俺がモテない理由

秋元智也

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第七十六話 逸話と伝承

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それは、まだこの世界に人間達はおらず、世界が
魔物で溢れていた時代の話だった。

この地に女神は人間という種族を作ったという。
だが、彼らは力も弱く、自分達だけでは魔物に対
抗できる力がなかった。

そこで女神は安全な大地を作り、そこで結界を張
って生活させたのだという。

だが、人間達は徐々に知恵をつけると結界の外へ
出ては魔物を倒す術を身につけたという。

武器を作り、魔術を身につけた。

女神はそれに満足して大陸を二つに分断した。

大きな地割れが起きてそこには海水が流れ込み
大きな川ができた。
これは魔族領との境界線の出来た経緯だという。

だが、大地はひび割れ作物の不作が続き人間達
を再び窮地に陥したのだ。
そこで、女神は再び大地を動かし土を改良した
という。
水を含むと、自然と土地が豊かになるようにこ
の世界全体を変えたという。

「そして、人々は雨が降るたびに女神に感謝を
 し、祈る事を忘れずに……」
「待った……なんで雨が染み込むだけで肥沃な
 大地になるんだ?世界全体を変えたんだろ?
 だったらここもその世界に入るんじゃないの
 か?」
「確かにね、陸の言う通りだよ。まるで、雨が
 降る事を拒む者がいるみたいじゃないか?」

レイネの言い方では、人間達の土地にだけ雨が
降ればいいと言っているように聞こえる。

女神が改良した土地はこの世界そのもののはず
だった。

では、どうしてなのだろう?

「そんな事知らないわよ?教会ではそう教えて
 いるんだもの」
「雨はどうやって降らしているんだ?」
「祈ればいいのよ。祈りが通じれば雨が降るの
 よ……。確か予兆があるのよね…」
「予兆?」
「えぇ、いつものようにお祈りをささげている
 と、雨が降る前日に身体が怠くなるのよ」

祈りが、魔力を吸収するポイントになっている
気がしたのだった。

魔族領では、どうして魔法が打ち消されたの
だろう。
どうみても腑に落ちないのだった。

確かに、魔術は発動していたのだ。
それをなんらかの影響力がある力が打ち消し
たのだ。
尋常ではないくらい、魔法の腕に長けた人物
だろう。陸の最大火力を注ぎ込んで作り上げ
た積乱雲。
あのまま行けば、一気に大雨になるはずだっ
たのだ。

「レイネ、教会ではその話の続きはないのか 
 ?…例えば、魔王を討伐する勇者的な話と
 かさ…」
「もちろんあるわよ?」

レイネは自慢気に話し出した。
誠治がじっとレイネの話を聞いているせいか
嬉しそうに語り出す。

「異世界より選ばれし勇者は、従者と共に魔王
 を討伐せし後、人間達は女神の祝福を受ける。
 100年ののち、再び魔王復活までは肥沃な大
 地と豊富な恵に包まれるであろうってね」
「100年……そのスパンで魔王が産まれるとい
 う事なんだな…」
「だが、問題はたかが魔王を倒しただけで肥沃
 な大地と豊富な恵っておかしくないか?」

陸の言葉に、誠治は頷いた。
たかが一人の魔族を倒しただけで、変わるとは
思えないからだ。

それに、実際は倒したのではなく話合いで解決
したのだ。

それでも世界は平和になった。
だったら、殺す必要はないのではないか?

それと魔王自身も殺戮衝動があるわけではない。
ただ、平穏に暮らしたいだけだと言っていた。
どうにも、話がおかしすぎる。

「それで、勇者はその後どうしたんだ?」
「勿論、帝国のお姫様と結婚して幸せになった
 わよ?」
「見ず知らずの男と、国で一番偉い姫さんが?
 おかしいだろ?魔王を倒したからって娘を差
 し出すか?」
「そうだね。父親なら、ありえないかな」

誠治も納得した。
一国の王が、異世界の勇者に娘を簡単に差し出
すとは思えなかったのだ。
現にリヒト・フォン・ローレンシア皇帝は娘の
リリス・フォン・ローレンシアを誠治の嫁にす
る事を申し出てきた。

物語りの通りなら、そのまま一緒になるのだ
ろうが。
俺の友人はそれを突っぱねたのだ。

誠実そうな、可愛い子だった。
が、皇帝の思惑が入るとまた違って見えてくる。

どう見ても、勇者を自分の手駒にしようとして
いるとしか思えなかったからだ。

「誠治……俺はお前に魔王を倒して欲しくない」
「陸………理由を聞いてもいい?」
「あぁ、魔王は悪い奴じゃない。それと、襲っ
 て来ている魔族は魔王の命令じゃないんだ」
「どうしてそう言い切れるの?」
「それは…………俺を信じて欲しい…」

未来を知っているから……。
とは言えない。

だから、一言。
俺を信じて欲しいとしか言えなかった。





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