俺がモテない理由

秋元智也

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第六十八話 作戦前夜

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腐敗した臭いが充満していたせいで、アゾビエン
テの臭いが分からなかった。
だが、屋敷の中にいるのは確実だという。

「なら、周りを取り囲んで逃げられないようにし
 てから一気に叩くか……」
「ねぇ~陸は、領主邸に心臓があると思う?」

誠治は至って普通の事を言っている。
一番安全な場所といえば、一番位の高い人間だか
らだ。護衛を増やして護らせるにはうってつけな
のだ。

「いや、そこにはない……だから別の誰かだろう
 けど、誰に…………やっぱり家族って考える方
 が妥当だよな……」
「まるで陸は見てきたみたいだね」
「あぁ、そうだな……」
「……」

一瞬、言葉を間違えた事に気づく。

「いや、これは俺の勘だよ、誠治も知ってるだろ?
 俺って結構勘がいいって」
「うん、そうだったね。僕は陸が行くならどこで
 も行くよ?それがどんな場所でもね」

誠治の言葉には心強く感じた。
だが、同時に何か違和感を覚えたのは陸以外のモ
ンドとナオだけだろう。

「そういえば、結界石があったよな?」

店に珍しい石があるとレイネが買っていたのを
覚えている。

「な、何よ?まさか使うなんて言わないでしょう
 ね?」

小さな腰の袋をぎゅっと握りしめたのだった。

屋敷の周りに置いて魔力を通せば、そこからは誰
ー人出られなくなるというものだった。

ただし、魔力を込めた人間は常に魔力を補給し続
ける必要があり、動くこともままならないのだ。

「レイネ、頼めるかい?」
「勇者様……ですがこれは……」
「お願い、レイネ。君しか出来ない事なんだよ」
「近いですわ………し、仕方ありませんわね」

いきなり近くまで詰め寄った誠治にレイネはすぐ
に了承したのだった。

誠治はレイネに迫る勢いで壁際まで追い込むと返
事を聞いた瞬間、即座に手を離したのだった。

「陸、大丈夫だって」
「あぁ、助かる」
「な、な、な、なんでですのっーー!」

キスする寸前まで近かった勇者の顔がすぐに離れ
た事で、期待して目まで瞑ったレイネは一人でず
っと待つという滑稽な姿を晒しただけになってし
まった。

プライドの高いレイネにとっては、屈辱的だった
のだろう。

「今日はゆっくりして、明日決行しようか!」

これ以上陸が話すとレイネが怒り出しそうだった
のを気づいたのか誠治が先の話を続けた。

結界はレイネが、モンドは正門から、誠治は先に
屋敷に入って堂々と5階へ、陸とナオは中庭から地
下へ続く通路へと各自の持ち場で一気に決めると
話が進んだのだった。

ご機嫌を取りの為に誠治はレイネをエスコートす
るように街へと出ている。

陸は今のうちにと宿屋に籠って錬金術に励む事に
した。

「お前は勇者には付いて行かないんだな?」
「あぁ、俺はちょっとな……」
「ポーションか?」

ナオが俺の横に来ると机に並んだポーションを手
に取って眺めた。

「誰でもできる中級ポーションだ」
「誰でもって……器用なやつだな」
「……ナオは休まなくていいのか?」
「魔族である私が休むと言う事はどう言う事か知
 ってて言ってるのか?」

甘い香りが漂ってくる。
なぜか、頭がぼうっとする。

気づくと、ベッドに横になっている気がする。

さっきまでポーションを作っていたはずだが…?

俺は思考を巡らせるが、記憶が曖昧になっていく。
そして、甘い香りに身を委ねようとした時、陸の
身体の中にポウっと熱が伝わり、ユニコーンが飛
び出してきたのだった。

『グルルルルッーーー』

威嚇するようにナオを睨み付けると、甘い香りは
一瞬で霧散したのだった。

スッと身体の自由が戻ると、思考も戻って来る。

「お前っ……」
「何よ?別にいいじゃない?減るものじゃないし
 勇者だって向こうでヤってるでしょう?私には
 ただの食事よ?」

サキュバスの特性をすっかり忘れる所だった。
男性の精液が食事なのだ。

「別の人を当たれよっ」
「何よ!ケチッ……」

俺は突き放すと、再びポーション作りに励んだ。

いつのまにか、ユニコーンはベッドの横で踞って
いた。

誠治が帰って来ると、手には肉の挟み揚げと冷え
た果樹酒が乗っていた。

「お疲れ様…陸、食事食べてないでしょ?」
「あぁ、わりぃーな」

誠治から受け取ろうとすると、スッと避けられて
しまった。

「?」

一瞬、何をしてるのか分からなかったが、口の前
に出されたので、被りついた。

もぐもぐと噛むと、なかなかに美味しかった。

「美味いな……」
「なら、もう一口どうぞ」

そう言って、再び口の前に出されたのだった。
結局、最後まで誠治に食べさせられる形になって
しまった。

「俺、自分で食べれるぞ?」
「いいから、いいから。たまには僕にもこういう
 事させてよ……ね?」
「今日はレイネとそういう事してきたんじゃない
 のかよ?」
「う~ん、どうかな……」

誠治は言葉を濁すと、そっと俺の口元についたソ
ースを拭ったのだった。

「そう言う事は女にやれよっ……」
「ん?そう言う事って?陸はどんな事されたいの
 かな?」

さっき拭った指を口元に持っていくとペロリと舐
める。
イケメンは何をやってもいいのかよっ!

俺は心の中だけで叫んでいた。





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