imitation

優未

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魔法はいつか解ける

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 お姫様になれないなら、王子様に恋をしてはいけない。噂を流したのも、相手にされることはないと分かっていたからで。婚約したのは立場上断りようがなかったからで。結婚は恋愛感情がなくてもできるものだから。そう自分に言い聞かせてきたのに。王子様にお姫様のように扱われていたら勘違いしてしまった。お互いに感情がなければ問題のない関係だったのに。

「じゃあ僕たちは失礼するよ」

 私はほとんど話すこともなく、アスター様のお友達の輪から離れることになった。

「今日は付き合ってくれてありがとう、ミクリィ…っ」

 アスター様が心配そうに私の顔を覗き込んでくる。

「顔が真っ青だ。やっぱり無理してた?気付かなくてごめん」

「ちょっと緊張して寝不足だったので…気が抜けたのかもしれません。少し休めば大丈夫です」

 感情を表に出すなんて淑女失格だ。今日の私はいつも以上にダメだ。メッキがぼろぼろ剝がれていく。

「今日はもう用事も済んだし、帰ろう」

 どうしていつも優しいんだろう。ううん、アスター様はどんな人にでも同じように接する人だ。だって皆の王子様だもの。私が特別なわけではない。それを勝手に勘違いしていたのは私だ。王子様に近付いてはいけなかった。これではマクレーン様の時と同じではないか。

「気分が悪いとかはない?」

「…大丈夫です」

「1時間くらい適当に走ってくれるかな。ミクリィが落ち着いたら家まで送るね」

 こんな情緒不安定な女に寄り添う必要などないのに。さっさと家に送り届けてしまえばいいのだ。

「何か嫌なことでもあった?…僕には話せないこと?」

 話せるわけがない。どう話せというの。あなたが好きで苦しいです?優しくされたから好きになってしまいました?そんなこと言ったら彼が困るだけだ。もうこんな関係終わらせたい。

 ……終わらせればいい。私の立場からは断れないと受けてしまったが、貴族の令嬢らしくない振る舞いをたくさん見せてきた今なら。侯爵家にはふさわしくないと判断して承諾してくれるかもしれない。



「アスター様、婚約を解消してください」
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