走馬灯に君はいない

優未

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「あなたにも…記憶が」

 ではどうして私に近付くの。前世で恨みは晴れなかった?じゃあ今までこの人が取ってきた行動は。私の気持ちは。

「また自分を好きにさせてから捨てるつもりだったの?それならもう」
「違う。出会ったのも偶然だし、復讐なんて企んでもいない。…憎んだ相手でなければ結ばれてもいいのか」
「それは」
「前世でも今世でも俺は君を憎んでなどいない。君のことが好きだ」

 前世の記憶は夢で断片的に見るだけで、はっきりと覚えているわけではない。死の間際で行われたやりとりで分かるのは復讐の為に私を利用したことだけ。私に対しての感情などは確かに知りようがない。

「誰かの為を思って行動できるのは君の長所だが、人の気持ちを決めつけて否定するのはよくない」
「ごめんなさい」
「2人とも前世を覚えている以上、切り離すことなんて不可能だ。君の考えも理解はできる。だが俺たちは前世の記憶をもったままこれまで生きてきた。前世を含めて俺自身でもある。今の君に今の俺を好きになってほしい。君も前世に囚われるなと言うなら、前世を理由にせずに俺を振ってくれ」

 彼の言う通りで、私も前世の記憶を抱えながら生きてきた。誰よりも私自身が前世に固執していると言ってもいい。男性と親密になるのを避け、1人で暮らしていこうなんて考えながら結局カネーシオを好きになった。彼からのまっすぐな好意を感じながら、どうしてそれを受け取ってはいけないと思ったのか。

 前世に囚われてほしくない。負の感情で生きてほしくないから。愛のない結婚生活を送ってほしくない。幸せになってほしい。じゃあ、過去も今も私のことを恨んでおらず、思いを寄せてくれているなら。今の私が、今の彼に告げるべき言葉は―――。

「私もあなたのことが好きです、ゾーエさん」
「リーン…ありがとう。幸せにする」
「前世であなたは幸せだった?」
「君のいない人生が幸せだと思うか」

 私は前世の全てを覚えているわけではない。先に死んでしまったから彼のその後もわからない。なんとなくだが、ゾーエは記憶がはっきりしていそうだ。

「ねえ、前世のこと教えてくれない。実ははっきりとは思い出せなく…」

 話を遮るように、彼に抱きしめられる。

「全てを思い出す必要なんてない。俺たちは今を生きているのだから」
「……それも、そうね」

 私を抱きしめる腕が少しだけ震えている。言いたくないのなら、無理に聞かないほうがいいのだろう。過去は過去だ。今の彼と生きていくのに、それは必要ない。彼が少しでも安心できるように、そっと抱きしめ返す。

 しばらく抱き合ったままでいると、不意に彼の右手が頬に添えられる。目を合わせると、彼が顔を近づけてくる。私はそっと目を閉じてキスを受け入れた。

 この仕草は、変わっていないらしい。
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