしく。詩織」
そう伝えると、顔を真っ赤にして彼女は頷いた。
「チャンス逃すなよ」
同窓会が決まった時点で、伴野に落合を誘ってもらうように頼んだ。頼れるものは何でも頼ろうと思って、幹事の友人に自分の気持ちを伝えてみた。落合のことで協力してもらうためだったのだが、そもそも他の面々にも周知の事実だったらしい。
「大した用もないのによく俺のクラスに来てただろ」
「一緒の委員会だったよな」
「モテる人間は自分からいかないから…」
当時これだけの人間に俺の気持ちがバレていたとは知らなかった。何もできずに過ごした高校時代が情けなくなってきた。さらに今日の参加者は何となく事情が知らされているらしい。皆が俺を生温かい目で見てくる。若干のいたたまれなさを感じていると、目当ての人物が会場に到着した。
「落合です」
「落合さん久しぶり~座席はくじ引きだからこの箱からどうぞ」
引いたくじを見ながら着席する。落合は周りの人間と軽く挨拶をした後、ドリンクメニューを眺めていた。近くの人間の話を聞いて相槌を打っているが、会話に積極的に混ざる様子はない。協力を仰いだ伴野だけでなく、落合と仲が良かったメンバーは今日見事に欠席している。
「高校卒業から10年という節目を記念して―――乾杯」
落合は黙々と食事をしている。大勢の集まりが苦手らしいし、仲の良い相手がいないとなると居心地が悪いかもしれない。今の状況を作った原因の大半は俺である。落合の横は空いているし、話に行こう。そう思って立ち上がると、仲間たちに背中を押された。
「久しぶり」
さりげなさを装って声をかけるも、落合は不思議そうな顔をしている。目線が上にいってキョロキョロしている。これはもしや覚えていない?名乗ると流石に思い出してくれたようだが、今度は何故か目線が頭に行く。気になって手で触ってみるも、特になにもなさそうだ。
高校時代と変わらない真っ直ぐ伸びた背筋が彼女らしさをよく表していた。上手く立ち回れなかった若い頃の後悔が尾を引いているなんていうのは幻想だった。自分の気持ちを再確認したところだったというのに、落合は何を勘違いしたのか、好きな人のところへ行けなんて言ってくる。気を使ってなのか耳元で囁かれて、そこに熱が集まるのが分かる。今までで1番近い距離に緊張する。
昔のように何もできないまま終わらせたくはない。いい印象を持ってもらって次に繋げたい。落合も楽しそうに話しているように見えるのに、それは俺の勘違いなのか。何となく自分との間に線を引かれている気がする。
「…久田くんみたいな人気者とずっと話していて大丈夫かな」
積極的に交流を持つタイプではないが、周りには気を使う人だ。会場を見まわして、俺が落合とだけ話していることを心配しているようだ。ここにいる人間のほとんどが事情を知っているし、こっちを見てきているのはただの野次馬だから気にしなくていい。そんな裏事情を話すタイミングは、二次会への不参加を決めた時にきた。
驚くほど周りに知られていた俺の気持ちは、肝心の本人にはちっとも届いていなかったらしい。戸惑ってはいるが、嫌そうには見えない……と思う。まずは友達からと言われたが、友達なんかで終わりたくない。同じ気持ちを返してもらえるように頑張ろう。
「じゃあ、彼氏候補としてこれからよろしく。詩織」
そう伝えると、顔を真っ赤にして彼女は頷いた。
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