アリスちゃんねる 〜もっと淫れさせて〜

秋元智也

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71話

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長谷部に優の事を見ているように言われた日、矢崎
は何度も優の部屋の前へときていた。

朝ご飯も食べずに籠ったままの優から昨日何があっ
たのかを聞こうと考えたからだった。

「おーい、アリスちゃーん!」
「…」
「いい加減ご飯食べに来いって、起きてんだろ?」
「…要らない」
「いらないじゃねーよ!朝は食べねーと体力もた
 ねーだろ?」
「……食べたく…ないって言ってるじゃん」

中かから苛ついたような声が聞こえていた。

部屋の鍵はかかっている。
が、こんなものは簡単に開けれる。

今は気落ちしているようだが、長谷部からいい遣
っているので放置もできない。
これも給料分だ。

「いいから開けろ!それともこじ開けるがいいか?」

しばらく静かになるとカチャっと鍵があいた。
中に入るとさっきまで泣き腫らしたのか目が真っ赤
になった優が出てきた。

「どうしたんだ?何があった?」
「…」

何も言う気はないのかただ目を伏せるだけだった。
矢崎だって言ってくれないと何もできない。

「話してくれないと分からないだろ?」
「…ここから…出て行きたい………何でもするから、
 ここから…いや、いいや……誠さんに雇われてる
 んだもん…無理だよね…」

寂しそうに言うのを聞くと、すぐにでも抱きしめ
て考える事なんてさせないくらいに抱いてしまい
たくなる。
この態度を見ている限りは、長谷部が断固として
優を受け入れなかったという事に他ならなかった
からだ。

あんなに大事そうにしていながら、なぜ受け入れ
ない?
優だってもう成人しているのだ。
ものの分別くらいは自分でできる。
ましてや、他の男に抱かれるような汚れた身体が
嫌だというのなら初めから自分の養子にしてまで
引き取ろうとは思わなかったはずだ。

堅物すぎて理解できなかった。

「なら、俺と出て行くか?」
「…!!」
「そうしたかったんだろ?色々と大変かもしれな
 いがそれでも出て行くか?それなら俺も覚悟を
 決める。ここにいれば衣食住の心配は要らねー
 し、わざわざ汚れ仕事もしなくていい。だが…」
「分かってる…ここにいるのが苦しいんだ…誠さん
 に良くしてもらっておいて何だけど…どんな事で
 もやるから…お願い連れてって」

矢崎もこのまま優を説得してここで平然と暮らすと
言うのも悪くはなかった。

が、優が出たいと言うのなら、それもいいかもし
れないと思う。

ここでは決して手に入らなかったアリスを自分の
好きにできると言う事でもあるのだから…

「いろんなやつに抱かれてもいいのか?多分酷い
 目にあう事だって覚悟できるか?」
「…うん。いいよ。好きにしていい…ここから出
 ていけるなら…なんでも…」
「そうか、ならすぐに荷物をまとめろ」
「矢崎…さん?」
「出て行くんだろ?」

矢崎は吹っ切れたような顔で優を見るとお手伝い
さんが帰ったタイミングで借りた中古車を持って
くると優を乗せて出て行ったのだった。

長谷部に残した書き置きを机の上に置くと荷物を
持って出て行く。

『今日は夜に話したいことがあるんだ。大事な話
 だから…』

長谷部の声が耳から離れない。

「きっとこれでいいんだ…」

小さな声で言ったのが聞こえてくる。
矢崎はそのまま今日の泊まれるところを探すように
車を走らせたのだった。

走らせること都心から少し離れた場所だった。
ここには夜に一夜限りの相手を求めてくる人が何
人もいることで有名な場所だった。

「ここは…?」
「まずは金が必要だろ?中古車で使っちまったか
 らな。稼ぐぞ?」
「稼ぐ?」
「そうだ、身体で稼ぐのが一番効率のいい方法っ
 て何かわかるか?」
「…それって……」
「ほら、こっちきてまずは解すぞ」

矢崎の用意は結構しっかりしていた。
たっぷりとローションとゴムが買い込まれていた。

車から降りるまでに何度も解された蕾はいつでも男
を飲み込めるほど柔らかくなっている。

薄く、透けている服をきると犬用の首をして手綱を
矢崎が握っている。

何かを物色するような仕草の男性を見つけると呼び
止めていた。

「お兄さん、溜まってるならうちの子でどうだい?
 一回イクまでヤってたったの千円だよ?」
「何だ?可愛い子でもいるのか?」
「うーん、なかなかだと思うけど?」

矢崎の言葉に釣られるように茂みの中から手綱を
引かれた。
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