No seek, no find.

優未

文字の大きさ
3 / 6

3

しおりを挟む
 彼と関わるようになり、最初に持っていた印象はかなり薄れていた。遊び人の噂もあるが、それは元々の親しみやすい性格と、職場の人間との円滑なコミュニケーションを取るための行動からきたもののように思う。そもそも素行の悪い人間が若手有望株と呼ばれるほど我が騎士団は甘くないはずだ。

 そうなると「恋人が欲しいなら俺と付き合おうよ」というあの発言は何を意味するのか。私のことを好き?だが今の私たちの関係は付き合っているとは言えない。一番よく食事をしている異性の域を出ていないだろう。結婚相手を探すという目的を考えるとそろそろ彼との付き合いをどうするか考える時期かもしれない。

「アマラ?」
「すみません、少しぼーっとしていました」

 私が上の空なことに気が付いて、こちらを心配そうに見つめてくる。私たちの関係について考えていましたなんて伝えたら、彼はどう答えるだろうか。そんなことを言えるわけもなく、話は流れていく。

「来週からしばらく遠征で会えなくなる。1か月くらいかな」
「お気を付けて」

 経理の仕事をしていると、自ずと騎士団のスケジュールも把握できている。危険な任務というわけではなく、定期的に行われる訓練のはずだ。

「帰ってきたら伝えたいことがある」
「今じゃダメなんですか」
「うん」

 何やら珍しく真剣な顔で頷かれたのでそれ以上は何も言えなかった。彼と会わない1か月間をどうやって過ごそうか。すっかり休止状態の交友関係の開拓を再開しようか。特にこれといったことは思いつかないまま過ごしていたが、彼が遠征に行く数日前、偶然女性といるところを見かけてしまった。

 遠くから見ても分かる華やかな美人で、彼と並んで歩く姿もとても似合っていた。もしかしたら私に好意を抱いているのではないかなんて一瞬でも考えた自分が恥ずかしかった。決まった相手のいる人を思うなんて不毛だ。これから1か月もう会うこともない。遠征から戻ってきたら、ただの事務員として仕事でしか関わらないようにしよう。私は私に合った人と出会うのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

カモフラージュの恋

湖月もか
恋愛
容姿端麗、文武両道、しかも性格までよし。まるで少女漫画の王子様のような幼馴染な彼。 当たり前だが、彼は今年も囲まれている。 そんな集団を早く終わらないかなと、影から見ている私の話。 ※あさぎかな様に素敵な表紙を作成していただきました!

恋を質に入れた日

トム
恋愛
路地裏の地下にある質屋では、 “記憶”を売ることができる。 恋人の手術費を工面するため、 俺は彼女と出会った日の幸福を手放した。 愛の熱を失ったまま、 それでも共に生きることはできるのか。

【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから

よどら文鳥
恋愛
 私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。  五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。  私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。  だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。 「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」  この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。  あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。  婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。  両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。  だが、それでも私の心の中には……。 ※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。 ※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。

この別れは、きっと。

はるきりょう
恋愛
瑛士の背中を見ていられることが、どれほど幸せだったのか、きっと瑛士は知らないままだ。 ※小説家になろうサイト様にも掲載しています。

旦那様の愛が重い

おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。 毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。 他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。 甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。 本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。

最愛のあなたへ

夕香里
恋愛
最愛の人から送られ続けていた手紙の最後の一通。それは受取人にとって、複雑な心境になる手紙。意を決して封を開けるとそこには愛が溢れていた。

愚かな恋

はるきりょう
恋愛
そして、呪文のように繰り返すのだ。「里美。好きなんだ」と。 私の顔を見て、私のではない名前を呼ぶ。

おにょれ王子め!

こもろう
恋愛
レティジアは公爵令嬢で、王子フリードの婚約者。しかし現在、フリードとの関係はこじれまくっている。 見た目は気が強そうだが実は泣き虫なレティジアは人知れず毎日涙を流し、フリードはなんだかイライラしている。 そんな二人の前に現れるのは……!

処理中です...