imitation

優未

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迷子のお姫様

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「友人達が君のことを紹介してくれってうるさくてね」

 今日は初めてアスター様と2人で夜会に参加している。何やらお友達が婚約者である私のことを気になっているらしい。もしかして、アスター様にふさわしいかどうか見極めようと?そんなのふさわしくないに決まっているじゃない。結婚を急かされているアスター様が、私の流した噂を聞いて何となく決まってしまった話だもの。

 最近は、仲を深めるためなどと言って接触が増えているけれど…彼の気持ちはどうなのだろう。親しくなりたいというのは、ただ婚約者として距離を縮めようということなのか、私に本当に興味を持ち始めているのか。わからない。恋物語が好きでも、私自身の経験値は低いのだから。

「どうしたの、黙り込んで。もしかして具合が悪かったり」

「いえ、お友達にどう思われるか不安で」

「それは心配いらないよ。あんまり愛想よくしなくてもいいからね」

「何故です?」

「ライバルを増やしたくないから」

 どういう意味か問おうとした時、アスター様を呼ぶ声が聞こえた。

「本日の主役のお出ましだぞ」

「お待たせ。婚約者のミクリィ・フォーゼン嬢だ」

「アスターがなかなか紹介してくれないものだから」

「近くで見るとますます美しい」

「…ありがとうございます」

「顔も見せたしもう帰ってもいいかな?」

 視界がアスター様の背で遮られた。

「そう言うなってアスター」

「ずっと初恋のお姫様を探しているとか言ってたのに、静かになったと思ったら。まさかミクリィ嬢と婚約なんてな」

 ……初恋のお姫様?

「マクレーンの婚約者披露の時だったっけ。お姫様がいたって大騒ぎだったんですよ?」

「その話は恥ずかしいからやめてくれ」

 あの場にはマクレーン様に選ばれなかったというだけで、可愛いお姫様がたくさんいた。そういえば、アスター様もパーティーにいたと前に聞いたわ。……やっぱり皆お姫様が好きなのね。色んな女性との噂は、もしかするとその女性をずっと探していたからかしら。その人とはうまくいかなかったから、私に声をかけた?なんて最悪なタイミングで自覚しちゃうの。お姫様になれなくてもいい、そう思っていたのに。

 王子様アスター様お姫様別の人を好きだったら―――片思いのままの婚約関係なんて辛いだけじゃない。
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