俺がモテない理由

秋元智也

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第八十話 最期の悪足掻き

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飲み水がいきなり赤黒くなれば、誰もが混乱する
だろう。

魔王城内でも、いきなりの事で、混乱が起きてい
たのだった。
もうすぐ勇者が来るという時に、いきなりのアク
シデントが起きたのだ。
混乱しないわけがなかった。

「魔王様、魔王様、大変でございます」
「何を慌てておるのだ?勇者でもきたのか?」
「いえ、そうではありません。水が……水が……」

魔法をかけると、何の異常も出なかった。
毒でもない。

いたって普通の水なのだ。
ただ、色が変わってしまったというだけだった。
身体にも影響はない。
が、それを言ってもやっぱり色が色だけに不安が
る者が出てくる。

「やっぱり人間達を殺して領土を奪うべきだ!」
「そうだ!こんな血の色に変わったのも、全部人
 間達を滅ぼさないから先代様のお怒りなのだ」

口々に勝手に理由をつけて、攻め入る口実を作り
たいらしい。

全く聞いていて呆れてくるほどだった。
魔族と言っても、先代魔王に仕えていたのはもう
半数にも満たないくらいしか残っていない。

先代魔王は特に強く、勇者を何度も撃退させたと
いう。
何度目かの防衛の時に、勇者パーティーを壊滅さ
せながらも勇者から受けた傷が原因で死んだと聞
いている。

どうしてそこまで戦いにこだわるのだろうか?
人間達は、魔族領の鉱石を欲しているという。

その為、度々魔族領へ着ては無断で取っていく。
それを見かねては、捕まえて生け取りにすると労
働力として奴隷にしている。

だが、もし交易が出来るのなら……。

「それも今回の勇者次第だな………」

魔王の思惑はきっと誰にも伝わらないのだろうと
思うと、深いため息が漏れたのだった。

「魔王様!正門の前に勇者パーティーがきました」
「そうか……では、手厚い歓迎をしてやらねばな」
「では、我が部下をいかせましょう。討ち取って
 ご覧に入れましょうぞ」
「あぁ……そうだな」

もし、ここまで来られたら……話が出来るのだろ
うか?

部下の気合いに入った顔を見送りながら窓の外を
眺めたのだった。




     ♦︎




誠治率いる勇者パーティーは堂々と正門の前にき
ていた。

裏からこっそり入ってもいいのだが、ここは交渉
に来たので、堂々と入ろうとなったのだった。

「ちょっと、本当に大丈夫なんでしょうね?」
「あぁ、最上階まで辿り付ければ問題ないはずだ」
「それが問題なんじゃないの?ちょっと、陸の言
 葉なんて信じて大丈夫なの?」

レイネは終始反対だったらしい。
まぁ、そもそも俺が気に入らないのだから、俺が
言う言葉全部反対なのだろう。

「レイネ。僕の言葉でも反対かい?」
「いえ……勇者様がそう言うなら……」
「なら、これ以上は黙ってて貰えるかな?」
「……はい」

勇者である誠治には従順なのだ。
全く……女ってやつは………。

門を開けると、中からぞろぞろと魔族達が出て
くる。
やっぱり一筋縄ではいかないようだった。

だが、こっちも何も考えずにいくわけではない。

「陸、どっち?」
「こいつらは……殲滅だな……」
「おっけ。一気に行くよ。僕が先に行くから後を
 お願い」
「まかせろ」

誠治が剣を握りしめると一気に走りだした。

陸の記憶から、この後反乱に繋がる勢力は殲滅し
てそうでない勢力は残しておくという選別をして
いた。

これは、もし魔王との交渉がスムーズにいったら、
反対する勢力という事だった。

魔王と一緒に行う初めての共同作業が、魔族の意
思統一だった。
反対する者は皆殺し。
それが魔王が下した判断だった。

それに賛同した勇者も、魔族の反乱を鎮圧するの
に手を貸したのだ。

「さぁ~て、一気に片付けるか!大地の息吹よ、
 我が力となりて敵を撃たん、アーススパイク!」

敵の足元に突起した岩が出来ると一気に動きを封
じたのだった。

突進して行く誠治の攻撃を避けられなくする効果
があった。

勿論、誠治が負けることはないだろう。
ただ、時間をかける労力を省きたかったのだ。

モンドも加勢するように武器を振り回している。

陸はひたすら、逃げるのを防ぐと足元を揺らし機
動力を削いでいった。

「魔王さ………ま……」

事切れる前まで魔王の心配をするとは…。
もし、魔王が勇者を倒す事を辞めない人だったの
なら……彼は忠義に溢れた忠臣と言えるだろう。

だが。彼は分かっていないのだ。
魔王の本当の真意を。

「さぁ、ポーションを飲んで次行こうか?」
「あぁ、ありがとう、陸」
「陸の作ったポーションは疲れも取れるから便利
 だな」

モンドが褒めると、レイネは機嫌が悪くなる。
たかが疲れた程度で、ヒールなど使ってはくれな
い。
ましてや聖女自ら魔法を行使するというのは本当
にまれな事なのだった。






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